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ヘレディタリー／継承（HEREDITARY）
（2018年 アメリカ）（上映時間2時間7分）
監督・脚本：アリ・アスター
出演：トニ・コレット、アレックス・ウルフ、ミリー・シャピロ、アン・ダウ
ド、ガブリエル・バーン
＊TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
ホームページ http://hereditary-movie.jp/
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＜ストーリー＞
グラハム家の祖母エレンが亡くなり、娘のアニー（トニ・コレット）は夫のス
ティーブ（ガブリエル・バーン）、高校生の息子ピーター（アレックス・ウル
フ）と13歳の娘チャーリー（ミリー・シャピロ）とともに葬儀を終える。だが、
その後、チャーリーは異常な行動をとり始める。そんなある日、ピーターが
パーティーに行きたいと言い、アニーはチャーリーも連れていくことを条件に
許可するのだが……。
＜レビュー＞
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エグくて怖い家族をめぐる正統派のホラー映画
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最近は『クワイエット・プレイス』のようなヒネリを加えたホラー映画が多い
中で、久々に正統派ともいえるホラー映画が登場しました。
ドラマの発端はグラハム家の祖母エレンの死。彼女は相当に変わった人だった
ようで、娘のアニーと微妙な関係にありました。それでもアニーは夫のステ
ィーブ、高校生の息子ピーター、13歳の娘チャーリーとともにエレンの葬儀を
無事に終えます。
ところが、その後、チャーリーが異常な行動をとり始めます。鳩の首を切り落
としたり、はだしのまま家を出て森に行ったり。生前の祖母と最も親しくして
いた彼女に、いったい何が起きたのでしょう。
このチャーリー、見るからに不気味な雰囲気の少女。常に舌打ちする癖も気色
が悪く、他人をイラつかせます。
そして、まもなくとんでもないことが起きます。ピーターがパーティーに行き
たいと言い、アニーはチャーリーも連れていくことを条件に許可します。とこ
ろが……。
ここから先はネタバレになるかもしれないので、詳しいことは伏せますが、あ
る人物がエグい死に方をします。そして、その死をめぐるグラハム家の人々の
心理ドラマが描かれます。アニー、スティーブ、ピーターはそれぞれ心に傷を
抱え、特にアニーとピーターの間に以前からあった溝が、抜き差しならないも
のになります。
こうした家族たちの苦悩と葛藤のリアルな描写があるからこそ、その後の恐怖
と狂気がズンズンと増幅していくのです。
映像も出色です。映画の冒頭では、グラハム家の住宅の部屋に据えられたカメ
ラが外の風景を映します。その後、部屋の内部にカメラを転じ、部屋に置かれ
た精巧なミニチュアに焦点を当てます。その模型がそのまま現実の世界に転化
します。
このシーンだけで、この物語がある種の異界の物語であり、そこでは人間が無
力であることを示唆しているように感じられます。ちなみに、このミニチュア
はミニチュア作家であるアニーが制作したもの。これが随所で効果的に使われ、
恐怖の増幅に一役買っています。いかにもホラー映画らしく不協和音を巧みに
使った音楽も、恐怖と不気味さを煽っていきます。
その後、ドラマは霊にまつわる話へと展開。アニーは謎の女と知り合い、あら
ぬ方向へと暴走していきます。
ドラマの進行とともに、次第にこの世のものとは思えない様々な要素が出現。
それらはアニーやピーターの悪夢の形で登場しますが、現実との境界線は曖昧。
そうした中でアニーやピーターはどんどん憔悴していきます。
終盤は、祖母エレンの遺体をめぐる話や、アニーが知り合った謎の女の正体を
めぐるミステリー風の展開も飛び出します。そこはまさに恐怖と不気味さ、エ
グさの連打。
はたして着地点はどこにあるのか。まったく予想外のところに話が向かいます。
冒頭からたびたび映る奇妙なログハウス風の建物。祖母の「私を憎まないで」
というメモ。そうした伏線がラストで見事に一つにつながります。邦題にある
「継承」というフレーズがピッタリの結末です。
アニー役のトニ・コレットのハンパでない恐怖顔、チャーリーを演じたミ
リー・シャピロの怖すぎる存在感など役者も充実。悪魔絡みの定番ホラーに、
スプラッター、オカルト、幽霊など様々なホラー映画の要素を巧みに織り込み、
さらに家族の苦悩と葛藤のドラマも付加した充実のホラー映画。ホラー映画好
きなら見逃す手はないでしょう。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋★1／2）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年11月30日（金）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時30分の回
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