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赤い雪 Red Snow
(2017年 日本)(上映時間1時間46分)
監督・脚本：甲斐さやか
出演：永瀬正敏、菜葉菜、井浦新、夏川結衣、佐藤浩市、吉澤健、坂本長利、
眞島秀和、紺野千春、イモトアヤコ、好井まさお
＊テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ https://akaiyuki.jp/
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＜ストーリー＞
ある雪の日、一人の少年が姿を消す。その少年を見失った兄の白川一希（永瀬
正敏）は、自分のせいだと思いこみ、心に傷を負う。一希の記憶は曖昧で、そ
のため捜査は難航する。その後、近所に住む江藤早奈江（夏川結衣）が容疑者
として浮上するが、完全黙秘を貫いた早奈江は無罪となる。30年後、事件の真
相を追う記者・木立省吾（井浦新）は早奈江の一人娘・江藤早百合（菜葉菜）
を見つけ出し、一希のもとへとやってくる。被害者の兄と容疑者の娘。それぞ
れ心に傷を持つ2人の出会いによって、運命の歯車が大きく動き始める……。
＜レビュー＞
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鮮烈な映像美で綴る心に傷を負った人々のもつれた糸
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少年の失踪事件をめぐるサスペンス・ドラマです。脚本も担当した甲斐さやか
監督は、過去にCMやPV、短編映画などを監督してきましたが、長編劇映画は本
作がデビュー作です。
ある雪の日に少年が姿を消します。兄の白川一希は、弟を見失った自分のせい
だと思いこみ、心に傷を負います。彼の記憶は曖昧で捜査は難航します。その
後、近所に住む江藤早奈江が容疑者として浮上しますが無罪になります。
それから30年後、事件の真相を追う記者・木立は早奈江の一人娘・早百合を見
つけ出し、一希にそれを知らせます。被害者の兄と容疑者の娘が出会うことで、
ドラマが大きく動きます。
滑り出しは、比較的オーソドックスな謎解き映画の趣。ただし、オープニング
から鮮烈な映像が飛び出します。白い雪の中をあちらこちらに移動する赤い色。
どうやら赤い服を着た誰かのようです。赤い色はその後も印象的に使われます。
タイトルにもある赤い雪（血？）、主人公の白川一希が漆職人であることから
漆の赤い色も登場します。そうしたシーンを中心に映像美が際立つ映画です。
全体の構成は、30年後の現在進行形のドラマを描きつつ、事件当時の過去の
パートを随所に織り込むというもの。しかも、それは一希と早百合、それぞれ
の視点から見た過去、つまり記憶です。人の記憶の曖昧さが、このドラマの大
きなポイントになります。
事件の真相を追うドラマとともに、一希と小百合の心の内も描かれます。2人は
事件に翻弄され、今も暗い闇の中をさまよっています。そんな2人の心理をセリ
フ以外の表情や行動によって、繊細に見せていきます。
スクリーンを包む空気のつくり方も巧みです。降り続く雪、どんよりと垂れこ
めた低い空、荒々しい海。まるで、一希と小百合の心の内を表現しているかの
ようです。
後半は謎解きの形を取りつつも、より激しく、深い世界へと入り込んでいきま
す。2人が雪山で、それぞれの情念をぶつけ合うシーンが壮絶。
ラストも心をざわつかせます。誰にでもわかりやすい明確な結末ではなく、観
客それぞれの想像力を刺激するラストです。深い霧の中の一艘の老船。そこに
立つ人物。はたして、あれは何を意味するのでしょうか。それは観客一人ひと
りが考えるしかありません。
やや詰め込みすぎだったり（児童虐待やＤＶ、家庭崩壊、保険金殺人など様々
な要素がテンコ盛り）、十分にこなれていないところもありますが、それ以上
に甲斐監督の才能を十分に感じさせる作品なのは間違いありません。重厚で力
強いタッチが魅力的です。新人監督のインディーズ作品にもかかわらず、大物
俳優が出演しているのはそのためでしょう。
永瀬正敏はこういう陰のある役がよく似合います。セリフのほとんどない中で、
多くのことを表現した菜葉菜の演技も素晴らしい。井浦新、夏川結衣なども納
得の演技だし、小百合の情夫役の佐藤浩市の半端でないゲスぶりも見事です。
謎解き映画の形を取りながら、奥深く深遠な世界を展開して見せた甲斐さやか
監督。次回作にも期待したいところです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
〔鑑賞データ〕
2019年2月4日（月）テアトル新宿にて。午前11時50分の回
[「あ」のページ]
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