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羊の木
（2017年 日本）（上映時間2時間6分）
監督：吉田大八
出演：錦戸亮、木村文乃、北村一輝、優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯、
松田龍平、中村有志、安藤玉恵、細田善彦、北見敏之、松尾諭、山口美也子、
鈴木晋介、深水三章
＊TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国公開
ホームページ http://hitsujinoki-movie.com/
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＜ストーリー＞
寂れた港町・魚深市の市役所に勤める月末（錦戸亮）は、上司から新たな移住
者６人の受け入れ役を任される。性別も年齢もバラバラな６人だったが、彼ら
は元受刑者だった。彼らの転入は、犯罪者の更生と過疎化対策の一環として、
この町に10年間住み続けることを条件に刑期を大幅に短縮して釈放させる政府
の極秘プロジェクトによるものだったのだ。やがて月末は彼らがすべて元殺人
犯であることを知る……。
＜レビュー＞
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不穏さと緊張感が途切れない６人の元殺人犯をめぐるドラマ
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『桐島、部活やめるってよ』『美しい星』の吉田大八監督が、山上たつひこ、
いがらしみきお共作の同名コミックスを映画化したミステリー・ドラマ。
設定が秀逸です。舞台となるのは、寂れた港町・富山県魚深市（架空の町）。
主人公は市役所職員の月末（錦戸亮）。彼は、上司から新たな移住者６人の受
け入れ役を任され、彼らを駅や空港に迎えに行きます。すると、彼らはどう見
ても訳アリ風。それもそのはず、上司は隠していたのですが、性別も年齢もバ
ラバラな６人は全員元受刑者だったことがわかります。
なぜ彼らは移住してきたのか。それは政府の極秘プロジェクトによるもの。犯
罪者の更生と過疎化対策の一環として、この町に10年間住み続けることを条件
に刑期を大幅に短縮するという試みです。彼らには、自治体が身元引受人とな
り、それぞれ住居と仕事が与えられます。ところが、彼らはただの元受刑者で
はなく、すべて元殺人犯だったのです！。
何よりも、６人の元殺人犯人の描き分け方が巧みです。見るからに狂暴そうな
杉山勝志、妙にセクシーな太田理江子、暗い性格のようで感情を表に出さない
栗本清美、まじめでおとなしそうな福元宏喜、元ヤクザの大野克美、そして一
見好青年の宮腰一郎。
何も言わずに立っているだけで怖い田中泯や、地味な外見ながら妙にエロい優
香ら、演じる役者が完璧なハマリ役。彼らのほんのちょっとした言葉や、しぐ
さから妖しさや危険な香りが漂ってきます。「コイツら、きっと何か起こ
す！？」と思わせられます。
実のところ、彼らが元殺人犯だというのは比較的早くわかってしまいます。そ
のせいで、こちらもどうしてもそういう目で彼らを見てしまいます。だから、
なおさら不穏さや緊張感が強まるのです。
映画の中盤で登場する「のろろ祭り」なる奇祭も、この映画の不穏さや緊張感
を増幅させています。
その一方で、ドラマ的な厚みには欠けています。序盤で起きる事件が波乱を引
き起こし、住民を巻き込む大騒動になり、そこから深い人間ドラマ、あるいは
社会派ドラマに進展していくのかと思いきや、そうした展開には至りません。
確かに人間ドラマは展開されていますが、さすがに６人分のドラマではギュウ
ギュウ詰め。おまけに月末の恋愛や彼の父親の恋までドラマに絡ませてくるも
のだから、詰め込み過ぎの感が否めません。そのため、今一つ深みに欠けるの
が惜しいところ。
中盤以降は、６人の中で宮腰がドラマの大きなウエイトを占めるようになりま
す。彼は月末たちのバンド練習に興味を示し、月末と友情らしきものを結ぶよ
うになります。同時に彼は大きな秘密を抱え、それにまつわる出来事からどん
どん暴走していきます。
その果てに待つのは、のろろ様を効果的に使った激しいクライマックス。そし
て、明確な答えこそ提示しないものの、微かな希望を感じさせるラストです。
途切れない不穏さや緊張感は見どころ充分。ただし、もう少し全体を整理して、
人間の内面をキッチリ描いてくれたら、傑作の部類に入る映画になったかもし
れないと思うと、少し残念な気もします。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（83点）
（田中ひろあき）
2018年2月4日（日）池袋HUMAXシネマズにて。午前10時20分の回
[「ひ」のページ]
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