レッド・スパロー(RED SPARROW)


(2018年 アメリカ)(上映時間2時間20分)
監督:フランシス・ローレンス
出演:ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・
スーナールツ、シャーロット・ランプリング、メアリー=ルイーズ・パーカー、
ジェレミー・アイアンズ
*TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
ホームページ http://www.foxmovies-jp.com/redsparrow/
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<ストーリー>
ステージでの大ケガで、バレリーナの道を絶たれたドミニカ・エゴロワ(ジェ
ニファー・ローレンス)。病気の母親の治療費を工面するため、叔父の指示で
ロシア政府の極秘スパイ養成施設に送られる。自らの肉体を使った誘惑や心理
操作などを駆使して情報を盗み出すテクニックを学んだドミニカは、その才能
を買われ、ロシア情報庁の内部に潜むアメリカの二重スパイをあぶり出す任務
を任され、ブダペストに飛んでCIA工作員ネイト・ナッシュ(ジョエル・エド
ガートン)への接近を図るのだが……。

<レビュー>
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女スパイに仕立てられた女性の壮絶な復讐劇
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元CIA工作員だったジェイソン・マシューズの小説を『ハンガー・ゲーム』シ
リーズのフランシス・ローレンス監督が映画化。

主人公のドミニカ・エゴロワは、ボリショイ・バレエ団のバレリーナ。彼女が
病気の母親の世話をしてから劇場へ向かい、ステージに上がるところからドラ
マが始まります。だが、まもなくドミニカは公演中の事故で大ケガをしてしま
います。

一方、ネイト・ナッシュというCIAの工作員は、モスクワ市内で情報源の男と接
触を試みるものの、アクシデントから発砲してしまい、警察に追いかけられる
ことになります。

この2つの緊迫したドラマを同時並行で描いた導入部が秀逸。ワケのわからない
うちに、スクリーンの中に引きずり込まれてしまいます。

こうしてバレリーナの道を絶たれたドミニカの前に現れたのが、情報機関に勤
める叔父。叔父はドミニカにスパイになるように勧めます。そうすれば住む家
も母の治療費も工面できます。しかも、叔父はドミニカの選択肢を奪う仕掛け
をします。その結果、彼女はロシア政府の極秘スパイ養成施設に送られます。

そこからは、スパイ養成施設で訓練を受けるドミニカの姿が描かれます。これ
がまあ、理不尽でエゲツない訓練です。その訓練を施すのは、名優シャーロッ
ト・ランプリング演じる女教官。まるでバケモノのような存在を圧巻の演技。
背筋ゾクゾクもののコワサです。

だが、ドミニカはひるみません。自分をレイプしようとした男に向かって、教
官や生徒の前で全裸になって脚を広げ啖呵を切るシーンが壮絶。彼女の芯の強
さを象徴する出来事です。

やがてドミニカはその才能を買われて、ロシア情報庁の内部に潜むアメリカの
二重スパイをあぶり出す任務を任されます。そして、ブダペストに飛んでCIA工
作員への接近を図ります。その男こそ、冒頭に登場したネイト・ナッシュです。

ここからはドミニカとナッシュの虚々実々の駆け引きが展開。互いに惹かれあ
いながらも、それぞれのキャリアや忠誠心、国家の安全をかけてだまし合いを
繰り広げます。ハニートラップによってナッシュを手なずけ、ロシア情報庁の
上層部に潜む内通者を聞き出そうとするドミニカ。

だが、敵もさるもの。ナッシュは早くにドミニカの正体をつかみ、やがて彼女
をアメリカの二重スパイにしようと働きかけます。

ドミニカの本心がまったく読めないことが、スパイ映画としての面白さを倍加
させます。ほぼ無表情を通しながら、微妙な感情の揺れを覗かせるものの、い
ったい何を考えているのかは最後までわかりません。ドミニカを演じるのは、
『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー賞主演女優賞を受賞しているジ
ェニファー・ローレンス。

終盤、ドミニカはロシア当局に疑われて拷問を受けます。ここはけっこうエグ
いシーンが続きます。

そして、クライマックスでは意外な裏切り者の正体が明らかになり、それをめ
ぐってドミニカが大きな罠を仕掛けます。その果てに訪れるのは壮絶な復讐劇。
冒頭近くでドミニカはすでにある復讐を敢行しています。そしてラストでまた
しても人生を狂わせた相手に復讐の刃を下します。この映画は、ドミニカの復
讐のドラマといっても過言ではないでしょう。

ジェニファー・ローレンスの度胸の座った演技をはじめ、見応え充分のスパイ
映画だと思います。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(87点)

                                 (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2018年4月1日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時40分の回


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