座頭市


(2003年 日本)(上映時間1時間56分)
監督・脚本・編集:北野武
出演:ビートたけし、浅野忠信、夏川結衣、大楠道代、橘大五郎、大家由祐子
、ガダルカナル・タカ、岸部一徳、石倉三郎、柄本明
*丸の内プラゼールほかにて全国公開
ホームページ http://office-kitano.co.jp/zatoichi/
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<ストーリー>
盲目の居合いの達人・座頭市(ビートたけし)は、幼い頃両親を惨殺した強盗
一味に復讐しようとするおきぬとおせいの姉妹に出会う。やがて、市はこの町
を仕切る銀蔵一家の賭場で大立ち回りを演じ、銀蔵に目をつけられる。一方、
おきぬとおせいの姉妹は強盗一味に金持ちの商人・扇屋が絡んでいることをつ
かみ、仇討ちに挑む。そこに銀蔵が加勢したことから用心棒の服部が呼ばれ、
市と服部の一騎打ちが始まるのだが……。

<レビュー>
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これが北野映画??? 観客の目を意識した痛快娯楽時代劇
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「世界の北野、足立区のたけし」の北野武監督の新作。
ご存知、勝新太郎のハマリ役を自ら演じてリメイクです。

これまではけっこう自分のつくりたい映画をつくってきた北野監督。そのせい
か評価の割りに観客動員に結びつかない傾向がありました。 (´ヘ`;)
それでも最近はずいぶん観客の目を意識するようになり、特に前作『Doll
s』は外国人観客の目をかなり意識しているように見えました。

しかしなぁ〜、だからってここまで徹底するか??? (~ヘ~;)
と思ってしまうほど、この新作は観客の目を徹底的に意識した痛快娯楽時代劇。
これまでの北野作品とはずいぶん違う雰囲気の映画になっています。

舞台となるのはある宿場町。そこに3組の旅人がやってくる。盲目の居合いの
達人・座頭市。浪人・服部源之助と病気の妻・おしの。そして旅芸者のおきぬ
とおせいの姉妹。
服部は妻の薬代のために、この町を仕切るヤクザの銀蔵一家に用心棒として雇
われる。また、おきぬとおせいは幼い頃両親を惨殺した強盗一味への復讐を企
てていた。
やがて、おきぬとおせいは強盗一味の正体をつかみ、仇討ちに挑む。それを手
助けする市は服部と対決する……。

要するに、姉妹の仇討ちを手助けする座頭市と、すご腕の用心棒が対決すると
いうわかりやすい物語。このわかりやすさからして、観客の目を完全に意識し
ている感じです。

そして、なんといっても観客を唸らせるのがド派手な立ち回り。これが速い速
い。ものすごいスピードです。刀さばきや身体の動きも見事、見事。しかも血
しぶきドバーッの大サービス。この迫力はハンパじゃありませんヨ〜〜〜。 
(^o^)/

北野作品といえば、暴力シーンを中心に徹底したリアリズムを追求するのが特
徴。でも、この映画は全く逆。リアリティーは最初からきれいさっぱり捨て去
っています。実際はあんなに鮮やかに人なんか斬れないもんね。だいたい、市
の金髪頭からしてもう完全に絵空事。
だけど、これまた観客を楽しませる工夫。「そんなことないよぉ〜。でも、楽
しいよぉ〜」という世界をつくり出しています。

この映画を「時代劇の常識を打ち破った」という人がいますが、ボクはそうは
思いません。「水戸黄門」にしても、「大岡越前」にしても、よくよく考えた
らおかしなことばっかりでしょ。でも、「楽しければいいや」と視聴者サービ
スに励む。そういう古き良き時代劇の楽しさをそのまま踏襲し、たけし流にア
レンジした映画だと思います。

シンプルなギャグの連発も、これまたわかりやすくて楽しい。ガダルカナル・
タカの剣術指南なんて、たけし軍団のコントかと思っちまいましたぜ。市の目
も笑ったなぁ〜。(゜o゜;

ラストのタップダンスもこれまた観客を楽しくさせるための大サービス。時代
劇には異色だけれど、エンターティメントという観点からは別に不思議でも何
でもない。

ということで、とにかく観客を楽しくさせる工夫がタップリ詰まった映画。外
国人なら、さらに楽しめるんじゃないでしょうか。勝新を知らない彼らには、
座頭市という設定自体が興味深いんだろうし。(しかも、ラスト近くで明かさ
れる驚愕の真実!)

コアな北野監督ファンがどう思うか知りませんが、ボクはこういう姿勢自体は
悪いと思いません。映画には芸術的な側面があるわけだけれど、基本はやっぱ
り娯楽だからねぇ。
それに北野監督は元々が根っからの芸人だから、「みんなにウケたい!」とい
う思いも人一倍強いはず。今回の映画では、そういう思いをバリバリ全開に見
せています。これもまた彼の持ち味。中途半端でなくこのぐらい徹底してやっ
てくれれば、かえって気持がいい。監督としての幅も広がったと思います。

ただし、映像的にはもっとブッ飛んじゃってもよかったんじゃないかなぁ〜。
芸術的な映像美は彼の本質のひとつとだと思うし。
それに、いつもはセリフを極端に削ぎ落とすのと逆に、今回はあまりに説明的
なセリフが多すぎるのもちょっと気になりました。まあ、これも観客に親切に
したってことなんでしょうけどネ。
おきぬとおせいの姉妹(?)、そして用心棒の服部に比べて、市のキャラが立
っていないのも、個人的には物足りなかったな。 (´ヘ`;)

そのあたりで、これまでの北野作品に比べてやや薄味な感じがしてしまいまし
た。北野監督らしさはそれなりに出ていますが、「北野監督でなければできな
い!」という映画ではありません。
その代わり、何も考えずに楽しめる痛快娯楽時代劇としては、かなりのレベル
の作品だと思いますヨ。時代劇ファンでなくても楽しめる映画にしているとこ
ろはさすが。

ん? 北野監督の声が聞こえてきたゾ。「お前らこんなにサービスしてるんだ
から、これでウケなきゃ冗談じゃないヨ〜〜〜!!」 σ(^◇^;)

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆【普通にオススメ。観ても損はナシ】
(楽しい時代劇としては十分に合格点。でも、それ以上のものは期待しないほ
うがいいかも。)
                             <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2003年9月6日(土)池袋シネマ・ロサにて。午後12時45分の回。


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