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ペンタゴン・ペーパーズ／最高機密文書（THE POST）
（2017年 アメリカ）（上映時間1時間56分）
監督：スティーヴン・スピルバーグ
出演：メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、ボブ・オデ
ンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィットフォード、アリソ
ン・ブリー、ブルース・グリーンウッド、マシュー・リス
＊TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
ホームページ http://pentagonpapers-movie.jp/
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＜ストーリー＞
ベトナム戦争が泥沼化していた1971年。ニューヨーク・タイムズは、ベトナム
戦争に関する政府の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をスクー
プする。出遅れたワシントン・ポストは、編集主幹のベン・ブラッドリー（ト
ム・ハンクス）が文書の入手に奔走する。やがて文書のコピーを手に入れたポ
ストだったが、ニクソン政権は裁判所にニューヨーク・タイムズの発行差し止
めを求める。もしもワシントン・ポストが記事を掲載すれば、同じ目に遭う可
能性が高い。社内の意見が二分される中、亡き夫に代わって発行人・社主とな
っていたキャサリン・グラハム（メリル・ストリープ）は、経営か報道の自由
かの間で難しい判断を迫られる……。
＜レビュー＞
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サスペンスや人間ドラマの魅力も詰まった実録社会派映画
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スティーヴン・スピルバーグ監督による実録社会派ドラマです。
最初に登場するのはベトナム戦争の戦場。激しい戦闘が行われる中、ある男が
戦況を記録しています。彼は、戦況を分析しにきた国防総省のスタッフのエル
ズバーグ。泥沼化している戦争の実情を正直に報告するものの、国防長官のマ
クナマラはそれを無視して、まったく反対のことを記者に語ります。これに義
憤を感じたエルズバーグが、ベトナム戦争に関する政府の最高機密文書「ペン
タゴン・ペーパーズ」を持ち出したことが事件の発端です。
その文書をコピーし、分析して、スクープ記事を発表したのがニューヨーク・
タイムズ。その経緯がスリリングに描かれます。
一方、ワシントンのローカル紙だったワシントン・ポストでは、女性発行人で
社主のキャサリン・グラハムが、経営安定化のために株式公開に踏み出そうと
していました。彼女は自殺した夫の後を継いだのですが、当時は新聞の女性発
行人は異例で、周囲は彼女を低く見ています。彼女自身も、何やら頼りない感
じです。
そのキャサリンを演じるメリル・ストリープの演技が秀逸。控えめで経営者ら
しくなく、普通のおばさん風。それでいて、軽妙でウイットに富んだ会話を繰
り広げます。このキャラが、あとあとの重大な場面で生きてきます。
キャラがいいといえば、キャサリンのもとで編集主幹を務めるベン・ブラッド
リーも同様。切れ者で野心家、こちらもシニカルでユーモアん富んだ会話を得
意とします。演じるトム・ハンクスは主役の時とはひと味違う演技を見せてい
ます。
ベンは、ニューヨーク・タイムズに先を越されたことを悔しがり、自分のとこ
ろでも文書を入手しようと躍起になります。それに応えて、ある記者が昔の伝
手を頼ってエルズバーグに接触しようとします。そのあたりも、まるでスパイ
映画のようなスリリングな展開です。
そして、ついにペンタゴン・ペーパーズのコピーを入手。そのスクープ記事を
掲載しようとするベンたちですが、それは危険なことでもあります。ニクソン
政権は機密文書の暴露に激怒して、ニューヨーク・タイムズの記事差し止めを
裁判所に求めていました。もしもワシントン・ポストが記事を掲載すれば、同
じ目に遭ってしまう可能性が高いだけに、経営と報道のはざまで社内の意見は
二分します。
決断するのはキャサリンです。その決断は、彼女一人に焦点が当たった一人芝
居状態で行われます。そこでのメリル・ストリープの演技はまさに名演。仰々
しさの全くない、静かな、それでいて毅然とした決断が胸を打ちます。
その後もひと悶着があり、新聞の輪転機のタイムリミットを前にした手に汗握
る攻防が続きます。実際の事件の顛末を知らない人はもちろん、よく知ってい
る人でもハラハラさせられるはず。
そして最後の命運は裁判に。そこを派手に盛り上げず、抑制的ながら力強く描
く手腕も見事。いったんすべてが終わったように見せて、ラストにその後のニ
クソンの策略を示すあたりも面白いところ。
実録社会派ドラマですが、サスペンスとしての面白さが満点。女性の自立をは
じめ人間ドラマもきちんと織り込んでいます。これだけいろんな要素をうまく
詰め込めるのだから大したもの。さすがスピルバーグとしか言いようがありま
せん。そして、トランプ政権下の今のアメリカに対するスピルバーグ監督の強
い危機感も投影されています。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（94点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年4月3日（火）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時の回
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