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ライ麦畑で出会ったら（COMING THROUGH THE RYE）
（2015年 アメリカ）（上映時間1時間37分）
監督・脚本：ジェームズ・サドウィズ
出演：アレックス・ウルフ、ステファニア・オーウェン、クリス・クーパー、
エイドリアン・パスダー、ジェイコブ・ラインバック、エリック・ネルセン
＊新宿武蔵野館ほかにて公開
ホームページ http://raimugi-movie.com/
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＜ストーリー＞
1969年、アメリカ・ペンシルベニア州。全寮制の男子高校になじめずに孤独な
学生生活を送っていたジェイミー（アレックス・ウルフ）。小説『ライ麦畑で
つかまえて』に感銘を受けた彼は、演劇作品として上演しようと考える。それ
には著者のサリンジャー（クリス・クーパー）の許可が必要だと知るが、サリ
ンジャーは隠遁生活を送り、連絡を取るすべもない。やがてジェイミーは寮を
飛び出し、演劇サークルで知り合った少女ディーディー（ステファニア・オー
ウェン）の車に乗せてもらい、サリンジャー探しの旅に出るのだが……。
＜レビュー＞
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伝説の作家サリンジャーを探す若者の成長物語
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Ｊ・Ｄ・サリンジャーといえばアメリカの伝説の作家。後年は謎めいた隠遁生
活を送ったことでも知られています。そのサリンジャーの代表作である『ライ
麦畑でつかまえて』に感銘を受けた高校生の成長を描いた映画です。ジェーム
ズ・サドウィズ監督の実体験をもとにしているそうです。
時代は1969年。全寮制の男子高校に通うジェイミーが主人公。彼の通う学校は
運動部が幅を利かせ、演劇部で活動する彼は周囲から低く見られています。そ
んなこともあって、学校になじめずに孤独な日々を送っています。
そんなジェイミーにとってのバイブルが、サリンジャーの小説『ライ麦畑でつ
かまえて』。ジェイミーはそれを脚色して、演劇として上演したいと考えます。
教師から「それにはサリンジャーの許可が必要だ」と言われたものの、エージ
ェントには相手にされません。
そんな中、ジェイミーは学校でいじめを受けたことから、寮を飛び出し、わず
かなヒントをもとにサリンジャー探しの旅に出ることにします。彼をサポート
するのは、演劇サークルで知り合った少女ディーディー。ジェイミーを車に乗
せて一緒に旅に出ます。
2人の小さな冒険が、晩秋の美しい風景をバックに魅力的に描かれます。例えば、
綿花が植えられた場所で綿が空中を軽やかに舞う中、ジェイミーとディーデ
ィーが願い事をして口づけを交わすシーン。まさに青春のきらめきと初々しい
初恋が、鮮やかにスクリーンに刻み込まれています。
全編に流れる温かで優しい歌声もあって、こうした青春の様々な出来事がノス
タルジックかつキラキラした輝きとともに描かれ、心に染みてきます。
サリンジャーの行方はなかなかつかめません。それでも、ひょんなことから居
場所が判明します。というわけで、この映画の大きな特徴がサリンジャーが登
場するところ。
演じるのは2002年の『アダプテーション』でアカデミー助演男優賞を受賞する
など、様々な映画で印象的な演技を披露してきた名優のクリス・クーパー。こ
れが、実に良い味を出しています。頑なに隠遁生活を送る男らしく、自己の信
念を曲げずに何物にも絶対に迎合しません。その一方で、言動の端々にチラリ
チラリと人間味を少しだけ見せます。
サリンジャーには会えたものの、期待した結果は得られなかったジェイミー。
彼に進むべき道を示すのはディーディーです。そして、終盤には再度のジェイ
ミーとサリンジャーとの邂逅。走り去る車。そこから道に落ちる脚本。ジェイ
ミーの確実な成長を示し、温かな余韻を残すラストシーンです。
少し風変わりで、温かく、とても後味の良い青春ドラマです。サリンジャーを
知らなくても楽しめると思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年11月24日（土）新宿武蔵野館にて。午後2時の回
[「ら」のページ]
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