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29歳問題（29+1）
（2017年 香港）（上映時間1時間51分）
監督・脚本：キーレン・パン
出演：クリッシー・チャウ、ジョイス・チェン、ベイビージョン・チョイ、ベ
ン・ヤン、エイレン・チン、ジャン・ラム、エリック・コット
＊YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://29saimondai.com/
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＜ストーリー＞
2005年の香港。化粧品会社で働く30歳目前のクリスティ（クリッシー・チャ
ウ）は仕事もプライベートも順調そのもの。だが、部長に昇進したことでスト
レスが増え、恋人ともすれ違う。さらに、大家から立ち退きを迫られ、とりあ
えず彼に紹介された部屋で仮住まいすることになる。そこはティンロ（ジョイ
ス・チェン）という女性の部屋で、1か月間パリ旅行に出かけていた。部屋で見
つけたティンロの日記を読むクリスティ。偶然にも同じ日に生まれたティンロ
の日記を読み進むうちに、自分とは違って楽天的なティンロの日常に惹かれて
いく……。
＜レビュー＞
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対照的な2人の女性の幸せ探しを温かな視線で
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女性の29歳というのは、なかなか難しい年齢のようです。そんな女性の戸惑い
や苦悩を描いた映画です。もとは一人芝居の舞台劇。それを演出・主演して演
じ続けていたキーレン・パン自身が、監督・脚本を担当して映画化を実現しま
した。
化粧品会社で働く主人公のクリスティは現在29歳。あと1か月で30歳。仕事は順
調だし、長年付き合っている恋人もいます。だが、結婚に関しては微妙な感じ。
そんなクリスティの現状を、彼女の日常描写から伝える序盤から引き込まれま
す。
クリスティは会社で部長に昇進。それによって重たい責任を負わされます。恋
人との関係も危ういものになります。そして、認知症の父親の存在も彼女の頭
痛の種です。
さらに、もう一つの大問題が発生。いきなり大家から立ち退きを迫られてしま
います。とりあえず彼に紹介された部屋で、クリスティは仮住まいすることに
なります。そこはティンロという女性の部屋で、彼女は1か月間パリ旅行に出か
けていたのです。
レスリー・チャンが出演したドラマを観てパリに憧れたティンロは、部屋にエ
ッフェル塔型に写真を貼り付けていました。その部屋でクリスティはティンロ
の日記を発見。それを読むとなんと彼女はクリスティと同じ日が誕生日。その
日記には、彼女の日常が綴られています。
というわけで、そのあたりからはティンロの日記の内容が映像化されます。テ
ィンロはクリスティとは対照的な女性。ちょっと太めで眼鏡姿。いかにもキャ
リアウーマン的外見のクリスティとまったく違います。いえ、違うのは外見だ
けではありません。性格は底抜けに明るくて楽天的。困難も笑顔で乗り切って
しまいます。勤め先のレコード店主や幼なじみの男の子たちとの交遊も、実に
微笑ましいものです。
観客は日々楽し気なティンロの日常を見て、彼女に好感を持つはず。それはク
リスティも同様です。ティンロの日常は彼女にとって新鮮に映ります。こうし
て観客と主人公が同時体験でティンロに惹かれる構成が面白いところ。
だが、そんなことでクリスティの現状が好転するお気楽な展開にはなりません。
父が亡くなったこともあって、クリスティは仕事を辞めてしまいます。しかし、、
それは彼女にとって新たな迷走の始まり。はたして彼女は前を向けるのか。
そこから先は意外な展開が待ち受けています。再びティンロの日記を手に取る
クリスティ。そこに書かれていたのは衝撃的な事実。ただ楽天的なだけに見え
たティンロの意外な影。それに絡んで切ない恋愛模様も描かれます。
このあたりの情感を高める仕掛けが見事です。音楽なども巧みに使いながら、
観客の心を揺さぶります。ラストに進むにつれて、今の29歳の女性も、かつて
の29歳の女性も、思わずグッとくるのではないでしょうか。いや、男性だって
けっこう引き込まれそう。そんな中、ラストではあるファンタスティックな仕
掛けで、爽やかな余韻を残します。
舞台劇の映画化ではあるものの、映画的な仕掛けがあちこちにある映画です。
例えば、ところどころに主人公がカメラに向かって話しかけたり、登場人物の
妄想や願望を映像にしたり。
そしてもう一つの魅力は、80〜90年代の香港カルチャーが詰め込まれていると
ころ。レスリー・チャン以外にも、ウォン・カーウァイ監督の直筆サイン入り
『花様年華』のポスターが、クリスティとティンロを結ぶアイテムになるなど、
当時の香港カルチャーを巧みに織り込んでいます。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年5月29日（火）YEBISU GARDEN CINEMAにて。午後12時40分の回
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