友罪

（2017年　日本）（上映時間2時間9分）
監督・脚本：瀬々敬久
出演：生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、奥野瑛太、飯田芳、小市
慢太郎、矢島健一、青木崇高、忍成修吾、西田尚美、村上淳、片岡礼子、石田
法嗣、北浦愛、坂井真紀、古舘寛治、宇野祥平、大西信満、渡辺真起子、光石
研、佐藤浩市
＊TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開
ホームページ　http://gaga.ne.jp/yuzai/
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＜ストーリー＞
元雑誌記者の益田（生田斗真）は町工場で働き始める。彼はそこで同じ日に入
った鈴木（瑛太）という男と出会う。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避
けている様子だったが、益田とは少しずつ打ち解けていく。一方、鈴木は、元
恋人から逃げている元ＡＶ女優の美代子（夏帆）と知り合う。そんな中、近く
の町で児童殺害事件が起こったのをきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続児
童殺傷事件の犯人「少年Ａ」ではないかと疑いを抱くようになる……。

＜レビュー＞
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観客に問いを投げかけ重たい余韻を残す
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『64－ロクヨン－前編・後編』『８年越しの花嫁』などの瀬々敬久監督が薬丸
岳の同名小説を映画化。脚本も瀬々監督が手掛けています。

冒頭に登場する工場。そこで元雑誌記者の益田が働き始めます。彼は同じ日に
入った鈴木という男と出会います。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避け
ている様子ですが、益田とは少しずつ打ち解けていきます。そんな中、近くの
町で児童殺害事件が起きます。それをきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続
児童殺傷事件の犯人「少年Ａ」ではないかと疑うようになります。

自分の身近にいる人間が犯罪者ではないかと疑念を持つ映画は、過去にもよく
見られました。しかし、この映画で取り上げられている犯罪は、凶悪な連続児
童殺傷事件。しかも、犯人は14歳の少年。それだけに衝撃は大きいですね。し
かも、過去に秘密を抱えているのは鈴木だけではありません。益田も大きな秘
密を抱えていたのです。

全編を重苦しい雰囲気が支配する映画です。手持ちカメラの映像を多用しなが
ら、益田や鈴木たちの心理を繊細に切り取っていきます。決して仰々しい表現
ではありません。むしろ抑制的な表現。それだからこそリアルです。

描かれるのは益田と鈴木のエピソードだけではありません。鈴木に好意を寄せ
る元ＡＶ女優の美代子、かつて医療少年院で鈴木を担当した教官の白石、息子
が起こした交通事故の遺族に罪を償い続ける山内らのエピソードも配し、そう
した人々の苦悩をスクリーンに刻み付けていきます。

それらを通して突きつけられるテーマは、「罪」あるいは「贖罪」。罪を償う
ということはどういうことなのか。罪を犯した人間は許されないのか。重たい
問いが投げかけられます。

濃密すぎる2時間9分。一瞬も緩みがありません。印象的なシーンも数々ありま
す。益田と鈴木が公園で本音をぶつけ合うシーン。そこで鈴木は益田に「それ
でも生きたい」と吐露します。少年院で仲間に襲いかかった少年に対して白石
が「人が死んだら、その人の存在がなくなるんだよ」と叫ぶシーンも印象的。
その後に描かれる彼女と娘との対面シーンも含めて、「生」と「死」について
も思いをめぐらせずにはいられません。

ラストにはやや希望の灯が。罪（法律的な罪に限らず）を重ねながら生きる苦
難に満ちた人間の存在。それでもきっと寄り添う人がいてくれる。あらためて、
そう感じさせられました。

最近の日本映画には珍しく、ズシリと重たい余韻の残る映画です。個人的には
とても見応えがありました。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（田中ひろあき）

〔鑑賞データ〕
2018年5月26日（土）池袋シネマ・ロサにて。午後12時10分の回

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