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犬猿
（2017年 日本）（上映時間1時間43分）
監督・脚本：吉田恵輔
出演：窪田正孝、新井浩文、江上敬子、筧美和子、阿部亮平、木村知貴、後藤
剛範、土屋美穂子、健太郎、竹内愛紗、小林勝也、角替和枝
＊テアトル新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://kenen-movie.jp/
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＜ストーリー＞
地方都市の印刷会社の営業マン・金山和成（窪田正孝）は真面目な青年だった。
ある日、彼とは対照的な乱暴者の兄・卓司（新井浩文）が刑務所を出所して、
和成のアパートに転がり込んでくる。一方、そんな和成に思いを寄せるのが取
引先の印刷所を営む幾野由利亜（江上敬子）。彼女には、事務を手伝いながら
芸能活動もしている妹の真子（筧美和子）がいた。こちらも対照的な姉妹だっ
た。そんな犬猿の仲の2組の兄弟姉妹が、それまで互いに対して抱えてきた複雑
な感情を爆発させる……。
＜レビュー＞
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対照的な兄弟と、姉妹。面倒臭い存在をキッチリと見せる
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『純喫茶磯辺』『さんかく』『ばしゃ馬さんとビッグマウス』『麦子さんと』
『銀の匙 Silver
Spoon』『ヒメアノ〜ル』などの吉田恵輔監督による4年ぶり
のオリジナル作品。
金山和成は地方都市の印刷会社の営業マン。父親が連帯保証人になって作って
しまった借金をコツコツ返しながら、慎ましい生活を送る真面目な青年です。
それに対して和成の兄・卓司は、そのへんのヤクザもビビる乱暴者。おまけに
金遣いも荒く、和成とは対照的な人物です。その卓司は、強盗事件で刑務所に
入っていたのですが、出所して和成のアパートに転がり込みます。そんな兄に
和成は振り回されていきます。
一方、和成に思いを寄せるのが取引先の印刷所を営む幾野由利亜。親から引き
継いだ会社を切り盛りする彼女は、有能で仕事のデキる女ですが、残念ながら
容姿に難があります。
そして彼女にも対照的な妹・真子がいます。事務を手伝っている彼女は、要領
が悪くて仕事ができません。ただし、容姿は姉と似ても似つかない美人で、仕
事の傍ら芸能活動もしています。
というわけで、この2組の日常から、彼らが抱える様々な感情をすくい取ってい
ます。コンプレックスや軽蔑、嫉妬など兄弟、姉妹間に渦巻く複雑な感情を、
セリフはもちろん、ちょっとしたしぐさや視線などで表現していきます。
笑いどころも満載。特に、由利亜を演じるお笑いコンビ"ニッチェ"の江上敬子
のキャラで笑わせてくれます。和成とデートした時のダメっぷりや、妄想を膨
らませて一人で踊りまくるシーンなど思わずニヤついてしまいます。
和成役の窪田正孝、卓司役の新井浩文もハマリ役だし、真子役の筧美和子の
「いかにも」という感じの演技も素晴らしい。兄弟、姉妹それぞれの丁々発止
の会話が笑いを生み出しています。
ドラマの進行とともに、どんどんイラつきを増幅させていくのが和成と由利亜
卓司はなぜか羽振りがよくなり、父親の借金を返したり、和成に車を買い与え
ようとします。そんな兄に対して、和成はイラつきを募らせていきます。
一方、真子は姉が思いを寄せているのを知りながら、和成とつきあうようにな
ります。それを知った由利亜は、妹に対するイラつきをどんどん増幅させてい
くのです。
ただし、そうした負の感情を抱えつつ、どうしても完全には切れないのが兄弟、
姉妹。その肉親ならではの屈折した愛情も含めて、兄弟、姉妹という存在の面
倒臭さをキッチリと描き出しています。
終盤には、ついに兄弟、姉妹がそれぞれぶつかり合います。その後に待ってい
るのは驚きの展開。兄弟、姉妹それぞれの大事件をリンクさせて、ある場所に
両者を集結させます。そこでは、兄弟、姉妹の幼少時代が、光に満ちた映像で
挿入されたりもします。
正直なところ、ここは定番寄りで、あざとさも感じてしまいました。とはいえ、
ラストのオチは秀逸。終盤の定番寄りの展開からすれば、「やっぱり兄弟って
素敵」というようなオチに持っていくのが常道でしょうが、吉田監督はあえて
それをはずします。「しょうがねえなぁ。コイツら」とつい苦笑してしまうの
です。
面倒臭い兄弟や姉妹の関係を、実にうまくとらえた映画だと思います。特に兄
弟、姉妹がいる人は納得してしまうのではないでしょうか。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年2月12日（日）テアトル新宿にて。午後12時20分の回
[「け」のページ]
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