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２重螺旋の恋人（L'AMANT
DOUBLE）
（2017年 フランス）（上映時間1時間47分）
監督・脚本：フランソワ・オゾン
出演：マリーヌ・ヴァクト、ジェレミー・レニエ、ジャクリーン・ビセット、
ミリアム・ボワイエ、ドミニク・レイモン、ファニー・サージュ
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
ホームページ https://www.nijurasen-koibito.com/
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＜ストーリー＞
腹痛に悩む25歳のクロエ（マリーヌ・ヴァクト）は、病院で診察を受けるもの
の、身体には異常がないといわれ、精神分析医ポール（ジェレミー・レニエ）
を紹介される。温厚で誠実なポールのカウンセリングを受けるうちに、不思議
と痛みが和らいでいくクロエ。いつしかポールと恋に落ち、一緒に暮らし始め
る。そんなある日、クロエは街でポールそっくりの男性を見かける。ルイとい
うその男はポールの双子の兄で、職業も同じ精神分析医だという。ポールがル
イの存在を隠していたことを不審に思い、ルイの診察を受けるクロエ。ポール
とは正反対の傲慢なルイに次第に惹かれていくのだが……。
＜レビュー＞
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オゾン監督が仕掛ける双子をめぐる怖くて謎めいたサスペンス
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フランソワ・オゾン監督による心理サスペンス。そこにはエロティックだった
り、ホラー映画的な要素もあります。
映画の冒頭。ロングヘアーの女性がショートカットに髪を切るシーンが映りま
す。ここから早くも怪しく、危険なムードが漂います。
その女性、25歳のクロエは腹痛に悩み、病院に行ったのをきっかけに、精神分
析医ポールのカウンセリングを受けるようになります。そして彼と恋に落ち、
一緒に暮らし始めます。
そんなある日、クロエは街でポールそっくりの男性を見かけます。その男はル
イといい、ポールの双子の兄で、職業も同じ精神分析医。しかし、ポールは一
人っ子だと言い張ります。不審に思いクロエはルイの診察を受けます。
それにしてもオゾン監督の脚本＆演出が、相変わらず冴えまくっています。今
回は、特に不気味で謎めいた雰囲気のつくり方が巧みです。クロエが飼ってい
る猫、隣人の怪しい女性なども効果的に配置されます。クロエの妄想らしきも
のも、謎と緊迫感を高める効果を発揮しています。
ルイは本当にポールの双子の兄なのか。もしかしたら、2人は同一人物なのか。
そもそもルイなる人物はクロエの空想の中の人物ではないのか。そんなことさ
え思わせられます。
クロエはポールのみならずルイとも関係を持ってしまいます。ポールは温厚で
誠実。それに対して、ルイは正反対の傲慢で支配的な人間。そんな2人との関係
を通して、クロエの屈折した内面が見えてきます。彼女が押し殺していた深層
心理がチラリチラリと顔を出し、精神や肉体、理性と欲望といった様々な要素
について分裂にさらされていく描写が秀逸です。
この映画で大きなウエイトを占めるのは、やはり「双子」という要素です。そ
れ自体、考えようによっては不思議な存在で、そこから様々な謎や恐怖が生ま
れてきます。
劇中でルイは、三毛猫の双子が体内で片方に吸収されるエピソードを紹介しま
す。ホラー的なものも感じさせるこのエピソードが、ポールとルイの関係、さ
らにはクロエの過去にまつわる秘密にもつながっていきます。
ドラマが進むにつれて、ポールとルイは確かに双子で、彼らが今のような関係
になった背景には、高校時代のある出来事が影響していることがわかります。
クロエはその謎を突き止めますが、その頃には彼女はどんどん深みにはまり、
ポールとルイの間でもがき苦しむようになります。
いよいよ追い詰められたクロエの前に、落とし前をつける場面が用意されます。
鏡を効果的に使いギリギリの決断をクロエに迫ります。
その後も、奇怪な現象や妄想らしくものが飛び出して、怖さを煽り立てます。
最後の最後まで怖くて謎めいた上質のサスペンスです。
双子の間で揺れ動き、変化し、追い詰められていくクロエを迫真の演技で演じ
たマリーヌ・ヴァクト。顔は同じものの全く性質の違う双子を演じ分けたジェ
レミー・レニエ。いずれも観応え十分の演技です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年8月4日（土）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後1時35分の回
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