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それから（THE DAY AFTER）
（2017年 韓国）（上映時間1時間31分）
監督・脚本：ホン・サンス
出演：クォン・ヘヒョ、キム・ミニ、キム・セビョク、チョ・ユニ、
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
ホームページ http://www.crest-inter.co.jp/sorekara/
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＜ストーリー＞
小さな出版社の社長ボンワン（クォン・ヘヒョ）は、妻（チョ・ユニ）から浮
気を疑われていた。実際に彼は、一人だけの社員チャンスク（キム・セビョ
ク）と不倫していた。しかし、チャンスクは会社を辞めてしまい、その後釜と
してアルム（キム・ミニ）が採用される。だが、出社初日にアルムは、会社に
乗り込んできたボンワンの妻に浮気相手と誤解されて殴られてしまう……。
＜レビュー＞
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不倫をめぐるあれこれを独特なタッチでユーモラスに
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独特の作風で国際的な映画祭の常連になっている韓国のホン・サンス監督によ
る不倫をめぐるコメディー映画です。
主人公は、小さな出版社の社長で評論も手がけるボンワン。早朝、朝食時にい
きなり妻から浮気を疑われてしまいます。「そんなことあるはずない」と言い
つつも、どうも煮え切らない彼の態度。
続いてまだ暗いうちに出社するボンワンが映ります。かと思えば、彼と若い女
の不倫場面が映ったりもします。そう。やっぱり彼は不倫していたのです。相
手は自分の会社のたった一人の社員チャンスク。しかし、どうも変。ボンワン
とチャンスクの不倫場面は、現在進行形のドラマではなく、過去の出来事のよ
うです。
実は、ボンワンとチャンスクはすでに別れ、チャンスクは会社を辞めていたの
です。ボンワンが出社すると、チャンスクの後釜であるアルムが出社してきて
いました。ところが、まもなく会社に乗り込んできたボンワンの妻は、夫の不
倫相手がアルムだと誤解して、彼女を殴ってしまうのです。
不倫をめぐる変形三角関係ともいうべきドラマ。それを美しく静謐なモノクロ
映像で描きます。そこはかとない品格や情感、ごく自然なユーモアが漂います。
時間を自由に行き来する構成も効果的。例えば、ボンワンが現在進行形でアル
ムと食事をするシーンが描かれます。そこでは「人はなぜ生きるのか？」など
という哲学的な話も飛び出します。アルムがボンワンを「卑怯だ」と非難する
場面もありますが、あくまでも人間の生き方に関わる問題として描かれます。
一方、その直後には、少し前に同じ店でボンワンとチャンスクが食事をした場
面が映し出されます。それは完全に下世話な痴話ゲンカ。チャンスクがボンワ
ンを「卑怯だ」と非難するのも、不倫にまつわる態度を指しています。こうし
た両者の差異が実に面白いところ。
過去のホン・サンス作品もそうでしたが、登場人物が酒を飲んだり、食事をし
ながら会話をするシーンが大半。それを固定カメラによる長回しの映像で映し
ていきます。わずかにカメラを話し手に合わせて左右に振り、時々顔にズーム
インする程度。これがなかなか味わいがあるのです。会話の中から、それぞれ
の人物の微妙な心理の変化が見えてきて、人間や人生について様々なことを考
えさせられます。
ドラマは後半、大きな展開を見せます。なんと会社を辞めて姿を消したはずの
チャンスクが、再びボンワンの前に現れたのです。だが、すでに彼女の後釜に
はアルムが採用されています。さあ、どうなるのか。
ボンワン、チャンスク、アルムが一堂に会して話し合う場面。「つくづく男っ
てバカだなぁ」と苦笑してしまいます。さらに女性のしたたかさも見えてきま
す。
最後に描かれる後日談も印象深いもの。先ほどの「つくづく男ってバカだな
ぁ」という感情に加え、何やら哀感も漂います。
ちなみに、最後にボンワンがアルムに贈る本が夏目漱石の本。タイトルの「そ
れから」（原題：THE DAY
AFTER）は、そこから取ったもののようです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年6月14日（木）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午前11時40分の回
[「そ」のページ]
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