|
ウィンストン・チャーチル／ヒトラーから世界を救った男
（DARKEST HOUR）
（2017年 イギリス）（上映時間2時間5分）
監督：ジョー・ライト
出演：ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リ
リー・ジェームズ、スティーヴン・ディレイン、ロナルド・ピックアップ、ベ
ン・メンデルソーン
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://www.churchill-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
第二次世界大戦初期の1940年5月。ナチス・ドイツの前にフランスは陥落寸前と
なり、イギリスにも侵略の脅威が迫っていた。そんな中、新首相に就任したウ
ィンストン・チャーチル（ゲイリー・オールドマン）は、演説で徹底抗戦を主
張する。だが、戦況は悪化する一方で、イギリス軍はフランス・ダンケルクの
海岸で絶体絶命の状況を迎える。ヒトラーとの和平交渉か徹底抗戦か、究極の
選択を迫られるチャーチルだったが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゲイリー・オールドマンのハンパでない成りきりぶり
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第二次世界大戦の時にイギリスの首相に就任して、ヒトラーの脅威に立ち向か
ったウィンストン・チャーチルの伝記映画。
この映画のスゴイところは、実際のチャーチルとは似ても似つかないゲイ
リー・オールドマンを起用したところ。その無謀ともいえるチャレンジを可能
にしたのが、特殊メーキャップ・アーティストの辻一弘をはじめとしたスタッ
フたちです。
何しろスクリーンに登場するのはチャーチルそのもの。黙っていたら、誰も演
じているのがゲイリー・オールドマンだとは思わないでしょう。
もちろん、ただ外見が似ているだけではありません。そこはさすがに名優ゲイ
リー・オールドマン。政治家として、人間として、多様な表情を見せるチャー
チルを見事に演じ分けています。
第二次世界大戦初期の1940年5月。首相就任からダンケルクの戦いまでの27日間
を描いています。英国議会における野党・労働党党首の熱気あふれる演説から
スタート。与党・保守党と挙国一致内閣を組む条件としてチェンバレン首相の
退陣を求めたその演説をきっかけに、ウィンストン・チャーチルが首相候補に
浮上します。
ただし、彼は保守党内の嫌われ者。その嫌われ者ぶりを秘書のエリザベスの視
点からコンパクトに描いたパートが印象的。頭は切れるが、口が悪く、短気な
男なのが一目瞭然のシーンです。
とはいえ、ただの嫌われ者ではドラマにはなりません。それとは違った側面も
きちんと見せていきます。巧みな演説をはじめとした政治家としての有能さ、
妻のクレメンティーンに頭のあがらない恐妻家ぶり、意外なユーモアのセンス、
そして深い苦悩を抱えた姿。そうした様々な姿を見るうちに、観客は次第に彼
の魅力に引き込まれていくはず。
当時、ヒトラー率いるナチス・ドイツはヨーロッパを席巻し、フランスは陥落
寸前で、イギリスにも侵略の脅威が迫っています。そんな中で首相となったチ
ャーチルは、就任演説で徹底抗戦を主張します。
しかし、戦況は悪化する一方で、イギリス軍はフランス・ダンケルクの海岸で
絶体絶命の状況を迎えます。初めは確固たる信念で、徹底抗戦の道を突き進も
うとするチャーチルですが、外相ハリファックスら和平推進派の攻勢もあって、
次第に追い詰められていきます。
チャーチルも、和平推進派も、「このままでは祖国がなくなる。もっと多くの
人が犠牲になる」という危機感に突き動かされて行動を起こしています。同じ
危機感を持ちつつも、選択する手段は決定的に違うのです。だからこそ、チ
ャーチルの苦悩や葛藤がより深いものになります。
迷いに迷った末に、一度は和平に傾きかけるチャーチル。しかし、そこで意外
な人物の変心が彼を翻意に導きます。そして、そこで用意されたサプライズ。
一国の首相が庶民の声に耳を傾けるというアイデアは、けっして悪くはないと
思いますが、クライマックスの演説に至る過程は少々あざとすぎるかも。
何にしても、そこからクリストファー・ノーラン監督の映画でも有名なあのダ
ンケルクの撤退戦へと続くことになります。
終盤の「ナチスと闘うんだ！ 祖国を守るんだ！」の大合唱や、戦争の描き方
などに物足りなさも感じますが、ゲイリー・オールドマンの成りきりぶりを堪
能するだけでも、十分に元は取れる映画だと思います。そのぐらい見事な演技
でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年4月27日（金）TOHOシネマズシャンテにて。午前11時20分の回
[「う」のページ]
|