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The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ（THE BEGUILED）
（2017年 アメリカ）（上映時間1時間33分）
監督・脚本：ソフィア・コッポラ
出演：コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、キルステン・ダンスト、エ
ル・ファニング、ウーナ・ローレンス、アンガーリー・ライス、アディソン・
リーケ、エマ・ハワード
＊TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://beguiled.jp/
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＜ストーリー＞
南北戦争中のバージニア州。世間から隔絶された女子寄宿学園では、園長の
マーサ（ニコール・キッドマン）、教師のエドウィナ（キルステン・ダンス
ト）と５人の生徒が静かに暮らしていた。そんなある日、負傷した北軍兵士マ
クバニー（コリン・ファレル）が見つかり、介抱することになる。突如現れた
敵兵の男性に対して警戒しつつも、次第に心を奪われていく女性たち。やがて
思わぬ出来事が起きて……。
＜レビュー＞
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突然の異邦人の侵入に惑う女性心理を繊細に描く
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1971年のクリント・イーストウッド主演の「白い肌の異常な夜」。その原作で
あるトーマス・カリナンの小説を、ソフィア・コッポラ監督が再映画化したサ
スペンス・ドラマ。「白い肌の異常な夜」は男性が主人公の男性目線の映画で
したが、こちらは女性目線の映画です。
ソフィア・コッポラ監督といえば、おしゃれでポップな映像で知られますが、
今回はポップさこそないものの、独特の美意識に基づいた美しい映像が見られ
ます。
舞台になるのは南北戦争中のバージニア州。ある森が映し出されます。一人の
少女が鼻歌を歌いながら、キノコ狩りをしています。
少女はまもなく敵である北軍の負傷兵を発見。彼女は女子寄宿学校に住んでい
て、そこに負傷兵を連れていきます。寄宿学校では園長のマーサ、教師のエド
ウィナと５人の生徒が静かに暮らしています。
マーサは、仕方なくその北軍兵士のマクバニーを治療します。そこでの彼女の
態度が何とも意味深。突然現れた男性、しかも北軍兵士という異邦人を警戒し
戸惑いつつも、何やら胸の奥に秘めていた欲望がチラリと顔をのぞかせます。
教師のエドウィナや年長の生徒アリシアも同様に、マクバニーの存在に心乱さ
れていきます。その他の生徒たちもまだ幼いながらも、マクバニーの出現によ
って波乱に直面します。
マーサ、エドウィナ、アリシアの３人には、欲望と同時に嫉妬の情も芽生え始
めます。誰かがマクバニーと親しくする姿を見れば、心穏やかではいられなく
なります。ただし、それをドロドロの愛憎劇として描かずに、抑制的に見せて
いくところがいかにもコッポラ監督らしい。
学園のたたずまいや白を基調とした女性たちの衣装などにも、そうした品性が
反映されています。それがまた、このドラマの美しさ、危うさ、妖しさを際立
たせます。
唯一の男性であるマクバニーの描き方も巧みです。彼は最初のうちは、負傷し
て介抱されているという事情もあって、実に紳士的で、穏やかな人物として描
かれます。
その一方で、それとは違う雰囲気もわずかながら漂わせます。後半に、ある大
事件が起きたのをきっかけに、マクバニーは今までとは全く違う姿を見せるよ
うになります。それによってマーサは、ついにある決断をします。
このあたりの描き方もなかなかのものです。一歩間違えば、狂気に走った女た
ちの蛮行に見えてしまいそうですが、それまでの彼女たちの心理の変遷がきっ
ちりと描かれているから、当然の帰結として受け入れられます。
同時に、それがある種の女たちの自立にも思えてきます。南部の保守的な土地
柄、女性の地位がまだ低い時代、その中で世間から隔絶された女たちが、男と
いう異邦人に翻弄され、最後は敢然と自らの運命を切り開く。そんなふうにさ
え感じてしまうのでした。
サスペンスとしてのインパクトは正直弱いと思います。しかし、それとは違う
魅力を持つ作品なのは間違いありません。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1/2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年2月24日（土）TOHOシネマズ新宿にて。午後12時の回
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