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夜の浜辺でひとり（ON THE BEACH AT NIGHT ALONE）
（2017年 韓国）（上映時間1時間41分）
監督・脚本：ホン・サンス
出演：キム・ミニ、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、チョン・ジェヨン、ソ
ン・ソンミ、ムン・ソングン、アン・ジェホン
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ http://crest-inter.co.jp/yorunohamabe/
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＜ストーリー＞
妻子ある映画監督との不倫スキャンダルで、逃げるようにドイツのハンブルク
にやって来た女優のヨンヒ（キム・ミニ）。ハンブルクに暮らす女友達のジヨ
ンと街を散策し、この地に住むことを考える。同時に、会いに来ると言ってい
た恋人を半信半疑のまま待ち続ける。やがて帰国したヨンヒは、東海岸の都
市・江陵を訪れ、昔なじみと再会して旧交を温めるのだが……。
＜レビュー＞
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何気ない会話の中から見えてくる揺れ動く心の中
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韓国の名匠ホン・サンス監督の映画。過去のホン・サンス作品と同様に、ごく
日常的な会話を固定カメラで長回しで描いたシーンが中心です。これといって
大した出来事も起きません。それでもなかなか目が離せません。会話の中から
登場人物の繊細な心理が見えてきます。
今回の主人公は女優のヨンヒ。ドラマは2章立てで描かれます。1章の舞台はハ
ンブルク。ヨンヒは妻子ある映画監督との不倫スキャンダルから逃れるように、
韓国からハンブルクへとやってきて、現地で暮らす女友達のジヨンと街を散策
し、この地に住むことを考えたりしています。
ヨンヒとジヨンの何気ない会話から、様々なことが見えてきます。ヨンヒは不
倫相手の監督が今でも好きなようです。場所を知らせたら、「韓国から会いに
行く」という連絡が入ったとのこと。しかし、ヨンヒは「どうせ来ない」と半
信半疑です。そんな揺れる女心が手に取るように伝わってきます。
2章は、しばらくして韓国に帰国したヨンヒが登場。ヨンヒは東海岸の都市、江
陵（カンヌン）を訪れます。先輩の女性ジュニとの約束までの間、映画館を訪
れると、そこには男の先輩のチョンウがいます。近くの喫茶店にはもう一人の
先輩のミョンスもいます。その後、ヨンヒはチョンウ、ミョンス、ジュニ、ミ
ョンスの彼女と一緒に飲みに行きます。
というわけで、2章の中心はヨンヒとかつての仲間たちとの会話。酒を飲みなが
らとりとめのない会話を繰り広げます。そこからも、様々なことが見えてきま
す。ヨンヒは、このまま帰国するのか、あるいはまた外国へ戻るのか決めかね
ています。女優に復帰するのかしないのか。それもまったく見通せません。ま
だ迷いの真っただ中にいるのです。
その後、ジュニの話から、どうやらヨンヒが再び女優に復帰する決意をしたら
しいことが示唆されます。しかし、ドラマはそれでは終わりません。最後には
驚きの展開が用意されています。
ひとりで浜辺を訪れ砂浜に横たわるヨンヒ。心配する声に顔を上げると、そこ
には知り合いの映画スタッフがいます。彼らはヨンヒが付き合っていた映画監
督の次回作のロケハンをしていたのです。監督も来ていると言われたヨンヒは
……。
その先はネタバレになりそうなので伏せますが、ラストにアッと驚く展開が待
っています。なるほど、これはヨンヒなりの決着なのだなぁ。ここから、きっ
と彼女は前に進んでいくのだなぁ。そんなことが自然に伝わってくるラストで
した。
それにしても、あれだけの長回しできちんとした自然な芝居をするのだから、
役者たちの技量は高い。第67回ベルリン国際映画祭で韓国人俳優初となる主演
女優賞を獲得した主演のキム・ミニをはじめ、いずれも素晴らしい演技でした。。
何気ない日常を描きつつも、人生について多くのことを考えさせられる映画で
す。それが、ホン・サンス作品に通底する「人はなぜ生きるのか？」という
テーマにもつながります。奥深く、味わいある世界です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年6月17日（日）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後1時50分の回
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