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バッド・ジーニアス 危険な天才たち（BAD GENIUS）
（2017年 タイ）（上映時間2時間10分）
監督：ナタウット・プーンピリヤ
出演：チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナ
トーンクン、イッサヤー・ホースワン、ティーラドン・スパパンピンヨー、タ
ネート・ワラークンヌクロ、サハジャック・ブーンタナキット
＊新宿武蔵野館にて公開。全国順次公開
ホームページ http://maxam.jp/badgenius/
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＜ストーリー＞
天才的な頭脳を持つ女子高生リン（チュティモン・ジョンジャルーンスックジ
ン）。貧しい父子家庭で育った彼女は、その頭脳を見込まれて進学校に特待奨
学生として転入する。やがて、新しい学校で友人になったグレース（イッサ
ヤー・ホースワン）をテスト中に助けてあげたことから、グレースの彼氏のパ
ット（ティーラドン・スパパンピンヨー）から、高度なカンニングをする"ビジ
ネス"をもちかけられる。そのビジネスは見事に当たり、次第に規模が大きくな
るのだが……。
＜レビュー＞
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文句なしにスリリングな高校生たちのカンニング劇
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中国で実際に起こったカンニング事件をモチーフにしたタイ映画です。カンニ
ングの当事者たちが疑惑を持たれ尋問を受けるというのが、ドラマ全体の大枠。
その中で彼らが何をしたのかが描かれます。ところが、実はこの尋問シーン、
それ自体に意外なからくりがあります。そんなふうに隅々まで凝りに凝った仕
掛けがある映画です。
主人公は、天才的な頭脳を持つ女子高生リン。冒頭はリンが進学校への転校の
ために父とともに、校長の面接を受けるシーン。校長はリンの頭脳を評価して
入学を認めますが、リンは今一つ気が乗らない様子。転校すれば学費のほかに
多額の経費がかかり、大変な負担になると説明するリン。それに対して、校長
は授業料を免除する特待奨学生として受け入れると申し出ます。
リンの置かれた経済的状況と、それをはねのけるしたたかさを示すこのシーン。
映像的にも工夫がされています。リンが経費について素早く計算するのに合わ
せて、その数式がテロップとして映し出されます。
こうして映像的に様々な技巧を凝らしているのが、この映画の特徴の一つ。ア
ップやスロー映像などを巧みに組み合わせ、スタイリッシュでケレンに満ちた
映像で、テンポよくドラマを進めます。
転校したリンは、グレースという同級生と仲良くなります。しかし、彼女は成
績が悪く、リンはテスト中に「ある方法」で答えを教えて、彼女の窮地を救い
ます。この最初のカンニングシーンからして、破格のスリリングさ。鍵になる
靴の動きをアップで追った映像が、ハラハラドキドキ度を高めます。だが、そ
れはまだ序の口にすぎません。
グレースは、カンニングの件を彼氏のパットに話してしまいます。パットは裕
福な家の子ですが、こちらも成績はさっぱり。そこで彼は試験中に高度なカン
ニングをして、顧客の生徒たちから代金を取る"ビジネス"をもちかけます。リ
ンはそれに応じて答えを教えます。
このドラマにはタイの社会の現状などが、巧みに織り込まれています。貧富の
格差、学歴偏重社会や、学校での賄賂の横行などが背景として登場。それがド
ラマの面白さを引き立てます。
何よりも犯行の手口が鮮やかでスリリングなので、善悪を越えてシンプルに楽
しめてしまいます。ピアノの鍵盤から発想したカンニング法などもユニーク。
『オーシャンズ・シリーズ』などのケイパー（強盗）もののドラマと、共通す
る魅力に満ちています。
カンニングはどんどん規模が大きくなり、リンたちもたくさんの報酬を手にし
ます。しかし、カンニングを嫌悪する男子学生バンクの出現などによって、リ
ンはいったん挫折します。それでも、最後にはスケールの大きな犯行が待って
います。アメリカの大学に留学するため世界各国で行われる大学統一入試「STI
C」を舞台にしたカンニングです。
そこに至る準備段階で、大きな波乱が起きて二転三転。さらに、いざ犯行とな
った場面でもトラブル続出。おかげで緊迫の場面が続きます。ハラハラドキド
キの波状攻撃が押し寄せ、スリルは最高潮に高まります。
終盤に進むにつれて、リンの心情もよりきめ細かに描かれるようになります。
それが伏線になって、ラストの後日談で彼女は重い決断を下します。そこに至
って、この映画がケーパーものや犯罪サスペンスとして魅力十分なのに加えて、
青春映画としての魅力も持つことがわかりました。とにかく、文句なしに面白
い映画でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年9月28日（金）新宿武蔵野館にて。午後12時の回
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