|
ワンダーストラック（WONDERSTRUCK）
（2017年 アメリカ）（上映時間1時間57分）
監督：トッド・ヘインズ
出演：オークス・フェグリー、ミリセント・シモンズ、ジュリアン・ムーア、
ミシェル・ウィリアムズ、ジェイデン・マイケル、トム・ヌーナン、コー
リー・マイケル・スミス
＊角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://wonderstruck-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1977年、ミネソタ州ガンフリント。母を交通事故で亡くし、伯母の家に身を寄
せる12歳の少年ベン（オークス・フェグリー）。ある夜、母の遺品の中から会
ったこともない父の手がかりを見つける。その直後に落雷に撃たれ耳が聞こえ
なくなったベンだったが、父を捜すためにニューヨークへと旅立つ。その50年
前の1927年、ニュージャージー州ホーボーケン。厳格な父に育てられる聴覚障
害の少女ローズ（ミリセント・シモンズ）は、女優のリリアン・メイヒュー
（ジュリアン・ムーア）に特別な思いを抱き、彼女に会うためにニューヨーク
へ向かう……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2つの時代の少年少女の強い絆と人生の不思議
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『エデンより彼方に』『キャロル』のトッド・ヘインズ監督が、『ヒューゴの
不思議な発明』の原作者ブライアン・セルズニックの小説を映画化。
2つの異なる時代のドラマが交互に描かれます。最初のドラマの舞台は、1977年
のミネソタ州ガンフリント。狼に追われる夢を見る12歳の少年ベン。図書館員
だった母は交通事故で亡くなり、伯母の家に身を寄せています。父親は会った
こともなく名前も知りません。
そしてもう1つのドラマの舞台は、1927年のニュージャージー州ホーボーケン。
厳格な父に育てられる少女ローズは、女優のリリアン・メイヒューに特別な思
いを抱いています。
2つのドラマの大きな違いは映像にあります。1977年のベンのドラマがカラー映
像で描かれるのに対して、1927年のローズのドラマは白黒映像で描かれます。
しかも、サイレント映画のように音声がありません。ローズには聴覚障がいが
あって音が聞こえません。彼女のドラマをサイレント映画で描くことは、1927
年という時代性だけでなく、音のない彼女の世界も表現しているのです。
一方、ある夜、ベンは母の遺品の中から父の手がかりを見つけます。ところが、
その直後にベンは雷に撃たれて耳が聞こえなくなってしまいます。こうして
ローズ同様に、音のない世界に足を踏み入れたベンですが、彼のドラマパート
は基本的に音声付きで描かれます。ただし、時々彼の心象風景を表現するよう
に、わざと音を消した場面を挟み込みます。これが実に効果的。ベンの心理が
リアルに伝わってきます。
父を捜すためにベンは病院を抜け出して、ニューヨークへと旅立ちます。ロー
ズもリリアン・メイヒューが舞台に立つと知って、彼女に会うためにニュー
ヨークへと向かいます。初めて見たニューヨークの街の風景にドキドキしたり、
不安を覚える2人の気持ちが手に取るように伝わります。
耳が聞こえない2人だけに会話に頼ることはできません。それぞれの表情やしぐ
さで、心の内を表現します。それをきちんと成し遂げているのは、ヘインズ監
督の演出に加え、オークス・フェグリーとミリセント・シモンズという子役2人
の演技によるもの。2人とも様々に変化する表情が印象的。ちなみにミリセン
ト・シモンズは、実際に聴覚障がい者だそうです。
映画の中盤で、2人は同じ場所に足を踏み入れます。ベンは声をかけてきたジェ
イミーという少年のあとをついて行き、自然史博物館にたどり着きます。ロー
ズはリリアンが稽古中の劇場に行くものの冷たくされ、兄のウォルターが働く
自然史博物館に向かいます。ジェイミーとともに館内を探検し、秘密の部屋に
まで入るベン。警官に怪しがられて、その目から逃れるローズ。子供たちの冒
険ストーリー的な世界が展開します。
終盤になってベンは父親捜しを再開。鍵になる書店に出向き、そこである人物
と出会います。そして明らかになるその人物とベンの関係。ベンの父親にとっ
て重要な意味を持つジオラマを効果的に使い、魅力的な映像で描きます。ベン
とローズの強い絆、そして人生の不思議が伝わってきます。
観終わって温かな気持ちになりました。過去作とは異質ですが、ヘインズ監督
らしさは充分に発揮されています。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年4月13日（金）角川シネマ有楽町にて。午後1時10分の回
[「わ」のページ]
|
|