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ビューティフル・デイ（YOU WERE NEVER REALLY HERE）
（2017年 イギリス）（上映時間1時間30分）
監督・脚本：リン・ラムジー
出演：ホアキン・フェニックス、ジュディス・ロバーツ、エカテリーナ・サム
ソノフ、ジョン・ドーマン、アレックス・マネット、ダンテ・ペレイラ＝オル
ソン、アレッサンドロ・ニヴォラ
＊新宿バルト9ほかにて全国公開
ホームページ http://beautifulday-movie.com/
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＜ストーリー＞
元軍人のジョー（ホアキン・フェニックス）は行方不明者の捜索のスペシャリ
スト。トラウマに苦しみ、自殺願望を抱えながら、年老いた母を世話していた。
ある日、彼のもとに州の上院議員から、行方不明の10代の娘ニーナ（エカテ
リーナ・サムソノフ）を捜して欲しいという依頼が舞い込む。さっそくハン
マー片手にニーナが囚われている売春宿を急襲し、無事に彼女を救い出す。だ
が、まもなくニーナは再びさらわれてしまう……。
＜レビュー＞
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絶望を生きる男と心が壊れた少女の心の通い合い
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ジョナサン・エイムズの小説を『少年は残酷な弓を射る』のリン・ラムジー監
督が映画化。カンヌ国際映画祭で脚本賞と男優賞の２冠に輝きました。
冒頭から謎めいたシーンが続きます。数字をカウントダウンする声、「猫背は
嫌いだ。背筋を伸ばせ」という声、少年の姿、呼吸ができないように頭からビ
ニール袋をかぶせられた人物……。何じゃ？こりゃ。
これ以降も、主人公の過去の出来事らしきフラッシュバックやイメージショッ
トなどが、あちらこちらに挟み込まれます。しかし、そうしたことについての
詳しい説明はなし。観客が想像力を働かせるしかないのです。
そこからおぼろげに浮かんでくるのは、主人公ジョーの人物像。元軍人の彼は
過去のトラウマに苦しみ、自殺願望を抱えながら、行方不明者の捜索を仕事に
しています。家には年老いた母がいて、彼女の世話をしています。
そんなジョーのもとに、州の上院議員から行方不明の10代の娘ニーナを捜して
欲しいという依頼が舞い込みます。ジョーはニーナが囚われている売春宿を急
襲し、無事に彼女を救い出します。ところが、まもなくニーナの父親は死に、
彼女は再びさらわれてしまいます。
犯罪サスペンスではあるものの、事件の謎解きなどはありません。最小限のセ
リフで、ジョーの周辺に起きる出来事を鮮烈な映像で見せていきます。例えば、
殺されたある人物の遺体をジョーが湖に沈めるシーン。それはまるで絵画のよ
うな美しさです。
ジョーは仕事をする際に、暴力性をむき出しにします。ただし、そうしたバイ
オレンスシーンも、その前後を描くだけで、そのものズバリのシーンはほとん
どありません。それもまた観客が自ら想像するしかありません
音楽の使われ方も印象的。「レディオヘッド」のジョニー・グリーンウッドが、
不協和音を生かした音楽など独特の音の世界を構築し、ドラマの危険さや怪し
さ、緊迫感などを増幅させまする。
一方、ドラマ的な最大の見せ場はジョーとニーナとの交流。2人が絡む場面自体
はそんなに長くないのですが、それでも心の通い合いはクッキリと刻まれます。
深いトラウマを抱えたジョー、そして、過酷な運命によって心が壊れてしまっ
たニーナ。2人の魂が共鳴します。
ジョーを演じたホアキン・フェニックスの演技がさすがです。彼の苦悩、荒廃
した心、それでも失われていない優しさなどが、セリフ以外の演技によってき
ちんと表現されています。ニーナを演じたエカテリーナ・サムソノフも不思議
な魅力を持っています。
再びさらわれたニーナを救おうとするジョー。そこで彼が見たものは……。ジ
ョーとニーナの魂の共鳴が、さらに高らかに鳴り響く瞬間。ラストも大きな余
韻を残し、ジョーとニーナのその後について、思いをはせずにはいられません。
最初から最後まで、無駄なシーンがまったくありません。想像力を刺激され続
けて、90分間があっという間でした。個性的過ぎる映画なので、好き嫌いは分
かれるでしょうが、一見の価値はあります。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年6月1日（金）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時の回
[「ひ」のページ]
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