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blank13
（2017年 日本）（上映時間1時間10分）
監督：齊藤工
出演：高橋一生、松岡茉優、斎藤工、神野三鈴、大西利空、北藤遼、織本順吉、
川瀬陽太、神戸浩、伊藤沙莉、村上淳、岡田将孝、くっきー、大水洋介、昼メ
シくん、永野、ミラクルひかる、曇天三男坊、豪起、福士誠治、大竹浩一、細
田香菜、小築舞衣、田中千空、蛭子能収、杉作Ｊ太郎、波岡一喜、森田哲矢、
榊英雄、金子ノブアキ、村中玲子、佐藤二朗、リリー・フランキー
＊シネ・リーブル池袋ほかにて公開
ホームページ http://www.blank13.com/
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＜ストーリー＞
ギャンブルに溺れて多額の借金を作った末に失踪した父の雅人（リリー・フラ
ンキー）が13年ぶりに見つかる。だが、がんを患った雅人の余命はわずか3カ月
だった。父に苦しめられた母の洋子（神野三鈴）と兄のヨシユキ（斎藤工）は
雅人を許すことができず見舞いに行かないが、弟のコウジ（高橋一生）だけは
病院を訪ねる。やがて雅人はこの世を去り、葬儀には数少ない友人たちが参列
する。遺された家族の前で、参列者たちは故人との思い出を語っていくのだが
……。
＜レビュー＞
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音信不通だった父の意外な面を知る子供たち
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俳優・斎藤工（監督名は齊藤工）の長編初監督作品。放送作家のはしもとこう
じの実話を基にした家族の物語です。
ドラマはある男の葬儀から始まります。主人公のコウジの父親・雅人の葬儀で
す。隣の寺で開かれている同姓の人物の派手な葬儀とは裏腹に、実に寂しい葬
儀です。
前半に描かれるのは、過去に起きた出来事。ギャンブルに溺れて多額の借金を
作った雅人。借金取りが家に押しかけ、母の洋子と兄のヨシユキ、コウジ、そ
して雅人は隠れるようにひっそりと暮らします。まもなく雅人は失踪。残され
た洋子は、2人の子供を育てるために身を粉にして働きます。
それから13年後、音信不通だった雅人が見つかるものの、がんを患った雅人の
余命はわずか3カ月。雅人に苦しめられた母の洋子と兄のヨシユキは、どうして
も彼を許すことができず見舞いに行きません。
それに対して、コウジだけは病院を訪ねます。父の失踪当時はまだ幼くて、一
緒にキャッチボールをしたり、甲子園に行った思い出があるのです。母と同様
に父を嫌悪しつつも、心のどこかで愛着も残しています。
そんな家族の姿を齊藤監督は抑制的に描きます。最低限のセリフだけで、人物
の表情やほんのわずかなしぐさから、その微妙な心理の機微を映しとっていき
ます。特に、病院で久々の再会をした親子が屋上で対面するシーンが秀逸。
後半は作風が一変します。描かれるのは、葬儀場での参列者による思い出話。
遺された家族の前で、数少ない参列者たちは故人である雅人との思い出を語っ
ていきます。
麻雀仲間、仕事仲間、同居していた男（？）、病院で同室だった者などなど。
彼らは雅人の意外な一面を語ります。スナックのママの悩みを聞いてあげたり、
知人の母の手術代を工面したり、困っている知人を同居させたり。
どうやらこの場面、役者たちはアドリブで演技しているようです。個性派役者
たちによるその演技が、笑いを誘います。それでも役者たちの演技が暴走の域
に突入する前に、齋藤監督はうまく寸止めしています。
それによって、彼らの話を聞いたコウジとヨシユキが心を惑わせられる様子が、
リアルに伝わってきます。自分の知らなかった父の意外な側面を知り、それぞ
れの心の中で固く塗り固められていた父に対する思いが、少しずつ崩れていく
のです。
そして、喪服を着て家を出ながらも、なかなか葬儀場へ足が向かない洋子の最
後の表情が余韻を残します。その胸に去来するものはどんな思いなのか、あれ
これと想像してしまうのです。
70分の短い尺で、ほぼ二部構成の実験的な作品ですが、観終わった余韻はなか
なかのものでした。齊藤監督の思いが充分に伝わってきました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
2018年2月28日（水）シネ・リーブル池袋にて。午後2時30分の回
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