修道士は沈黙する(LE CONFESSIONI)


(2016年 イタリア・フランス)(上映時間1時間48分)
監督:ロベルト・アンドー
出演:トニ・セルヴィッロ、ダニエル・オートゥイユ、コニー・ニールセン、
ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、マリ=ジョゼ・クローズ、モーリッ
ツ・ブライブトロイ、ランベール・ウィルソン、リヒャルト・サメル、ヨハ
ン・ヘルデンベルグ、伊川東吾、アレクセイ・グシュコフ、ステファーヌ・フ
レス、ジュリアン・オヴェンデン、ジョン・キーオ、アンディ・デ・ラ・トゥ
アー、ジュリア・アンドー、エルネスト・ダルジェニオ
*Bunkamura ル・シネマほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://shudoshi-chinmoku.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>

ドイツの高級リゾートホテルでG8財務相会議が開かれようとしていた。その前
夜、国際通貨基金(IMF)のダニエル・ロシェ専務理事(ダニエル・オートゥイ
ユ)は、各国の財務相とゲストであるロックスター、絵本作家、修道士という3
人を招いて自身の誕生日祝いを開催する。会食の後、イタリア人修道士ロベル
ト・サルス(トニ・セルヴィッロ)は、ロシェから告解を受ける。だが、翌朝、
ロシェは死体で発見される。サルスは最後に会った人物として警察の捜査対象
になるが、戒律に従って沈黙を貫く……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
世界の状況を背景にした告解をめぐる社会派ミステリー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

イタリアのロベルト・アンドー監督による社会派のミステリーです。

主人公はイタリア人修道士ロベルト・サルス。彼が、バルト海に面したドイツ
のリゾート地ハイリゲンダムの空港に降り立つところからドラマが始まります。
まもなく彼は迎えの車に乗って高級ホテルに向かいます。そこでは、G8財務相
会議が開催目前。

このサルスという修道士、最初から何だか怪しい雰囲気です。いかにもワケあ
り風で、ICレコーダーに「天国の天使が自らの務めを怠るとき 主は天使を永
遠の暗い部屋に閉じ込める」なんてことをつぶやいて録音します。

そのサルスがどうしてG8財務相会議に来ているのか。会議前夜の国際通貨基金
(IMF)のダニエル・ロシェ専務理事の誕生祝いで、その理由が明らかになりま
す。そこには各国の財務大臣に加え、ロックスター、絵本作家、修道士という
異色の3人のゲストが招かれています。

しかも、サルスはただのゲストではありません。ロシェが彼を招いた真の目的
は、告解をしてもらうためだったのです。しかし、サルスがロシェから告解を
受けた翌朝、ロシェは死体で発見されます。

というわけで、ロシェの死の真相をめぐる謎解きがドラマの核。はたしてロシ
ェは自殺なのか、他殺なのか。

サルスは最後に会った人物として警察の捜査対象になります。しかし、彼は戒
律に従って沈黙を貫きます。告解を録音した可能性のあるICレコーダーはどこ
かに消えてしまいます。そんな中、監視カメラの映像や関係者からの聴取をも
とに、警察は事件の真相を必死で探ります。

そこで効いているのがサルスの意味深な言動。セリフは必要最低限。それ以外
の部分で様々な表情を見せます。例えば、告解の内容を問う大臣たちに対して、
彼は鳥の絵を描いて示します。何とも大胆不敵で、謎めいた行動です。

そして、この映画はただのサスペンスやミステリーでは終わりません。G8財務
相会議では、ある取り決めが秘密裏に行われることになっていました。それは
貧しい国にとって不利な取り決め。それを通して、物質主義にまみれて金が金
を生み出すマネーゲームに没入する現在の権力者たちの姿が描かれます。

終盤で、サルスは自らの思いを語ります。それは物質主義と世界的な格差の拡
大に対する強い警鐘です。その言葉はアンドー監督自身のメッセージと言って
もいいでしょう。

ラストはファンタジー風。サルスに従順に従う犬を通じて、もしかしたらサル
スはこの世のものではなく、本物の神ではないかとさえ思わせます。

いろんな人が次々に登場するので、ややわかりにくいところはありますが、社
会派ミステリーとしてなかなかの作品だと思います。

≪ぽちの満足度≫

★★★☆☆(+1/2★)
(85点)
                            (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2018年3月20日(火)Bunkamura ル・シネマにて。午後12時40分の回


[「し」のページ]