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A GHOST STORY／ア・ゴースト・ストーリー（A GHOST STORY）
（2017年 アメリカ）（上映時間1時間32分）
監督・脚本：デヴィッド・ロウリー
出演：ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ
＊シネクイントほかにて公開
ホームページ http://www.ags-movie.jp/
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＜ストーリー＞
郊外の小さな一軒家で幸せに暮らす若い夫婦のＣ（ケイシー・アフレック）と
Ｍ（ルーニー・マーラ）。だが、ある日突然、夫のＣは交通事故で亡くなって
しまう。病院で遺体と対面したＭは、夫の亡骸にシーツを被せて帰っていく。
すると、死んだはずのＣが、シーツを被ったまま静かに起き上がり、そのまま
妻のいる自宅へと戻っていくのだった……。
＜レビュー＞
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妻を見守る夫の幽霊。壮大で不思議な映像詩
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幽霊が出てくるお話です。といえばホラー映画を思い浮かべがちですが、そう
ではありません。
登場するのは郊外の一軒家に住む若い夫婦のＣとＭ。2人は仲睦まじく会話を交
わします。しかし、どこか不穏な空気に心がざわつきます。しかも、この家で
はなぜか時折不思議な物音がするようです。
そして、場面は突如として病院へ。横たわる遺体。それはＣの遺体です。その
直前にほんの短く、交通事故後のシーンが映されるので、おそらくＣは交通事
故死したのでしょう。Ｍは遺体を確認し、シーツをかぶせて病院を去ります。
その直後、やおらシーツが持ち上がります。死んだはずのＣが、シーツを被っ
たまま静かに起き上がったのです。目のところには穴が開いています。そして、
そのまま妻のいる自宅へと戻っていきます。夫のＣは幽霊になって甦ったので
す。
ここでポイントになるのが、この幽霊は他人だけでなく、妻のＭにも姿が見え
ないこと。しかも、幽霊は意思を伝えることがうまくできません。幽霊になっ
た夫が妻の前に出現し……といえば、ラブストーリーとして有名な映画『ゴー
スト ニューヨークの幻』を思い浮かべますが、意思疎通が困難だからああは
なりません。家に戻っても、ただひたすら妻を見守るしかないのです。
それでも前半はややラブストーリー的な要素も感じられます。Ｃの死からまも
ない頃に、Ｍは友人が持ってきてくれたパイをひたすら食べまくり、その挙句
に吐いてしまいます。それをＣの幽霊がじっと見守っています。Ｍが抱えた悲
しみの深さと喪失感の大きさ、何もできないＣのつらさが伝わってきます。
しかし、その後、Ｍは新しいボーイフレンドと現れます。それを見た幽霊は、
感情を抑えることができずに暴れます。その後、妻のＭは引っ越してしまいま
す。Ｃの幽霊はガランとなった家の中にたたずみます。
やがて、そこに南米系の家族が引っ越してきます。それが気にいらないのか、
Ｃの幽霊は家の中をあちこち歩きまわり、物音をたてて子供たちを怖がらせた
り、皿をメチャクチャに投げつけまくります。
この後もいろいろなことがあります。なぜかパーティーらしきものが開かれ、
謎の男が意味深な発言をします。続いて家は荒廃し、取り壊しが始まります。
その後は高層ビルが建てられます。そうかと思えば、突如として時代をさかの
ぼり、家が建てられるずっと前の時代が登場します。そうやって時間を自由に
行き来しながら、Ｃの幽霊は様々な事象を目撃します。
スクリーンを覆うのは静謐な世界。そしてスクリーンサイズは、スタンダード
サイズ。つまり通常の映画より幅が狭くなっています。そこに光を効果的に使
った美しい映像が映し出されます。
デヴィッド・ロウリー監督は、この映画で何を言いたかったのか。幽霊の存在
について考察した映画であり、霊魂や死後の人間、さらには人間存在や宇宙に
ついて思いをはせた映画だという見方もできそうです。
というわけで壮大なテーマ性も感じさせる不思議な映像詩ですが、最後には何
とも言えない哀切が漂ってきました。Ｍを演じたルーニー・マーラ、ほとんど
シーツをかぶりっぱなしのケイシー・アフレックともに、抑制的で印象深い演
技でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（84点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年11月22日（木）シネクイントにて。午後12時15分の回
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