リバーズ・エッジ


(2017年 日本)(上映時間1時間58分)
監督:行定勲
出演:二階堂ふみ、吉沢亮、上杉柊平、SUMIRE、土居志央梨、森川葵
*TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://movie-riversedge.jp/
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<ストーリー>
若草ハルナ(二階堂ふみ)は、彼氏の観音崎(上杉柊平)にイジメられていた
山田(吉沢亮)を助けたのがきっかけで、彼の秘密の宝物について打ち明けら
れる。それは河原に放置された死体だった。ハルナの後輩で摂食障害を抱える
モデルのこずえ(SUMIRE)も、その死体を愛していた。ハルナ、山田、こずえ
の3人は、不思議な友情で結ばれていく。一方、山田に過激な愛情を募らせる
カンナ(森川葵)、父親の分からない子どもを妊娠するルミ(土居志央梨)た
ちも、心に闇を抱えていた……。

<レビュー>
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屈折した若者たちをエッジのきいた演出で見せる
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1993年に雑誌『CUTiE』に連載された岡崎京子の伝説的コミックを行定勲監督が
映画化しました。

主人公の若草ハルナ。その彼氏の観音崎。彼にイジメられていた山田。ハルナ
の後輩で摂食障害を抱えるモデルのこずえ。山田に過激な愛情を募らせるカン
ナ。父親の分からない子どもを妊娠するルミ。

そんな屈折した複雑な心理を抱える6人の高校生たちの青春群像劇です。ただし、
その描き方はかなりトンガっています。

まず驚くのが映像。全編がスタンダードサイズの画角の狭い映像。つまり、映
画館のスクリーンの両端がかなり余白になるワケ。なぜこういう映像にしたの
か。あくまでも想像ですが、行定監督は、若者たちが抱えるやり場のない欲望
や焦燥感をそこに凝縮しようとしたのではないでしょうか。

もう一つ、驚くことがあります。この映画には、通常のドラマとは違うパート
があります。それぞれの登場人物にインタビューした映像が、ところどころに
挟み込まれているのです。そこで彼らは自らの背景や心情を語ります。

こうした仕掛けによって、6人の若者が抱える複雑な心理がよりクッキリと見え
てきます。

ハルナ、山田、こずえが親しくなるきっかけが死体だというのも面白いところ。
彼らはどうにもならない焦燥感を抱え、生きているという実感を持てずにいま
す。死体という存在は彼らのそんな思いのある種のメタファーなのではないで
しょうか

中盤以降には「新たな死体」の存在をきっかけに、ドラマは急展開を見せます。
まさに青春の持つ危うさが暴走していくのです。

そんな中、主人公のハルナの存在感が薄いとも感じたのですが、ラスト近くに
なってようやく納得しました。結局のところ、ハルナは誰とも密接な関係が築
けず、生きている実感が持てず、醒めた思いを心に抱えて生きていたのです。

そんな彼女が、今回の一連の出来事を通して、ようやく変わり始めたことが、
最後のインタビュー映像を通して伝わってきます。喜んだり、悲しんだり、傷
つきながら、生きて行こうという前向きな意欲を、彼女は初めて獲得したので
す。

その後のハルナと観音崎の別れ、山田との夜の散歩とそこで語られるウィリア
ム・ギブスンの詩、そしてラストのUFO召喚。いずれも心にしみるシーンで
す。あまりにもヒリヒリしたドラマですが、ラストのあと味はけっして悪くあ
りません。ハルナをはじめ登場人物の未来をかすかに感じさせる終幕です。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(89点)

                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2018年2月23日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分の回


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