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メイド・イン・ホンコン／香港製造（香港製造／MADE IN HONG KONG）
（1997年 香港）（上映時間）
監督・脚本：フルーツ・チャン
出演：サム・リー、ネイキー・イム、ウェンダース・リー、エイミー・タム
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://mihk.united-ent.com/
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＜ストーリー＞
1997年、香港。中学を中退し、借金の取り立てを手伝う青年・チャウ（サム・
リー）は、知的障がい者のロン（ウェンダース・リー）の兄貴分として彼を守
っていた。ある日、チャウは借金の取り立てに行った家で、ベリーショート姿
が魅力的な少女・ペン（ネイキー・イム）と出会う。そんな中、ロンは女子学
生・サン（エイミー・タム）の飛び降り自殺の現場に偶然立ち合い、彼女の遺
書を拾ってしまう。チャウはペンとロンを連れて、サンの遺書を宛名の相手に
渡しに行くことを決意する。チャウはペンに恋心を抱くようになるが、彼女は
腎臓病で余命わずかだった……。
＜レビュー＞
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返還を前にした香港の若者たちの光と影
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返還を目前に控えた1997年の香港映画。このほど４Ｋレストア・デジタルリマ
スター版となってリバイバル公開されました。
舞台になるのも1997年の香港。主人公の青年・チャウは、中学を中退して、黒
社会のボスの下で借金の取り立てを手伝っています。彼は知的障がい者のロン
がイジメられているのを見るに見かねて、兄貴分となって守っています。
ある日、チャウは借金の取り立てに行った家で、ベリーショート姿が魅力的な
少女・ペンと出会います。そんな中、ロンは女子学生・サンの飛び降り自殺の
現場に偶然立ち合い、彼女の遺書を拾ってしまいます。チャウはペンとロンを
連れて、サンの遺書を宛名の相手に渡しに行くことを決意します。
そうするうちに、チャウはペンに恋心を抱くようになるのですが、彼女は腎臓
病に侵されていて、移植手術ができなければ余命わずかだと知ります。
青春の光と影が鮮烈かつスタイリッシュな映像でスクリーンに刻まれた作品で
す。全編が若々しいエネルギーに満ちています。
主人公のチャウは、中国大陸出身の愛人のもとに走った父が家出し、パート勤
めの母と二人暮らし。その母親も、やがてチャウの生活態度に嫌気がさして家
を出てしまいます。一方、病身で余命わずかのペンも父親が姿を消し、借金取
りに追われる母親とともに暮らしています。
社会の底辺で、もがき苦しむそんな２人の恋を、フルーツ・チャン監督はみず
みずしく描き出します。最も印象深いのは、チャウ、ペン、そしてロンが自殺
した少女サンの墓を探して、高台にある墓地をさまようシーン。そこに彼らの
青春の輝きが刻まれます。
チャンもペンも、今の生活を脱げだしたい思いはあるのだが、現実にはどうに
もできないでいます。希望を持ちたくてもなかなか持てない。行き場を失った
存在です。
この映画では、直接的に香港の中国返還に触れる場面はないのですが、チャン
とペンの揺れ動く姿に、当時の香港の置かれた不安定な状況が反映されている
ように思えます。それが香港の観客を強く惹きつけたのでしょう。
チャウはペンのために臓器移植のドナーになり、母親から盗んだ金で彼女の手
術費と家の借金を肩代わりしようとします。さらに、チャウは彼女のために黒
社会の兄貴に言われて、人殺しを引き受けることになります。
人殺しを決意したチャウが銃を手に一心不乱に踊るシーンが鮮烈。何かにとり
つかれたように踊りまくります。それをスタイリッシュな映像で見せるチャン
監督。様々な思いが交錯し、それをすべて消し去ろうとするチャウの内面が伝
わってきます。
そこからは二転三転する展開が続き、チャウは破滅への道を突き進みます。そ
して墓地での切ないラストシーン。最後に紹介される毛沢東の言葉が意味深で
す。チャウやペン、ロンの運命を思うとき、複雑な思いにとらわれます。
返還前の時代の空気も反映させた鮮烈な青春映画の傑作だと思います。青春の
きらめきと残酷さがクッキリと描かれています。展開などに多少荒っぽいとこ
ろもあるが、それもまた作り手たちの若々しさを感じさせます。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（94点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年3月21日（水）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後1時50分の回
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