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アマンダと僕（AMANDA）
（2018年 フランス）（上映時間1時間47分）
監督：ミカエル・アース
出演：ヴァンサン・ラコスト、イゾール・ミュルトリエ、ステイシー・マーテ
ィン、オフェリア・コルプ、マリアンヌ・バスレール、ジョナタン・コエン、
グレタ・スカッキ
＊シネスイッチ銀座、YEBISU
GARDEN CINEMAほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.bitters.co.jp/amanda/
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＜ストーリー＞
パリで便利屋として働く24歳の青年ダヴィッド（ヴァンサン・ラコスト）は、
パリにやって来たレナ（ステイシー・マーティン）と恋に落ちる。だが、ある
日、仲の良かった姉サンドリーヌ（オフェリア・コルプ）が無差別テロに巻き
込まれ、亡くなってしまう。悲しみに暮れるダヴィッドだったが、サンドリー
ヌには7歳の娘アマンダ（イゾール・ミュルトリエ）がおり、彼女の面倒を見る
ことになる。子どもを世話する責任の重さに戸惑いを隠せないダヴィッド。一
方アマンダは、母親の死を受け入れることができずにいた……。
＜レビュー＞
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家族を失った青年と幼い姪の悲しみと強い絆
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昨年の第31回東京国際映画祭で最高賞の東京グランプリと最優秀脚本賞をダブ
ル受賞した作品です。テロで家族を亡くした青年と幼い姪の絆のドラマ。
前半は、彼らのキラキラした日常が描かれます。パリに住む24歳の青年ダヴィ
ッドは、アパートの管理人や庭の手入れなどバイトを掛け持ちしています。そ
んな中、パリにやって来たレナという美しい女性と恋に落ちます。
一方、彼の姉のサンドリーヌはシングルマザー。英語の教師をしながら、7歳の
娘アマンダを育てています。印象的なのは、サンドリーヌとアマンダがプレス
リーの曲で、ノリノリで楽しく踊るシーン。2人がいかに仲の良い母娘であるか
が即座にわかります。
ダヴィッドとサンドリーヌの姉弟の仲の良さも際立ちます。そして、ダヴィッ
ドとアマンダの叔父と姪の関係についても、2人が一緒に過ごすシーンを観ただ
けで、とても良好で温かな関係であることが伝わってきます。こうした前半の
描写が、その後の悲しみをより深いものにします。
やがてテロが起きます。このテロによってサンドリーヌは亡くなります。レナ
も重傷を負ってしまいます。ダヴィッドは姉を失くした悲しみを抱え、アマン
ダの面倒を見ることになります。しかし、それは容易いことではありません。
これまで叔父と姪として仲良く過ごしてきたといっても、それとはまったく違
うことなのです。
「アマンダの後見人になるのか？」と聞かれてもダヴィッドは答えられません。
自分の叔母モードの家とサンドリーヌの家で交互にアマンダの世話をしつつ、
心は揺れて戸惑うばかり。アマンダを施設に預けることも考えますが、踏ん切
りがつきません。一方、アマンダも母親の死を受け入れることができずにいま
す。
この映画で最も素晴らしいところは、ダヴィッドとアマンダの悲しみや戸惑い
の描写です。劇的に悲しみを煽り立てるようなことはしません。しかし、それ
でもダヴィッドの深い悲しみが伝わってきます。特に彼の泣き方が絶品。号泣
ではなく控えめに涙を流します。何の脈絡もなく突如として泣き出す場面もあ
ります。それがあまりにもリアルで、まるで自分もダヴィッドになったかのよ
うな気持ちになってしまいます。
一方のアマンダは、表面的にはほとんど泣くこともなく過ごします。しかし、
ある夜、突如として息苦しくなる場面があります。また、2つの家を行き来する
生活に不満を漏らしたり、ダヴィッドがサンドリーヌの歯ブラシを捨てたこと
に対して猛然と抗議をします。こちらも、彼女の心の傷の深さをリアルに描写
します。
それでも、ミカエル・アース監督は2人を悲しみの底に置いたままにはしません。
悲しみと苦しみを抱えながらも、ダヴィッドとアマンダの微笑ましく温かな交
流と支え合いを描き出します。だからこそ、その後のダヴィッドの決断が自然
に受け入れられます。
終盤はロンドンに舞台を移します。ダヴィッドと早くに分かれた実母との再会
を経て、サンドリーヌとともに観戦するはずだったウィンブルドンのテニスの
試合がハイライト。試合の行方とアマンダの心情に、冒頭に登場したプレス
リー絡みの「ある言葉」を巧みに絡ませて、微かな希望を灯し勘当を呼びます。
ダヴィッドを演じた若手のヴァンサン・ラコストの演技が光ります。そして、
アマンダ役のイゾール・ミュルトリエも見事。とびっきりの可愛らしさと同時
に、時に大人びた表情をチラリと見せてくれます。脚本、演出、演技、すべて
において完成度が高い作品です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年6月23日（日）YEBISU GARDEN CINEMAにて。午後1時の回
[「あ」のページ]
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