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スターリンの葬送狂騒曲（THE DEATH OF STALIN）
（2017年 フランス・イギリス・ベルギー・カナダ）（上映時間1時間47分）
監督：アーマンド・イアヌッチ
出演：スティーヴ・ブシェミ、サイモン・ラッセル・ビール、パディ・コンシ
ダイン、ルパート・フレンド、ジェイソン・アイザックス、オルガ・キュリレ
ンコ、マイケル・パリン、アンドレア・ライズブロー、ポール・チャヒディ、
ダーモット・クロウリー、エイドリアン・マクラフリン、ポール・ホワイトハ
ウス、ジェフリー・タンバー
＊TOHOシネマズシャンテ、シネクイントほかにて公開
ホームページ http://gaga.ne.jp/stalin/
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＜ストーリー＞
1953年、粛清による恐怖政治で20年に渡って国を支配してきたソ連の独裁者ス
ターリン。ある日、自室で脳出血の発作を起こし、意識不明で倒れているとこ
ろを発見される。まもなくスターリンは後継者を指名することなく息を引き取
る。表向きは厳粛な国葬の準備を進めながら、側近たちは後釜を狙って権力闘
争を繰り広げていく……。
＜レビュー＞
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独裁者スターリンの後継者争いをブラックな笑いで
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ソ連の独裁者スターリンが急死する前後の事情を、史実をもとにしつつフィク
ションを織り交ぜて描いていた映画。ソ連のお話ですが、主要なキャストは英
米の俳優で全編英語で描かれています。
最初に登場するのは、スターリンがいかに怖い指導者だったかというエピソー
ド。
コンサート会場でオーケストラが演奏をしています。そこに突然、スターリン
から「演奏を聞きたいから録音をくれ！」という要求がきます。しかし、録音
はしていません。慌てたスタッフは、オーケストラと観客を呼び戻して、もう
一度演奏させようとします。
こんな常識外れのことが起きるのも、スターリンが絶対的な独裁者だったから。
もしも要求に応えられなければ、殺されるか収容所行きの可能性があります。
とにかく怖い話ですが、スターリンの独裁ぶりがあまりにも桁外れなので、つ
いつい笑ってしまいます。この映画には全編にブラックな笑いが満ち満ちてい
ます。
まもなくスターリンは自室で脳出血で倒れてしまいます。ところが、倒れたま
ま発見された彼を、側近たちはしばらくそのままにしておきます。規則通りに
行動しないと、後で責任をかぶせられかねないと、みんな怖がっていたのです。
おまけに、いざ医者を呼ぼうとしても、有能な医者はみんな殺されるか、収容
所に送られているといいます。これまた、あまりにもバカバカしい話で笑って
しまうしかありません。
こうしてスターリンは、後継者を指名しないままに亡くなってしまいます。と
くれば、当然、その後釜を狙って熾烈な権力闘争が繰り広げられます。表向き
は厳粛な国葬の準備を進めながら、その裏で側近たちはあれこれと策略をめぐ
らしていきます。
バトルの大まかな構図は、中央委員会第一書記のフルシチョフと秘密警察警備
隊長のベリヤの対決。ベリヤはスターリンの腹心のマレンコフを後継に立て、
その陰で実権を握ろうとします。
そこに他の側近たちやスターリンの娘スヴェトラーナ、息子のワシーリーなど
も絡んできます。
そんな彼らを演じるのは個性的な役者たち。フルシチョフを演じたのは、コー
エン兄弟作品の常連でクセモノとして知られるスティーブ・ブシェミ。複雑な
内面を持つキャラを巧みに演じています。ベリヤを演じたイギリスのシェーク
スピア俳優サイモン・ラッセル・ビール、マレンコフを演じたジェフリー・タ
ンバーなど、いずれも見事な演技を見せています。
権力を握るためなら何でもやるのが彼らです。ベリヤは粛清をやめて恩赦を与
えると言い出します。もともとリベラル派として知られるフルシチョフを出し
抜いて、側近や国民の人気取りを使用という魂胆です。
それを苦々しく思うスターリン。彼が反撃に出たのはスターリンの国葬の最中
です。自らの息のかかった秘密警察にモスクワの警備を委ねていたベリヤに対
抗して、スターリンは軍を味方につけようとします。
さてさて、このバトルの結末はどうなるのか。最後に待っているのは怖くて、
悲惨で、哀れなラスト。この頃には、それまでの笑いは消えて、ただひたすら
背筋がゾクゾクしてきます。
今から60年以上前のソ連の話ですが、確実に今の時代とつながっている映画だ
と思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年8月6日（月）シネクイントにて。午後12時20分の回
[「す」のページ]
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