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きみへの距離、１万キロ（EYE ON JULIET）
（2017年 カナダ）（上映時間1時間31分）
監督・脚本：キム・グエン
出演：ジョー・コール、リナ・エル・アラビ、ファイサル・ジグラ、ムハンマ
ド・サヒー、ハティム・セディキ、マンスール・バド
＊新宿シネマカリテほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://kimikyori.ayapro.ne.jp/
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＜ストーリー＞
北アフリカの砂漠地帯にある石油パイプライン。そこで石油泥棒を監視するク
モ型ロボットを、1万キロ離れたアメリカ・デトロイトから遠隔操作しているオ
ペレーターの青年ゴードン（ジョー・コール）。恋人と別れたばかりの彼は、
ある日、監視ロボットを通してアユーシャ（リナ・エル＝アラビ）という若い
女性と出会う。アユーシャには恋人がいたが、親が決めた男性と無理やり結婚
させられようとしていた。それを知ったゴードンは、彼女の運命を変えるべく
大胆な行動に出る……。
＜レビュー＞
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ロボットを介した遠く離れた2人の運命の恋
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インターネットの普及した現代。メールやSNSなどを使って、遠く離れた2人が
ロマンスを繰り広げるお話は、けっして珍しくはありません。ただし、この映
画はディテールがユニーク。2人を仲立ちするのはメールでもSNSでもなく、監
視ロボットなのです。
北アフリカの砂漠地帯にある石油パイプライン。そこでは石油泥棒を監視する
ためにロボットが活躍しています。それを1万キロ離れたアメリカ・デトロイト
から遠隔操作しているのがオペレーターの青年ゴードン。ある日、彼は監視ロ
ボットを通してアユーシャという若い女性と出会います。彼女には相思相愛の
恋人がいましたが、親が決めた男性と無理やり結婚させられそうになっていま
す。それを知ったゴードンは、2人を応援しようと考えます。
ゴードンとアユーシャを結びつけるロボットの造型がナイス。外見はクモのよ
うな形。6本足を器用に使ってユーモラスに歩行。それでいて高性能の監視カメ
ラと武器を装備。怪しい人物を監視して攻撃もできます。オペレーターの声を
現地の言葉に翻訳して、相手と会話することも可能です。
ドラマ的には、対照的な2つの要素をいくつも盛り込んで、起伏を与えているの
が特徴。例えば、最新のハイテクに囲まれたデトロイトに対して、荒涼とした
砂漠に包まれた北アフリカの土地柄。あるいは親の目が厳しい自宅周辺では厚
いコートを着込み、街中の仕事場ではそれを脱いで開放的に過ごすアユーシャ
の服装。
その中でもとりわけ大きな要素は、対照的な２つの恋愛模様です。ゴードンは
彼女にフラれて心に痛手を負い、同僚に勧められた出会い系アプリで出会った
女性と、その場限りの関係を持ったりします。一方、アユーシャの恋はこの上
なくピュアで、ひたむきなもの。だからこそ、ゴードンは彼女たちを応援しよ
うとするわけです。
このドラマには、「ロミオとジュリエット」的な雰囲気も漂っています。ア
ユーシャの恋は許されざる恋。親が決めた男性との結婚を逃れるため、彼女と
恋人は国外脱出を計画します。終盤にはアユーシャが親によって幽閉されてし
まう展開もあります。表面的には最新のロボットが活躍する時代の先端を行く
ドラマですが、根底にあるのは古典的で普遍性ある恋愛ドラマなのです。
アユーシャは国外脱出の費用を稼ぐために、祖母の貴金属を内緒で売ります。
彼女の恋人も資金稼ぎのために危険な仕事を請け負います。そのことがドラマ
に波乱をもたらします。悲劇的な展開が観客の胸を直撃します。
だが、悲劇のままでは終わりません。その後に描かれるのは「運命の恋」の顛
末。ゴードンはアユーシャの運命を変えるべく大胆な行動に出ます。
そこに関しては、もう少しハラハラドキドキの展開にして盛り上げて欲しかっ
た気はしますが、最後の後日談ともども、観客を温かで爽やかな気分にしてく
れることは間違いないでしょう。
ゴードンを演じたジョー・コールは、モニターを前にした表情や態度だけで感
情を表現する難しい演技を、きちんとこなしています。アユーシャ役のナ・エ
ル＝アラビの起伏に富んだ演技もなかなかのものです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年4月8日（日）新宿シネマカリテにて。午後１時の回
[「き」のページ]
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