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純平、考え直せ
（2018年 日本）（上映時間1時間35分）
監督：森岡利行
出演：野村周平、柳ゆり菜、毎熊克哉、岡山天音、佐野岳、戸塚純貴、佐藤祐
基、藤原季節、日向寺雅人、森田涼花、木下愛華、やしろ優、下條アトム、二
階堂智、片岡礼子
＊新宿武蔵野館ほかにて公開
ホームページ http://junpei-movie.com/
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＜ストーリー＞
歌舞伎町で「一人前の男」を夢見ながらも、雑用に追われる日々を送る21歳の
下っ端ヤクザの坂本純平（野村周平）。ある日、組長直々に対立する組幹部を
殺害する「鉄砲玉」を命じられる。拳銃を手に勢い込む純平は、偶然出会った
ＯＬ加奈（柳ゆり菜）とホテルで一夜を共にする。鉄砲玉の話を聞いた加奈は、
不思議な高揚感を覚えて、決行までの3日間を純平と過ごすことになる。そんな
中、加奈は自分たちのことをＳＮＳに書き込み始めるのだが……。
＜レビュー＞
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ＳＮＳがリンクして加速するチンピラヤクザとＯＬの恋
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若いヤクザとＯＬとの恋を描いた作品。直木賞作家・奥田英朗の小説の映画化
です。
主人公は下っ端ヤクザの坂本純平。ある日、組長から「鉄砲玉」の役を果たす
よう命が下ります。見事にやり遂げれば、一人前の男になれると信じた純平は、
意気揚々と拳銃を手にします。そんな中、偶然出会ったＯＬ加奈とホテルで一
夜を過ごした純平は、鉄砲玉の話を加奈に漏らしてしまいます。
純平は、今どきのヤクザには珍しく、義理、人情を大切にする硬派のヤクザ。
ホームレスに焼肉をおごるなど優しい心も持っています。一方、加奈はいかに
も今風の女の子。好奇心で純平を追いかけて、面白半分で純平と行動を共にす
るようになります。そんな異色の2人の道行きを描い映画です。
最初のうちはお手軽な関係に見える2人。それが少しずつ変化します。そのカギ
を握るのがＳＮＳ。なんと加奈は、純平が鉄砲玉であることをはじめ、自分た
ちの行動を頻繁にＳＮＳに投稿するのです。
それにＳＮＳの住人たちがレスをします。真剣に2人の行く末を案じる者、冷や
やかに見つめる者、「どうせ作り話」だと決めつける者など様々です。
そんなＳＮＳの書き込みを背景に、最初はただの行きずりだった純平と加奈の
関係も、少しずつ変化していきます。組からもらった金で新宿を見降ろす高級
ホテルに泊まり、好きなものを食べ、踊り、ＳＥＸをする2人。純平の故郷へ行
き、疎遠だった彼の母と会ったりもします。
それらを通して、2人はお互いに惹かれあっていきます。純平が鉄砲玉になる日
は目前に迫る中、加奈は彼を止めて2人で逃げることを考えます。純平も心に迷
いが生じてきます。さらに、そこに純平を止めようとするＳＮＳの声が大きく
なってきます。
そのうちの何人かについては、彼らの現状がチラリと描かれます。学校でいじ
められているらしい女の子、思い描く人生が送れずにホストクラブでアルバイ
トする男、ホームレスの男など。それが彼らの純平への思いを説得力のあるも
のにします。
そして、彼らをスクリーン越しに観ている観客も、だんだん純平と加奈に肩入
れするようになります。多くの観客が、どうにか2人が幸せになる方法はないも
のかと考えるはず。「純平、考え直せ」というタイトルは、まさにそうした声
なのです。
結末はそれほど驚くべきものではありません。しかし、新宿の神社（たぶん花
園神社）で待つ加奈の願いを映像化して、余韻を残したラストが心を揺さぶり
ます。最初は浮ついていた2人の関係が、どれほど深化していたのかがよくわか
るラストシーンでした。
主演の野村周平は、ヤクザ者にしてはやや優等生すぎる風貌ですが、純真で優
しいヤクザという設定からすれば、意外に合っているのかもしれません。
そして何よりも加奈を演じた柳ゆり菜。ただの今風の軽い女の子という最初の
印象が、最後の頃にはまったく違ってきます。特にラストシーンの情感をたた
えた表情が素晴らしい！
ヤクザが主人公とはいえ、昔のドロドロ、ギラギラのヤクザ映画とは全く違い
ます。特殊な状況に身を置いたカップルの危険で切ない青春ロマンス映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年9月22日（土）シネ・リーブル池袋にて。午後3時10分の回
[「し」のページ]
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