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アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル（I, TONYA）
（2017年 アメリカ）（上映時間2時間）
監督：クレイグ・ギレスピー
出演：マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン、ジュリアンヌ・ニコルソ
ン、ボビー・カナヴェイル、アリソン・ジャネイ、ポール・ウォルター・ハウ
ザー、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、ケイトリン・カーヴァー、マッケナ・グレ
イス
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://tonya-movie.jp/
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＜ストーリー＞
貧しい家庭に育った少女トーニャ・ハーディング（マーゴット・ロビー）。彼
女のスケートの才能に気づいた母ラヴォナ（アリソン・ジャネイ）はフィギュ
アスケートを習わせ、暴力と罵倒で娘を鍛える。やがてトーニャはジェフ・ギ
ルーリー（セバスチャン・スタン）という男と出会い恋に落ちる。全米のトッ
プ選手となってアルベールビル五輪に出場するが、ギルーリーの暴力が原因で
トラブルが続く。そんな中、リレハンメル五輪を前にジェフの仲間がトーニャ
のライバル選手を襲撃して負傷させる……。
＜レビュー＞
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困った人たちの勢揃いが笑いを誘いちょっぴり哀感も
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フィギュアスケートの全米トップ選手でオリンピックにも二度出場しながら、
ライバル選手の襲撃事件に関与したことで話題になったトーニャ・ハーディン
グの半生を描いた伝記映画です。
全体の構成は、関係者のインタビューに基づく再現ドラマになっています。た
だし、最初に断りがあるように、それが事実かどうかはわからないというスタ
ンス。
前半に描かれるのは母子の葛藤です。貧しい家庭に育った少女トーニャ。彼女
のスケートの才能に気づいた母ラヴォナは、フィギュアスケートを習わせます。
この母親ときたら常軌を逸しています。暴力と罵倒で娘を鍛え、「トイレに行
きたい」という娘に、お漏らしするまで練習を続けさせる。まさにモンスター
級の壊れっぷりです。それでもトーニャは「自分が悪いんだ」と考えて、必死
で練習を続け、全米のトップ選手にまで成長していきます。
こんな状況だから、トーニャは母親からの脱出願望を持っています。そんな中、
現れたのがジェフ・ギルーリーという男。15歳で彼と出会ったトーニャはすぐ
に恋に落ちます。何しろ最初の頃のジェフはひたすら優しかったのです。
ところが、まもなくジェフは豹変します。何かあればすぐに暴力をふるうＤＶ
男の典型。その後、2人は正式に結婚しますが、ＤＶがもとで何度も別れたりく
っついたりを繰り返します。
ＤＶ母＆ＤＶ夫のダブルパンチとくれば、どう考えてもトーニャはかわいそう
なヒロイン。しかし、この映画では彼女をそんなふうには描きません。トーニ
ャの言動はこれまた常軌を逸しています。気に入らないことがあれば口汚くの
のしり自己主張ばかり。子どもの頃に「自分が悪いんだ」と言っていた反動な
のか、今度は「全部他人のせいだ」と責任転嫁します。
要するにこの映画、モンスターの勢揃いなのです。それゆえ、彼らの言動がい
ちいち笑えてしまいます。彼らにとっては普通のことなのでしょうが、はたか
ら見ていればあまりにもバカらしくて笑ってしまうのです。
同時に、トーニャの心の揺れ動きも見えてきます。母との確執や離れたいのに
離れられない夫との関係、セレブスポーツであるフィギアスケート界で異端視
される自身の立場など、様々なことでもがき苦しむ彼女の姿が、リアルに伝わ
ってきます。
終盤では、1994年に起きた「ナンシー・ケリガン襲撃事件」が描かれます。た
だし、大まじめに事件の真相を追及するわけではありません。何しろ一見綿密
に計画された犯罪のようですが、実はどうしようもない間抜けな事件なのです。
そこで活躍するのがジェフの友達のショーンという男。言っていることがほと
んど誇大妄想で、話しているうちにどんどん変な方向に転がっていきます。彼
の言動はギャグマンガの世界です。
世間やマスコミの動きも織り込みつつ、描かれる事件後の顛末。追い詰められ
たトーニャを訪ねる母。さすがに母娘の絆が結ばれるのかと思ったら、おっと
ビックリの展開。「私は悪くない」と最後まで言い続けるトーニャも含めて、
コイツら本当に懲りない面々です。
それでも全体を通してみれば、ダメ人間たちの姿にそこはかとないおかしみや
哀しみも感じられます。特に、トーニャについては「ああいう生き方しかでき
なかったんだろうな」と思えて何やら哀感が漂います。
製作も兼ねた主演のマーゴット・ロビーの成りきりぶりが素晴らしい。スケー
トシーンも本格的。アカデミー助演女優賞を獲得した母役のアリソン・ジャネ
イ、元夫役のセバスチャン・スタンなどの演技も見ものです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年5月5日（土）TOHOシネマズシャンテにて。午後12時10分の回
[「あ」のページ]
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