約三十の嘘
（2004年 日本）（上映時間１時間40分）
監督：大谷健太郎
出演：椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一、八嶋智人、伴杏里
＊シネクイントほかにて全国公開
ホームページ http://www.30uso.com/
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＜ストーリー＞
３年ぶりに“仕事”を始める6人の詐欺師たち。新リーダー久津内（田辺誠一）、
のど飴中毒の元リーダー・志方（椎名桔平）。女詐欺師の宝田（中谷美紀）。元
アル中の佐々木（妻夫木聡）。宝田が連れてきた新参者の横山（八嶋智人）。彼
らは、3年前に須藤という男に、詐欺で得た金を持ち逃げされた過去があった。
豪華寝台特急トワイライトエクスプレス内で久々の仕事の準備をする５人。そこ
に、かつて須藤を連れてきた今井（伴杏里）が加わる。見事に北海道で大金を得
た６人だが、帰りの列車内で売上金を詰めたスーツケースを紛失してしまい……。
＜レビュー＞
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おしゃれでユーモラスな詐欺師集団のウソだらけのドラマだが……
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瀬戸朝香主演の前作『とらばいゆ』が、なかなか良くできた映画だった（たし
かその年のボクのベスト10に挙げた記憶が……）大谷健太郎監督の最新作は、男
４人、女２人の詐欺師集団のスッタモンダを描いたコミカルなドラマ。
詐欺という犯罪がネタではあるものの、犯罪そのものはまったく描写しないで、
その前後の詐欺師たちの行動と心理を描いたところがユニーク。しかも、舞台は
トワイライトエクスプレスという豪華寝台特急（大阪〜札幌間を約22時間で結ぶ
実在する特急）の中だけ。つまり、限定された場所で、まるで舞台劇のようなキ
レのあるセリフが次々に飛び出す映画なのです。
それもそのはず、これって、もともと同名の舞台劇だったんですって。フーン。
登場する詐欺師チームは合計６人。
今回の仕事のリーダー久津内、元リーダー志方、元アル中の佐々木、女詐欺師
の宝田、宝田が連れてきた新入りの横山。５人がトワイライトエクスプレスに乗
り込んで、北海道へ向かう。今回の仕事は、偽物の羽毛布団を高額で売りさばく
こと。
というわけで、前半は、列車内で役割分担などを決めて、仕事の準備をする５
人の姿が描かれる。
やがて、その５人に加え、前回トラブルを起こした今井も途中から乗車して、
計６人の詐欺旅行。いよいよ目的地の北海道に着いて、さあ仕事だぜッ！
(＾o＾)／
会話を中心に成立しているこのドラマ。そのセリフがなかなかおもしろい。
なぜなら登場人物のキャラクターがクッキリしているから。たとえば、志方は
３年前の一件以来、別人のようにダラけた人間になってしまっている。しかも、
彼と宝田には過去になにやらあった雰囲気。また、そんな志方に代わってリーダ
ーになった久津内は、やたらに張り切りまくるがまったく頼りない。そして、新
入りの横山はとんでもないお調子者。
というように、ユニークな個性を持ち、ワケありの過去を抱え、お互いに複雑
な人間関係も見え隠れする。そんなメンバーたちの会話が、ポンポンとはずんで
いくのです。
後半は詐欺の現場をすっ飛ばして、いきなり帰りの列車の中。
せっかく手に入れた金が消えてしまい、「誰が犯人なんだ！」という疑惑の渦
の中のあれやこれやが描かれる。メンバーの結束を示すためにつくられたスーツ
ケースの５本の鍵（１本だけホンモノ）なども効果的に使い、いったい誰が犯人
なのかわからない展開に突入。
何しろコイツらみ〜んな詐欺師ですから。言うことが、全部本当らしくてウソ
っぽい。タイトルの由来である「１つの嘘を成立させるには、約30の嘘を用意せ
ねば」という言葉通りの、詐欺師同士の虚々実々の駆け引きは観応えアリ。
キャストも魅力的です。椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一、八嶋智人
という名前を見ただけで、つい映画館に行きたくなっちゃうメンバー。特に女性
陣は存在感があって、キリッとした中谷美紀に加え、年上の詐欺師たちを虜にし
ちゃう伴杏里もなかなかのもの。ある意味、このコがいちばんスゴイ詐欺師かも。
クレイジーケンバンドの音楽も良いセンスです。
ただし、全体にスリリングさが足りないんだよなぁ〜。前半はともかく、後半
の金の行方をめぐるアレコレはもっと緊迫感を込めて描いてくれないとつまらな
いですね。これ、致命的な欠点。 (｀ヘ´)
それに、あのラストはどうなんでしょう？ 何だか甘すぎる結末で拍子抜け。
宝田の志方に対する気持は理解できるのだが、彼女のチームに対する強い思い入
れがよく理解できないから、イマイチ説得力が感じられませんでした。
あれじゃまるで安っぽい恋愛物語か、友情物語のお決まりのラストだもん。ど
うせなら、最後にもうひとヒネリして、観客をビックリさせて欲しかったな。
ついでに、ゴンゾウももっと効果的に使ってヨ〜〜〜。詐欺師たちが商売に使
うヘンなパンダの着ぐるみで、この映画のＰＲでも大々的にフィーチャーされて
るんだけど、映画の中ではチラッとしか使われないんだよね。うーん、もったい
ないなぁ〜。 ⊂(◎(工)◎)⊃ ←パンダのつもり
日本映画には珍しいおしゃれでユーモラスな詐欺師たちの映画。演じるキャス
トも魅力的で、舞台劇のような楽しい会話が楽しめるものの、スリリングさに欠
けた展開とつまらないラストにはちょっとガッカリ。予告編が期待を抱かせただ
けに、なおさら落胆してしまいました。もうちょっとどうにかなった映画だと思
うのに……。残念！！ 大谷健太郎斬り。でも、切腹しないよ〜ん。(＾0＾）
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（+1／2★）【ちょっとだけオススメ。おヒマでしたらどうぞ】
（それなりに楽しめる映画だけれど、物足りなさもたくさん感じてしまいまし
た。大谷監督なら前作の『とらばいゆ』のほうが数段上。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2005年1月13日（木）ワーナー・マイカルシネマズ板橋にて。午後４時40分の回。