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愛がなんだ
（2018年 日本）（上映時間2時間3分）
監督：今泉力哉
出演：岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、穂志もえか、中島歩、片岡
礼子、筒井真理子、江口のりこ
＊テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ http://aigananda.com/
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＜ストーリー＞
28歳のOLテルコ（岸井ゆきの）は、マモル（成田凌）にひと目ぼれして以来、
マモル最優先の生活を送っていた。仕事にも支障をきたし、会社もクビ寸前に
なるテルコ。だが、そんなテルコの熱い思いとは裏腹に、マモルにとってテル
コは恋人ではなく、単なる都合のいい女でしかなかった。それでもテルコは親
友の葉子（深川麻衣）の助言にも耳を貸さず、幸せを感じていた。そんなある
日、テルコがマモルの部屋に泊まったことをきっかけに、2人は接近する。とこ
ろが、その後、マモルからの連絡が突然途絶えてしまう……。
＜レビュー＞
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恋愛の摩訶不思議さをリアルに感じる恋愛映画
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直木賞作家・角田光代の小説を今泉力哉監督が映画化した恋愛映画です。
映画はイタい恋愛モードでスタート。28歳のOLテルコのところに電話がかかっ
てきます。マモルからの電話。病気で寝ているから何か買ってきてくれないか
というのです。テルコは「今ちょうど会社から帰ろうとしてたところ」と言っ
て、喜んで出かけようとします。
オイオイオイ！ 嘘言うんじゃない。お前、もう自宅に戻ってるじゃないか。
と、言いたくなるような場面です。マモルにひと目ぼれして以来、テルコの生
活はマモル最優先。いつもマモルからの電話を待って、呼び出されればどこに
いようとすぐに駆け付けるのです。
こうしてマモルの家に行ったテルコ。うどんを作って食べさせるものの、マモ
ルは深夜にもかかわらず「もう帰っていいよ」と、テルコを追い出します。金
も持たずに困ったテルコは、親友の葉子の家に向かいます。
テルコは、「そんな男やめておけ」という葉子の警告にも耳を貸さず、マモル
中心の生活に幸せを感じています。だが、テルコの熱い思いとは裏腹に、マモ
ルにとってテルコは恋人ではなく、単なる都合のいい女でしかなかったのです。
そんなテルコに対して、最初のうちはイラついてしまいます。同時にテルコを
いいように利用しているマモルにも腹が立ってきます。ところが、観ているう
ちに少しずつ両者に対する見方が変わってきます。何やら自分の中にも、彼ら
みたいなところがあるように思えてくるのです。
思い込み一辺倒でストーカー一歩手前のテルコ。それは極端なケースにしても、
多くの人が熱病のように、誰かにのめり込んだ経験があるのではないでしょう
か。恋愛には、冷静に理性で対処できない部分が必ず存在するはず。
一方、マモルはテルコの自分に対する過剰な気遣いに嫌悪感を持っています。
テルコがマモルを気遣うのは、マモルのことを思ってというより、彼に対する
自分の気持ちを満たすための行動と言えないこともありません。マモルがそれ
に違和感を抱くのは、当然と言えば当然かも。
要するに、テルコとマモルを通して、様々な恋愛の持つ様々な側面をリアルに
描き出すのが今泉監督の真骨頂。おかげで、自分の経験と重ね合わせて、登場
人物それぞれの恋愛の心模様に共感、ないしは理解するようになるのです。
テルコとマモルばかりではありません。口ではテルコに警告を発する葉子です
が、実はカメラマンのアシスタントをしているナカハラの自分に対する好意を
利用して、都合のいいように利用しています。そんな矛盾もまた恋愛の一つの
側面なのでしょう。
全体を包むムードは、軽妙で飄々としてほんわかしたムード。テルコの暴走と
思い込みから生まれるユーモアも、あちらこちらに散りばめられています。今
泉監督は、被写体に寄り添うのでもなく、完全に突き放すのでもなく、絶妙の
距離感で彼らを描き出します。
ドラマは中盤で大きな転機を迎えます。テルコがマモルの部屋に泊まったこと
をきっかけに、2人は急接近。ところが、そこで2人の心はすれ違います。それ
からしばらくして、再びテルコの前に現れたマモルは、すみれという年上の女
性と一緒でした。すみれは、テルコとは正反対のガサツで口の悪い女性。テル
コを振り回していたマモルが、今度は逆にすみれに振り回されます。
終盤は、ナカハラ、葉子、マモルにそれぞれ焦点を当てながら、終幕へ。いっ
たん別れたナカハラと葉子の新たな関係を示唆しつつ、テルコとマモルにも新
しい人生を用意するかに見せるものの、何のことはない。テルコはやはりテル
コ。ドラマの前半に登場した動物園を効果的に使ったラストに思わず苦笑。恐
るべしテルコ！
主演の岸井ゆきのは、不思議ちゃん＆不気味ちゃんをそのまま体現する見事な
演技。その周辺の人物を演じた成田凌、深川麻衣、若葉竜也も良いのですが、
ハイライトは何といってもすみれを演じた江口のりこ。そのたたずまいは、す
みれそのもの。相変わらずいい味出しています。
あまりにもリアルすぎる恋愛模様を堪能できる作品です。テルコと同世代の女
性なら、なおさら共感できるのでは？
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年4月26日（金）テアトル新宿にて。午後1時25分の回
[「あ」のページ]
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