悪女 AKUJO(THE VILLAINESS)


(2017年 韓国)(上映時間2時間4分)
監督・脚本・製作・アクション監修:チョン・ビョンギル
出演:キム・オクビン、シン・ハギュン、ソンジュン、キム・ソヒョン、キ
ム・ヨヌ、チョ・ウンジ、イ・スンジュ、チョン・ヘギュン、ミン・イェジ、
パク・チョルミン、キム・ヘナ
*角川シネマ新宿ほかにて公開
ホームページ http://akujo-movie.jp/
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<ストーリー>
犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒ(キム・オクビン)は、育ての親の
ジュンサン(シン・ハギュン)に恋心を抱き、2人は結婚する。だが、まもなく
ジュンサンは敵対組織に殺害されてしまう。怒りにかられたスクヒは復讐を果
たすが、国家組織に拘束されてしまい、国家が運営する暗殺者養成施設に送ら
れる。やがて政府直属の暗殺者として第2の人生を歩み始めたスクヒは、新たな
運命の男性と出会い幸せを誓うのだが……。

<レビュー>
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斬新なアクションシーンと哀切漂う女殺し屋のドラマ
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入江悠監督の『22年目の告白 私が殺人犯です』のオリジナル版である『殺人
の告白』の監督・脚本を担当したチョン・ビョンギル監督が手がけたバイオレ
ンス・アクション映画です。

アクション映画の肝は、言うまでもなくアクションシーン。その点、この映画
は見事です。まず冒頭7分間のノンストップ・アクション。主人公のスクヒとい
う女性が、暴力団のアジトに単身で乗り込み、50人以上もの敵をバッタバッタ
と倒していくのですが、それをスクヒ目線で見せるのです。

カメラがスクヒの目となって、とらえたものを映し出します。スクヒ自身は手
ぐらいしか映りません。おまけに、それをワンカットの長回しのように映しま
す。この斬新なカメラワークが、破格の緊張感と迫力を生み出しています。

その後、スクヒは当局によって拘束され、国家が運営する暗殺者養成施設に送
られます。そこで学んだ後、暗殺者として10年間仕事をすれば、あとは自由に
なれるというのです。

そこからはスクヒの暗殺者としての訓練の日々が描かれます。冷酷な女指導官、
ライバルの意地悪な女、スクヒに好意を持つ国家情報院の男など脇役も魅力的
なキャラで、ドラマを盛り上げます。

それと並行して登場するのが、彼女の過去。どうして、スクヒは一人で暴力団
を壊滅させるような行動に出たのか。彼女の父親が殺されたことに端を発し、
育ての親との出会い、彼に対する恋心と結婚など、過去の様々な出来事がとこ
ろどころに挿入されます。

その間もアクションシーンは冴えわたります。彼女が養成施設を出る直前に命
じられた暗殺では、スクヒと追っ手がバイクに乗って日本刀で斬り合います。
そのユニークすぎるバトルを、これまた斬新なカメラワークで見せます。

養成施設を出たスクヒは別人の舞台女優となって、殺し屋家業を始めます。彼
女は施設に入る時点で妊娠しており、その後出産。ウネというその幼い娘と一
緒に暮らします。そんな彼女にある男が接近します。

ここからは恋愛ドラマが展開。その見せ方もなかなか巧み。スクヒに接近する
男は、映画の初めの方から何度も顔を出す国家情報院の男ヒョンス。彼がスク
ヒに接近するのは職務上のことですが、それでも彼女に気があることはすでに
示唆されています。そのことから、2人のロマンスに厚みが出てきます。

この映画には、様々な殺し屋映画、犯罪映画、スパイ映画、恋愛映画などの要
素がブレンドされています。ということは、設定やストーリー展開自体には、
それほど新味はないともいえますが、観ている間はそれを感じさせず、観客の
目をスクリーンに釘付けにします。

後半、スクヒはある暗殺を命じられます。そこでは花嫁姿で銃をかまえます。
何というケレンにあふれたシーンでしょう。

クライマックスも破格のアクションシーン。ボンネットにスクヒを乗せたまま
疾走する車。そこからバスの中へと戦いの場を移し、壮絶すぎるバトルが繰り
広げられます。

美しく、怖ろしく、そして切ないラストシーンのスクヒの姿が印象的です。と
ても見応えのあるアクション映画でした。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(88点)

                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2018年2月10日(土)角川シネマ新宿にて。午後12時50分の回



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