|
シェイプ・オブ・ウォーター（THE SHAPE OF WATER）
（2017年 アメリカ）（上映時間2時間4分）
監督：ギレルモ・デル・トロ
出演：サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、
ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ、オクタヴィア・スペンサー
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1962年のアメリカ。口の利けない孤独な女性イライザ（サリー・ホーキンス）
は、政府の極秘研究所で清掃員として働いていた。ある日彼女は、研究所に運
び込まれた不思議な生き物を目撃する。アマゾンの奥地で原住民に神と崇めら
れていたという"彼"に心奪われ、人目を忍んで会いに行くようになるイライザ。
そんな中、研究を主導するストリックランド（マイケル・シャノン）は、その
生き物の生体解剖を実行しようとする……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
口のきけない女性と謎の水中生物との異種愛
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
謎の水中生物と人間の女性との異種愛を描いたファンタジー・ラブストーリー
です。
1962年のアメリカが舞台。主人公は不幸な生い立ちで、口の利けない女性イラ
イザ。彼女は、政府の極秘研究所で清掃員として働いています。ある日、その
研究所に不思議な生き物が運び込まれ、水槽に閉じ込められます。その生き物
は、アマゾンの奥地で原住民に神と崇められていたといいます。イライザはそ
の生き物に心を奪われ、人目を忍んで"彼"に会いに行くようになります。
イライザが住むのは1階に名画座のある建物（そのため、昔の映画があちらこち
らで登場）。同じ建物に住む初老の描きの男性ジャイルズと、職場の同僚のゼ
ルダが数少ない心を許せる人物です。ただし、ジャイルズは同性愛者だしゼル
ダは女性。恋人らしき存在は影も形もありません。
そんなイライザが入浴中に自慰行為をするというショッキングなシーンから、
この映画はスタートします。それによって、彼女が寂しい心と体を抱えている
ことを浮き彫りにします。
一方、彼女が惹かれる謎の水中生物の"彼"。その造型がよく考えられています。
二足歩行という人間と共通する部分はあるものの、前身は半魚人的な不気味さ。
それでいて、目の感じは魚ではなくやはり人間っぽい。性格も野生そのものの
残忍さと、優しさをあわせ持っています。
イライザと"彼"が交流する場面では、イライザが卵をあげたり、音楽を聞かせ
たり、手話を教えるなど印象的な場面を構築し、2人の接近ぶりを自然に見せて
います。まさに「愛に言葉は要らない」を地でゆく交流です。
そんな中、このドラマの敵役になるのが、研究を主導する軍人のストリックラ
ンド。彼は最初から謎の生き物を敵視し、電流の流れる棒を使って虐待します。
さらに、彼はその生き物を生体解剖しようとします。
それをきっかけにドラマは大きく動きます。"彼"を何とか救出しようとするイ
ライザ。それに協力するジャイルズとゼルダ。そして、研究所のスタッフであ
りながら、実はソ連のスパイであるホフステトラー博士もそれに関わってきま
す。
終盤はストリックランドの執拗な追及が、"彼"とイライザに迫り、ギリギリの
場面に突入。はたして、その先にあるのは喜劇か悲劇か。ラストに映る水中で
のシーンが実に美しく幻想的です。
行動や表情だけですべてを表現する主演のサリー・ホーキンスが見事な演技。、
謎の生き物を演じたダグ・ジョーンズも素晴らしい。さらに、敵役のマイケ
ル・シャノンの憎々しさも見逃せません。
デル・トロ監督の作風はあくまでも自由。後半にはミュージカルシーンまで飛
び出します。毒々しさと優しさ、徹底した映像へのこだわりなど過去作のエッ
センスもタップリ詰め込まれています。彼にとって集大成的な意味を持つ作品
といえるでしょう。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年3月2日（金）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時の回
[「し」のページ]
|