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孤狼の血
（2017年 日本）（上映時間2時間6分）
監督：白石和彌
出演：役所広司、松坂桃李、真木よう子、音尾琢真、阿部純子、滝藤賢一、矢
島健一、田口トモロヲ、嶋田久作、町田マリー、伊吹吾郎、MEGUMI、中村獅童、
竹野内豊、ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介
＊丸の内TOEIほかにて全国公開
ホームページ http://www.korou.jp/
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＜ストーリー＞
暴力団対策法成立直前の昭和63年。広島・呉原では、地場の暴力団「尾谷組」
と、広島の巨大組織「五十子会」をバックに進出してきた新興組織「加古村
組」の抗争の火種がくすぶり始めていた。そんな中、加古村組関連の金融会社
社員が失踪する。呉原東署に赴任してきた新人刑事の日岡秀一（松坂桃李）は、
暴力団との癒着を噂されるベテラン刑事・大上章吾（役所広司）とともに事件
の捜査にあたるのだが……。
＜レビュー＞
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東映ヤクザ映画風だが濃厚でスリリングな警察ドラマ
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『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌監督が、柚月裕子の小説を映画化。
原作自体が『仁義なき戦い』を意識して書かれたらしいので、東映ヤクザ映画
の匂いがプンプンする映画です。
とはいえ、ヤクザ映画につきもののヤクザ同士の抗争は、あくまでもドラマの
背景。中心的に描かれるのは警察ドラマです。正義感に燃える若手刑事・日岡
とベテラン悪徳刑事・大上がコンビを組み、数々の修羅場をくぐるうちに日岡
が変化していきます。ハリウッド映画などでも、しばしば登場する定番ストー
リーです。さらに、そこに警察内部の腐敗も絡んできます。
この映画の最大の魅力はキャストでしょう。大上は外見も行動も、ヤクザ以上
にヤクザのよう。「警察じゃけ、何をしてもええんじゃ」が口癖で、不法なこ
とも平気でします。一歩間違えば嘘くさい存在になるのですが、それを役所広
司が演じているから説得力があります。ただのワルではなく、心の奥底に何か
があることが伝わってくる演技です。
一方、彼に翻弄される日岡を演じる松坂桃李も、戸惑いや怒り、苦悩などを繊
細に表現する演技。おかげで、彼の変化が自然に受け止められます。
それ以外にも、音尾琢真、滝藤賢一、田口トモロヲ、中村獅童、竹野内豊、ピ
エール瀧、石橋蓮司、江口洋介らがキャラの立った演技を見せます。真木よう
子、阿部純子、MEGUMIらの女優陣も存在感たっぷり。
白石監督の作品には、過激なバイオレンス描写の映画も多いのですが、今回の
冒頭の養豚場のリンチのシーンは、その中でも特に過激かも。それ以降も、何
度も暴力シーンが登場します。あまりに激しい暴力で笑ってしまうところもあ
るのですが（北野武監督の『アウトレイジ』シリーズもそうでしたが）、かな
りのエグさなのでご用心を。
このドラマのストーリー展開のミソは、なぜ広島大出身のエリートのはずの日
岡が、大上のような暴力団との癒着を噂されるような刑事とコンビを組んだか
にあります。実は、その裏にはある特別な任務が存在していたのです。そこか
らこの映画のサスペンスとしてのスリルが生まれてきます。
ドラマの転機は大上の失踪によって訪れます。大上は自らも語っていたように、
微妙な綱渡りをする曲芸師のような日々を送っています。そのバランスが崩れ
た時に、事態は大きく動きます。
終盤になって、大上の意外な素顔が浮かび上がります。そこから見えてくるの
は、警察組織の論理と個人の思いのぶつかり合い。それは日岡にも大きな影響
を与えます。このあたりからは、ややお涙頂戴的なセンチメンタルな世界が展
開しますが、それも含めてきっちりと観客を楽しませる工夫が見られます。
大上の思いを受けた日岡は、ラストで彼なりのやり方で落とし前をつけようと
します。はたして日岡はどうなるのか。彼の今後につい思いを馳せてしまいま
した。
濃厚でスリリング。警察ドラマとしても、若者の成長のドラマとしても、シン
プルに面白い映画です。白石監督の映画の中でも、エンタメとしての完成度が
高いように思えました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年5月15日（火）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前10時55分の回
[「こ」のページ]
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