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寝ても覚めても
（2018年 日本）（上映時間1時間59分）
監督：濱口竜介
出演：東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲
本工事、田中美佐子
＊テアトル新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://www.netemosametemo.jp/
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＜ストーリー＞
大阪に暮らす泉谷朝子（唐田えりか）は、鳥居麦（東出昌大）と出会い、運命
的な恋に落ちる。だが、ある日、彼は忽然と姿を消す。2年後、東京に出てカフ
ェで働く朝子は、コーヒーの届け先の会社で丸子亮平（東出昌大＝二役）と出
会う。彼は麦とそっくりな顔をしていた。麦のことが忘れられない朝子は亮平
を避けるが、そんな朝子に亮平は好意を抱く。朝子も戸惑いながらも亮平に惹
かれていく。5年後、朝子は亮平と共に暮らしていた。そんな中、麦がモデルと
して売れっ子になっていることを知る朝子だったが……。
＜レビュー＞
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同じ顔を持つ男の間で揺れる女の謎だらけの恋愛
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5時間超の上映時間ながら、その長さをまったく感じさせなかった前作「ハッ
ピーアワー」で注目された濱口竜介監督の商業映画デビュー作。芥川賞作家・
柴崎友香の恋愛小説の映画化です。
主人公は大阪に暮らす泉谷朝子。足を運んだ写真展の会場で、偶然出会った鳥
居麦と出会い、運命的な恋に落ちます。麦と楽しい日々を送る朝子。だが、麦
は気まぐれな風来坊のような人物。ある日、忽然と姿を消します。
この映画には唐突に思えるところがいくつかあります。例えば、朝子と麦の出
会い。お互いに名乗り合って、それでいきなりキスって何なんだぁ〜〜。そう
いう恋愛もありってことなのか？
ドラマは2年後に飛びます。場所は東京。朝子はカフェで働いています。コー
ヒーの届け先の会社に、丸子亮平という社員がいます。朝子は彼を見て仰天し
ます。麦とそっくりな顔をしていたのです。やがて2人は親しくなります。
それにしても、あんなに似た男が現実にいるはずもないし（双子ならともか
く）、いたとしても同じ女に出会うはずもないでしょう。リアルさには決定的
に欠けます。とはいえ、完全なファンタジーという感じでもない。現実と非現
実の間を浮遊しているような不思議な雰囲気を持つドラマです。
ただし、そんな中でも濱口監督らしさは随所に発揮されている。「ハッピーア
ワー」の醍醐味は、ていねいかつリアルに描かれた会話。それを通して、登場
人物の揺れ動く心理が手に取るように伝わってきました。本作でも、登場人物
の会話が印象的。朝子、亮平、朝子の友人たちとの何気ない会話から、彼らの
微妙な心理状態が見えてきます。
そしてドラマは5年後に飛びます。朝子は亮平と共に幸せに暮らしています。そ
んな中、朝子は麦がモデルとして売れっ子になっていることを知ります。それ
でも心は亮平にあると確信していた朝子ですが……。
終盤で驚かされたのは、朝子の唐突な変心。「え？ まさか」という場面があ
り、それからしばらくして「ええ？ まさかまさか」というさらなる変心があ
ります。普通の映画なら、そこに至る朝子の心根の変化をじっくりと説得力を
持って描くはず。しかし、本作にはそれがありません。
もしかしたら、濱口監督は朝子の決意に至る経緯をじっくりドラマとして描く
のではなく、会話や表情などのほんのわずかなヒントから、観客に推察させよ
うとしているのかもしれません。
二役を演じた東出昌大は、ほぼ同時期に『菊とギロチン』で全く違う役柄を観
ただけに、幅の広い演技のできる俳優になってきたと実感。朝子役の唐田えり
かは、表情もセリフも平板に見えるのですが、それはあえてそうしているので
しょう。その謎めいた態度がこの映画には合っていました。
恋愛ドラマとして今ひとつ理解できないところはあったものの、突然の出来事
に直面した人間が、どういう心理になるのかを観客自らが探るという点で、ユ
ニークで面白い映画だと思いました。濱口監督の今後の作品に注目したいと思
います。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年9月20日（木）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後7時の回
[「ね」のページ]
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