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タリーと私の秘密の時間（TULLY）
（2018年 アメリカ）（上映時間1時間35分）
監督：ジェイソン・ライトマン
出演：シャーリーズ・セロン、マッケンジー・デイヴィス、マーク・デュプラ
ス、ロン・リヴィングストン、アッシャー・マイルズ・フォーリカ、リア・フ
ランクランド
＊TOHOシネマズシャンテほかにて公開
ホームページ http://tully.jp/
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＜ストーリー＞
２人の幼い子どもの育児に追われ、現在３人目の赤ちゃんを妊娠中のマーロ
（シャーリーズ・セロン）。夫のドリューは優しいが、家事も育児も妻に任せ
っきり。やがて３人目が生まれると、マーロは疲れ果てて限界を迎えてしまう。
マーロは兄に紹介された夜専門のベビーシッターを頼ることを決断する。やっ
て来たのはタリー（マッケンジー・デイヴィス）という若い女性。その仕事ぶ
りは完璧で、おかげでマーロは肉体的にも精神的にもゆとりを取り戻していく
のだが……。
＜レビュー＞
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育児に疲弊する女性の変化を説得力を持って描く
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育児で疲弊する女性を主人公にした映画。『ＪＵＮＯ／ジュノ』『ヤング≒ア
ダルト』『マイレージ、マイライフ』のジェイソン・ライトマン監督らしく、
人間に対する温かな視線とそこはかとないユーモアに満ちたドラマです。
主人公のマーロは妊娠中。彼女には２人の子どもがいます。娘のサラは手がか
からないものの、息子のジョナは情緒不安定。そのため学校の校長から「サ
ポートする専属教師を自分で雇ってほしい」と言われてしまいます。
やがてマーロは女の子を出産。するとますます家事が増え、ろくに眠ることも
できない過酷な日々が続きます。さらに、息子ジョナの件で再び校長に呼び出
され、違う学校へ転校してもらうと宣告されます。そんな状況下でも、夫のド
リューは仕事で忙しく、家にいる時はゲーム三昧。
こうしてマーロが疲弊していく様子を、短いショットをつないでテンポよく見
せる描写が秀逸です。『ＪＵＮＯ／ジュノ』『ヤング≒アダルト』でもライト
マン監督とコンビを組んだ脚本のディアブロ・コディは、彼女自身３度目の出
産後にうつ状態になった経験をこの映画に投影させたとか。それだけに説得力
は抜群で、細かなディテールまで納得できます。
そして何といってもシャーリーズ・セロンの演技力。かつて『モンスター』で
も体重を大幅に増やした彼女ですが、今回は18キロ増というそれ以上の増量。
その見た目に加え、繊細でキレのある感情表現が、マーロの苛立ちや疲弊を見
事に表現します。
こうして限界点に達し、どうにもならなくなったマーロは助っ人を呼ぶことに
します。裕福な生活をするマーロの兄クレイグが勧めた、夜専門のベビーシッ
ターを呼ぶことにします。
やってきたのは、タリーという若い女性。その仕事ぶりは完璧で、授乳の時に
さりげなくマーロを起こすだけ。しかも、掃除をしたり、パンケーキを焼くな
ど細かなことまで気を配ります。おかげでマーロは肉体的にも精神的にもゆと
りを取り戻し、どんどん輝いていきます。
このタリーという女性。どう考えても普通の人間とは思えません。とはいえ、
完全にファンタジー的な存在として描くわけでもありません。地に足をつけつ
つ、そこからタリーを微妙に浮遊させます。このあたりのバランス感覚が素晴
らしい。おかげで、マーロが輝きを取り戻していくところも、自然に受け止め
ることができました。
タリーの正体が明かされるのは終盤。それ自体はけっして意外なものではあり
ません。それでも、そこに至る過程に違和感はありません。劇的な変化ではな
く、さりげない前進を示唆するラストの温かさも味わい深いところ。
脚本、演出、演技、いずれも上質で、ワンオペ育児に悩んだ経験のある女性な
らずとも、納得・共感できるドラマに仕上がっていると思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年8月20日（月）TOHOシネマズシャンテにて。午後2時50分の回
[「た」のページ]
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