モリーズ・ゲーム(MOLLY'S GAME)


(2017年 アメリカ)(上映時間2時間20分)
監督:アーロン・ソーキン
出演:ジェシカ・チャステイン、イドリス・エルバ、ケヴィン・コスナー、マ
イケル・セラ、ジェレミー・ストロング、クリス・オダウド、ビル・キャンプ
*TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
ホームページ http://mollysgame.jp/
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<ストーリー>
スキー・モーグルのトップ選手として活躍していたモリー・ブルーム(ジェシ
カ・チャステイン)は、五輪の国内予選で転倒して重傷を負い選手生命を絶た
れる。その後、ロースクールへ進学することを考えていた彼女だが、その前に1
年間の休暇をとろうとロサンゼルスにやってくる。そこで、ひょんなことから
ハリウッドスターやビジネス界の大物が高額を賭けて遊ぶ闇ポーカー・ゲーム
でアシスタントを経験したモリーは、やがて自ら運営に乗り出すのだが……。

<レビュー>
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トップアスリートの成り上がりと転落の人生
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『ソーシャル・ネットワーク』『スティーブ・ジョブズ』などの脚本家アーロ
ン・ソーキンが初めて監督を務めた映画(もちろん脚本も)。実話をもとに、
ある一人の女性の波乱の半生を描いています。

最初に登場するのはスキーの大会。モーグルのトップ選手として活躍していた
モリー・ブルームが、五輪の国内予選に出場します。厳しい指導で彼女を鍛え
た父の見守る中、スタートするモリー。しかし、ちょっとしたアクシデントで
モリーは転倒し、重傷を負ってしまいます。

続いて場面は12年後に移ります。なんとモリーはFBIによって逮捕されてし
まうのです。いったい何があったのか。ここに至るまでの出来事がモリーの独
白によって描かれます。同時に、逮捕から裁判に至るまでのリアルタイムのド
ラマが、彼女と弁護士との関係を中心に描かれます

例の事故によって選手生命を絶たれたモリーは、学業も優秀だったことから、
ロースクールへ進学して法律家を目指すことを考えます。その前に1年間の休暇
をとろうとロサンゼルスにやってきたことが、彼女の人生を大きく変えます。
ひょんなことからハリウッドスターやビジネス界の大物が高額を賭けて遊ぶ闇
ポーカー・ゲームでアシスタントを経験するようになるモリー。その経験をも
とに、やがて自ら闇ポーカーの経営者になります。

回想パートで特徴的なのが、まるで洪水のような大量のセリフ。それがリズミ
カルで気のきいたセリフばかりなので、違和感を感じることはありません。モ
リーがどんな手段で成り上がっていったかが、興味深く語られます。

闇ポーカーに出入りする様々な人々の人間模様も浮かび上がります。ハリウッ
ドスター、ロックスター、映画監督、ラッパー、ボクサー……。それぞれの勝
負と人生が怪しくクロスして様々な陰影を生み出していきます。ポーカーの魅
力と危険性も十分に伝わってきます。

それにしてもモリーを演じるジェシカ・チャステインのカッコよさよ。敏腕ロ
ビイストを演じた『女神の見えざる手』同様に、猪突猛進型の強い女性を魅力
的に演じています。自分を安く売ることなく、しなやかにしたたかに成功を勝
ち取っていく。その凛々しさが観客の心を躍らせます。

だが、そんなモリーにもピンチが訪れます。ロスで仕事ができなくなった彼女
は、今度はニューヨークに移って闇ポーカーを始めますが、次第に運命の歯車
が狂いだし、ついにFBIに逮捕されます。

しかし、逮捕後も彼女はひるみません。当局は、罪を軽くする代わりに顧客の
情報を提供するように要求しますが、モリーはそれを拒否します。自分の手で
他人の人生を翻弄するようなことは、絶対にしたくなかったのでしょう。その
一件を通して、当初はお互いにギクシャクしていたモリーと弁護士との間に、
心の通い合いのようなものも見えてきます。

一方、ラスト近くではモリーと父親の確執について大きなヤマ場が用意されて
います。そこでモリーの父親に対するわだかまりの原因が明らかにされ、彼女
の行動の源泉が見えてきます。ひたすら強い女性に見えていたモリーの弱さが
浮き彫りになることで、彼女がますます魅力的に見えてきます。

モリーの人生が、スキー場で事故に遭ったあの時に戻り、そこから再スタート
を切ることを示唆したラストも印象的です。

アーロン・ソーキン監督による脚本、ジェシカ・チャステインの演技、いずれ
も観応え十分の映画です。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(87点)


                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2018年5月11日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時40分の回


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