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万引き家族
（2018年 日本）（上映時間2時間）
監督・脚本・編集：是枝裕和
出演：リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々
木みゆ、緒形直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美、柄本明、高良健吾、池脇
千鶴、樹木希林
＊ＴＯＨＯシネマズ日比谷ほかにて6月8日より全国公開
ホームページ http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
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＜ストーリー＞
高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋の一軒家。そこで暮
らす治（リリー・フランキー）と妻・信代（安藤サクラ）、息子・祥太（城桧
吏）、信代の妹・亜紀（松岡茉優）、そして家主の初枝（樹木希林）。彼らは
初枝の年金で生活し、足りない分は万引きなどで稼いでいた。そんなある日、
治は近所の団地の廊下で寒さに震えている女の子を見つけて家に連れ帰る。ゆ
り（佐々木みゆ）と名乗るその女の子は、そのまま治たちと暮らし始めるのだ
が……。
＜レビュー＞
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格差社会を背景に家族とは何かを問う
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第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和監督の映
画。日本映画としては1997年の今村昌平監督の「うなぎ」以来21年ぶりの最高
賞です。それを記念して公開1週前の週末に先行上映されたので、さっそく鑑賞
してきました。
タイトル通り万引きで暮らす家族のドラマです。オープニングで、いきなり万
引きの場面が登場。治のサポートで、息子・祥太がスーパーの商品を盗みます。
そして、犯行を終えると何食わぬ顔で商店街でコロッケを買い帰宅しようとし
ます。しかし、その途中で彼らは、近所の団地の廊下で寒さに震えている女の
子を見つけて家に連れ帰ります。
高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い一軒家の治たちの家。そ
こにいるのは、妻・信代、信代の妹・亜紀、家主の初枝、そして翔太。彼らは
初枝の年金で生活し、足りない分は万引きなどで稼いでいます。その生活に、
ゆりと名乗る女の子が加わったわけです。
治たちは遊んで暮らしているわけではありません。治は工事現場で、信代はク
リーニング工場で働いています。しかし、非正規雇用で給料は安い。いわば彼
らは格差社会の底辺の貧困層です。是枝監督が扱うテーマの多くは社会的なも
の。それを真摯に描くことで自然に観客に問題が投げかけられます。今回も社
会から見捨てられた貧困層に焦点を当てることで、確実に社会性が込められた
映画になっています。
前半は、一家の日常を生き生きと、そしてリアルに描いていきます。特に、ア
ドリブのような自然なセリフと登場人物の心理を繊細に見せる映像で、観客は
一家の生活に深く入り込んでいきます。コミカルな要素もあるし、光と影を効
果的に使った映像も印象的です。
ドラマは比較的早いうちに転機を迎えます。ゆりが行方不明になった女の子だ
ったことがわかります。信代は、ゆりが帰りたいと言えば戻すつもりでしたが、
彼女はこのまま一家と暮らすと言います。こうして、ゆりは治たちと暮らし始
めます。この一件を通して、一家の絆がよりクッキリと見えてきます。
とくれば、彼らは間違いなく本物の家族に見えてくるわけですが、中盤になっ
てどうやらそうではないらしいことがわかってきます。それを通して「家族と
は何か？」「血のつながりがなければ家族ではないか？」といった問題が観客
に投げかけられます。
そんな彼らの家族としての輝きが最高潮に達するのが、海に出かけた場面。だ
が、その先に待っているのは衝撃的な出来事です。おりしも、成長するにつれ
て翔太は一家の犯罪稼業に疑問を抱き始めます。そのことが一家に大きな破綻
をもたらします。
終盤は、家族それぞれをアップで映した告白シーンが登場。ここもアドリブの
ような自然でリアルで短いセリフが、彼らの胸の内をダイレクトに伝えます。
そこで彼らがやってきたことが明らかになり、なぜそうした行動に至ったかが
少しずつ見えてきます。
最後に描かれる後日談も印象深いもの。単純な結末を示さず、観客の判断にゆ
だねるあたり、いかにも是枝監督らしい終わり方といえるでしょう。
夫婦を演じたリリー・フランキーと安藤サクラは、さすがに見事な演技です。
久々に関係を持ったあとの微妙な空気感をはじめ、どれも納得の演技。樹木希
林の味のある演技も素晴らしい。松岡茉優はここでも存在感十分だし、子役た
ちの初々しい演技も心に残ります。
過去の是枝作品のエッセンスも織り交ぜた集大成的な作品といえるでしょう。
厳しくつらい場面もある映画ですが、観終わって温かく、優しい空気感が漂い
ます。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年6月2日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時10分の回
[「ま」のページ]
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