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焼肉ドラゴン
（2018年 日本）（上映時間2時間7分）
原作・監督・脚本：鄭義信
出演：真木よう子、井上真央、大泉洋、桜庭ななみ、大谷亮平、ハン・ドンギ
ュ、イム・ヒチョル、大江晋平、宇野祥平、根岸季衣、イ・ジョンウン、キ
ム・サンホ
＊TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
ホームページ http://yakinikudragon.com/
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＜ストーリー＞
大阪万博が目前に迫った1970年代。関西の地方都市の路地の一角に、在日コリ
アンの町があった。戦争で左腕を失った龍吉（キム・サンホ）は、故郷の済州
島を追われて来日した英順（イ・ジョンウン）と再婚し、ここで小さな焼肉店
「焼肉ドラゴン」を営んでいた。彼らには、静花（真木よう子）、梨花（井上
真央）、美花（桜庭ななみ）の三姉妹と一人息子の時生（大谷亮平）がいた。
店は静花の幼なじみの哲男（大泉洋）をはじめ常連客たちで賑わっていたが、
やがて時代の波が押し寄せて……。
＜レビュー＞
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困難にめげずに前を向き続ける家族
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名作と名高い舞台劇「焼肉ドラゴン」が、作者である劇作家・演出家の鄭義信
によって映画化されました。
時代は、高度経済成長期で、大阪万博が目前に迫った1970年代。関西の地方都
市の路地の一角にある在日コリアンの町が舞台。そこにある「焼肉ドラゴン」
という小さな焼き肉屋には、戦争で左腕を失った店主の龍吉と、故郷の済州島
を追われて来日した妻の英順、そして長女・静花、次女・梨花、三女・美花の
三姉妹と一人息子の時生が暮らしています。
ドラマの幕開けは、梨花と婚約者である幼なじみの哲男とのケンカ。2人は婚姻
届けを出しに行ったものの、哲男は役所の職員の態度が気に入らないと届けの
用紙を破ってしまったのです。実は、哲男は静花への思いを断ち切れず、梨花
もそれを知っています。静花は足が不自由ですが、哲男はその原因が自分にあ
ると思っています。一方、三女の美花は勤め先のキャバレーの黒服と不倫中。
そうやって様々な困難を抱えて苦悩する子どもたちに対して、龍吉と英順は少
しでも幸せになって欲しいと願い、働き詰めに働いてきました。
龍吉と英順は時代に翻弄され、故郷を失い、今も日本で差別を受けています。
それでも、龍吉はここで生きていくしかないと決意しています。時生は日本人
の学校で強烈ないじめにあいますが、英順が韓国人学校に時生を転校させよう
とするのに対して、龍吉は頑として応じません。それは、まさに日本で生きて
いくしかないという彼の強い決意の表れでしょう。
そんな一家の日常を鄭監督は生き生きと描いていきます。そこにはたくさんの
ユーモアが込められています。笑いの連続といってもいいでしょう。切実な話
が続いた後に、ちょっとした小ネタで笑いをとったりもします。
登場人物それぞれの心理がリアルに伝わってくるのも、このドラマの魅力。特
に個性的なキャラの三姉妹の苦悩や葛藤、喜びが手に取るように伝わってきま
す。
そして、胸に迫るシーンがたくさんある映画です。哲男が静花に心の内をぶち
まけるシーンは、なまじの恋愛映画よりも感動的。美花の不倫相手に対して、
龍吉が自らの過去を語るシーンも胸を打ちます。後半に一家を大きな悲劇が襲
った際の英順の姿は、涙を誘わずにはいられません。
社会派映画ではないものの、過去から今に至るまでの在日コリアンを取り巻く
様々な問題も、ドラマの背景として織り込まれています。それでも、最後まで
清々しさが漂います。それというのも、家族がどんな時にも希望を失わないか
ら。龍吉は口癖のように言います。「明日はきっとええ日になる。たとえ昨日
がどんなでも」。
このドラマは、在日コリアンたちのドラマですが、同時に時代や民族を超えて
彼らと同様に困難や悲しみに直面する多くの人々のドラマでもあります。
ラストで、それぞれに旅立っていく家族たち。彼らの今後を思わず想像してし
まいました。
両親を演じた2人の韓国の実力派俳優、三姉妹を演じた真木よう子、井上真央、
桜庭ななみなど、役者たちの演技も素晴らしい作品です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年6月23日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時5分の回
[「や」のページ]
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