さよなら、僕のマンハッタン(THE ONLY LIVING BOY IN NEW YORK)


(2017年 アメリカ)(上映時間1時間28分)
監督:マーク・ウェブ
出演:カラム・ターナー、ケイト・ベッキンセイル、ピアース・ブロスナン、
シンシア・ニクソン、カーシー・クレモンズ、ジェフ・ブリッジス
*丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://www.longride.jp/olb-movie/
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<ストーリー>
ニューヨークに暮らす青年トーマス(カラム・ターナー)。大学を卒業して親
元を離れひとり暮らしを始めた彼は、アパートの隣室に越してきた、W・F・ジ
ェラルド(ジェフ・ブリッジス)と名乗る不思議な中年男性と親しくなり、人
生の悩みを相談するようになる。そんなある日、想いを寄せる古書店員ミミ
(カーシー・クレモンズ)と入ったナイトクラブで、トーマスは父(ピアー
ス・ブロスナン)の浮気現場を目撃する。母(シンシア・ニクソン)のことが
心配なトーマスは、浮気相手の女性ジョハンナ(ケイト・ベッキンセイル)を
尾行するようになるのだが……。

<レビュー>
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ニューヨークで暮らす若者の成長を繊細に見せる
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『(500)日のサマー』『gifted/ギフテッド』のマーク・ウェブ監督の作品。

映画が始まってすぐに飛び込んでくるのが、隣人役を演じているジェフ・ブリ
ッジスの渋い声。ニューヨークの街の変化について語っています。

そのニューヨークに暮らす主人公トーマス。大学を卒業して親元を離れひとり
暮らしを始めたものの、これといった人生の目的も見いだせずにいます。そん
なトーマスが様々な人生経験をして、大人になっていくという成長物語が、こ
のドラマの柱です。

トーマスは、古書店員のミミという女性に夢中。ただし、彼女には彼氏がいて、
「あなたは恋人ではなく友達」と言われてしまいます。

ところが、まもなく彼はショッキングな出来事に遭遇。ミミと一緒に入ったナ
イトクラブで、父の浮気現場を目撃してしまいます。母のことが心配なトーマ
スは、浮気相手の女性ジョハンナを尾行します。そして、ジョハンナに「父と
別れてくれ!」と直訴します。

この一件を見てもわかるように、トーマスは純粋な若者です。彼の母はもとも
と精神が不安定で、父の浮気のことを知られたら大変だという事情はあるにし
ても、いきなり浮気相手本人に別れを要求してしまうのですから。

だが、話はそれで終わりません。なんと彼はひょんなことから、そのジョハン
ナと関係を持ってしまうのです。

ミミとジョハンナ、2人との恋愛模様を通して、自分ではどうにもならない思い
や、言葉とは裏腹の本心など、大人ならではの様々な心理を経験するトーマス。
その微妙な心理の揺れ動きを、マーク・ウェブ監督が繊細に描いていきます。
派手さはありませんが、じわじわと観客の心に染みこんでいくような描き方が
巧み。それは彼の両親やミミ、ジョハンナの心理描写についても同様です。

そして、この映画にはもう1人忘れてはならない人物が登場します。トーマスの
アパートの隣室に越してきたW・F・ジェラルドと名乗る不思議な中年男性です。
彼はトーマスの話を聞き、人生についてアドバイスを送ります。

いったい、コイツは何者なのだ? と思ったら、終盤に彼のビックリの正体が
明かされます。まさかそんな……という展開ですが、人生の不可思議さと複雑
さをトーマスに知らしめる点では、これ以上ない究極のエピソードかもしれま
せん。

ラストは、ほのかな灯りをトーマスに照らして観客をほのぼのした気分にさせ
ます。誰でもトーマスのような時期があるだけに、自分の経験を思い出して甘
酸っぱい気分になるかもしれません。

主演のカラム・ターナーや脇役たちのツボを心得た演技もこの映画の魅力。サ
イモン&ガーファンクルの曲なども効果的に使われています。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(87点)

                            (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2018年4月14日(土)新宿ピカデリーにて。午前10時55分の回


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