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長江 愛の詩（長江図／CROSSCURRENT）
（2016年 中国）（上映時間1時間55分）
監督・脚本：ヤン・チャオ
出演：チン・ハオ、シン・ジーレイ、ワン・ホンウェイ、ウー・リーポン、チ
ァン・ホワリン、タン・カイ
＊シネマート新宿、YEBISU GARDEN CINNEMAほかにて公開
ホームページ http://cyoukou-ainouta.jp/
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＜ストーリー＞
亡くなった父の後を継ぎ、小さな貨物船の船長となったガオ・チュン（チン・
ハオ）。ある日、船の機関室で父の手書きの詩集『長江図』を見つけた彼は、
それに導かれるように長江を遡る旅へと出発する。その途中で、彼はアン・
ルー（シン・ジーレイ）という女性と行く先々で出会い、愛を深めていくのだ
が……。
＜レビュー＞
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長江を舞台にした壮大で、幻想的で、謎に満ちた映像詩
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北京電影学院出身で、これが長編2作目だというヤン・チャオ監督による長江を
舞台にしたドラマ。亡くなった父の後を継いで、小さな貨物船の船長となった
ガオ・チュンの長江を遡る旅を描いています。
この映画で最も素晴らしいのが、圧倒的な映像。上海を出発して源流にたどり
着くまで、千変万化する雄大な大自然や歴史的な建築物、沿岸の村などがド迫
力の映像で描かれています。撮影監督は、ホウ・シャオシェン作品などで知ら
れる名カメラマン、リー・ピンビン。
とはいえ、普通の旅のドラマではありません。出発前にガオは、船の機関室で
父の手書きの詩集を見つけます。そこには長江の旅の各地で作られた短い詩が
書かれています。その詩がスクリーンに随時映し出されます。ガオはその詩集
に導かれるように長江の旅を続けます。
そして、本作のもう一つの特徴は、行く先々でアン・ルーという女性とガオが
愛を育んでいくこと。といってもベタな恋愛ドラマではありません。
そもそもアン・ルーの存在そのものが何者かわかりません。上海で目撃した彼
女は疲れた中年女性のようですが、その後、次第に若返ったようになり、最後
の頃には女子学生のようになっています。
登場の仕方もその都度異なっています。まるで娼婦のように登場したかと思え
ば、ごく普通の主婦のような登場もあります。最後のほうでは川岸にそそり立
つ山をずんずん登っていく場面もあります。寺院では僧に問答を投げかけ、修
行中だという話もあります。突然、川に消えたかと思ったら、魚のように泳ぎ
回るシーンもあります。いったい彼女は誰なのか。もしかしたら、この世の存
在ではないのかもしれません。
そのあたりは、観客が想像力を働かせるしかありません。ヤン監督は明確なこ
とは何も示しません。それこそが、この映画の魅力かもしれません。
観客の想像力を刺激する要素は他にもあります。ガオが長江を遡るのは、違法
と思われる魚の稚魚らしきものを運ぶため。ガオはそれを運ぶにあたって、依
頼主の社長に料金のアップを求めます。さらに、その積み荷をめぐって、同乗
する老船員や若い船員も絡んで、何度かショッキングな出来事が起きます。
おそらく、そうした出来事には、人生や社会に関するヤン監督の様々な思いが
投影されているのでしょう。
旅のハイライトは、何といっても三峡ダム。無機質で丸で怪物のようなシップ
ドック。そこを経て再び雄大な姿を現す長江。そして、そのはてにガオが目に
するものは……。
ラストも意味深です。長江のかつての姿とそこに集う人々の姿が古いフィルム
で提示されます。そして、不思議な石碑と謎の老人（ガオの亡き父？）の姿。
さらにオーラスに映る仏像らしきもの。
壮大で、幻想的で、謎に満ちた映像詩です。わかりやすいエンタメ映画とは対
極の作品ですが、その分、想像力を刺激されます。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
午後3時30分の回2018年2月17日（土）シネマート新宿にて。午前9時30分の回
[「ち」のページ]
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