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来る
（2018年 日本）（上映時間2時間14分）
監督：中島哲也
出演：岡田准一、黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡、青木崇高、柴田理
恵、太賀、志田愛珠、蜷川みほ、伊集院光、石田えり、西川晃啓、松本康太、
小澤慎一朗
＊TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
ホームページ http://kuru-movie.jp/
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＜ストーリー＞
田原秀樹（妻夫木聡）は香奈（黒木華）と幸せな新婚生活を送っていた。そん
なある日、秀樹の会社に謎の来訪者が現れる。それから2年後、周囲で不可解な
出来事が起こり不安になった秀樹は、友人の民俗学者・津田（青木崇高）に相
談し、オカルトライター・野崎（岡田准一）を紹介してもらう。野崎は、日本
最強の霊媒師・琴子（松たか子）を姉に持つキャバ嬢・真琴（小松菜奈）とと
もに調査を開始するのだが……。
＜レビュー＞
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ケレンたっぷりの映像で見せるホラー・エンターティメント映画
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『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『告白』『渇き。』などの個性的な作品を
生み出してきた中島哲也監督の4年ぶりの新作。第22回日本ホラー小説大賞の大
賞受賞作、澤村伊智の『ぼぎわんが、来る』が原作です。
基本になるのは、子供を連れ去る謎のバケモノをめぐる恐怖のドラマです。し
かし、よくあるホラー映画とは違います。
最初に主人公になるのは田原秀樹という青年。彼と婚約者の香奈が出席した実
家の法事が奇妙です。強烈な個性の人々が、人さらいに関する地元の伝承など
について言葉を交わし、飲み、食い、ケンカをし、カオス状態に突入します。
続いて、今度は秀樹と香奈の結婚式の場面。2人のなれそめをコント仕立てで紹
介するユーモラスなシーンも描かれます。こんなふうに、この映画には通常の
ホラー映画の枠を超えた要素がたくさんあります。
秀樹と香奈は結婚して幸せな新婚生活を送ります。そんなある日、秀樹の会社
に「知紗さんの件で」と謎の来訪者が現れます。「知紗」とは、まもなく誕生
する秀樹と香奈の娘につける名前。来訪者がその名を知っていたことに恐怖を
憶える秀樹。秀樹が会いに行くと、その人物は姿を消しています。おまけに、
来訪者を取り次いだ後輩が変死してしまいます。
それから2年後、周囲で不可解な出来事が起こり不安になった秀樹は、友人の民
俗学者の津田を通して、オカルトライター・野崎を紹介してもらいます。野崎
は、知り合いの霊能力を持つキャバ嬢・真琴のところに秀樹を連れて行きます。
そうするうちにも、バケモノの影は次第に秀樹の家に忍び寄ります。襲来の兆
候は様々な形で現れるのですが、バケモノそのものの姿は見えません。そのこ
とで得体の知れない恐怖が高まっていきます。そして、ついに惨劇が起きます。
このあたりはスプラッター風の映像も含めて、いかにもホラー映画らしい展開
が続きます。ただし、そこでも独特の映像美やそこはかとない笑いなどがあっ
て、単純な怖さとは違った雰囲気が漂います。
その後のドラマは主人公が香奈に変わります。中島監督の映画でしばしば描か
れるのが、人間の二面性や闇。今回も、香奈の言動から彼女のそうした部分を
あぶりだすとともに、最初のパートの主人公だった秀樹の闇もあぶりだします。
理想的なパパの姿をブログで綴っていた秀樹ですが、家での生活ぶりは全く違
うものでした。
中島監督らしいケレン味あふれる映像は今回も健在。あの手この手で観客の目
をスクリーンに惹きつけます。様々な怪奇現象はもちろん、CGを使った鮮烈な
イメージショットなども駆使した巧みな映像で見せていきます。
そんな中でも、バケモノの影はますます濃くなっていきます。そして、またし
ても惨劇が起きます。
その後はまた主人公が変わります。今度の主人公はライターの野崎。彼には子
供にまつわる忘れたくても忘れられない過去があります。さらに、キャバ嬢・
真琴にも子供に関する複雑な思いがあります。その2人が知紗と深くかかわるこ
とで、バケモノに翻弄されることになります。
そこで大きな存在感を発揮するのが、真琴の姉で日本最強の霊媒師・琴子。演
じるのは松たか子。なんだ？ この不気味な演技は。こんな松たか子は初めて
観たぞ！ ただし、不気味さの反面、野崎が買ってきたビールを「いただく
わ」と気風良く飲んで笑いを取るあたりもまた、中島映画らしいところ。
そして訪れるクライマックス。これがまあ、壮大かつ壮絶なもの。詳しいこと
は伏せますが、簡単にいえば「お祓い」です。ただし、そんじょそこらのお祓
いではありません。日本を挙げての総がかりでのお祓いなのです。
一歩間違えば、荒唐無稽なただのおバカ映画になりそうなシーンですが、中島
監督は強烈なビジュアルで「これでもか！」と畳みかけます。虚実なんてもは
や関係ありません。ここまでぶっ飛んだ映像を見せられたら、もはや何も言え
ません。
戦いの後、野崎が血だらけでコンビニで買い物をするシーンで笑いを取り、さ
らにその後には「オムライスの歌」のＭＶまで登場させる。いやぁ〜、中島監
督、相変わらずスゴイです。
松たか子以外にも、岡田准一、黒木華、小松菜奈、妻夫木聡、青木崇高、柴田
理恵など、役者がすべて中島ワールドにどっぷりつかって、ふだんならあり得
ない怪演を披露しているところも見もの。
ホラー映画らしい恐怖はそれほどでもありません。その代わり、どす黒い人間
ドラマやケレン味あふれる映像、あちこちに散りばめられた笑いなど、いかに
も中島監督らしい世界が展開。これぞホラー・エンターティメント映画！
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年12月7日（金）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時の回
[「く」のページ]
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