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ビューティフル・ボーイ（BEAUTIFUL BOY）
（2018年 アメリカ）（上映時間2時間）
監督：フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
出演：スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ、モーラ・ティアニー、ケイトリン・デヴァー、エイミー・ライアン
＊TOHOシネマズシャンテほかにて公開
ホームページ http://beautifulboy-movie.jp/
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＜ストーリー＞
父デヴィッド（スティーヴ・カレル）にとって自慢の息子だったニック（ティモシー・シャラメ）。デヴィッドと再婚相手カレンの間に生まれた幼い弟と妹からも慕われていた。だが、ニックはドラッグに手を出してしまい、気づいたときには依存症で抜け出せない状態に陥っていた。それを知ったデヴィッドは、息子の更正を信じて彼を懸命にサポートするのだが……。
＜レビュー＞
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麻薬に溺れる息子と懸命に支える父の苦悩と絆
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薬物依存症になった息子と父親の実体験をもとに描かれた映画。優等生で心優しい青年が、ふとしたきっかけからドラッグに溺れ、治療と再発を繰り返した8年の日々を描きます。
映画の冒頭で父親が相談相手に語ります。「息子が別人になったみたいだ」と。もちろんこれは麻薬に溺れた状態を指していますが、成長とともに変化する子供に対して、親が一般的に抱く戸惑いでもあります。このことからもわかるように、この映画はより一般的な親子の関係にも広がりを見せます。
前半は、施設に入所したり出たり、治ったかと思ったらまた再発したりと苦難の道を歩む息子のニックと、更正を信じて彼を懸命にサポートする父のデヴィッドの姿が描かれます。そこで特徴的なのが、時制を行き来して、かつてのニックの姿を効果的に挿入しているところ。
幼い頃は素直な良い子だったニック。デヴィッドはもちろん、その再婚相手のカレン、そして2人の間に生まれた幼い弟と妹とも仲良く暮らしていました。その一方で、ニックは軽い気持ちで麻薬に手を染め、どんどんのめり込みます。
ニックが麻薬に手を出した原因が明確に示されるわけではありません。「こうあって欲しい」という父親とのギャップ。両親の離婚。思春期らしい繊細な感情。様々な要素が描かれていますが、どれかが決め手になるわけではありません。早い話が、誰でも下手をすればそうなってしまうということなのでしょう。
セリフ以外の部分も含めて、父子の感情の揺れ動きをリアルに見せる映画です。麻薬の迷路から何とか抜け出そうとするものの、どうしても脱出できないニック。懸命に支えるが、そのたびに裏切られて疲弊していくデヴィッド。それぞれの心中が伝わってきて思わずグッとなってしまいます。
父のデヴィッドを演じるのはスティーヴ・カレル。コメディー出身ということもあり、以前はアクの強い役が似合っていましたが、最近は抑制的な演技にも磨きがかかっています。そしてニックを演じるのは『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ。美形の彼が、麻薬によってどんどん落ちて苦悩する青年をきめ細かく演じています。
タイトルにもなっているジョン・レノンの『ビューティフル・ボーイ』をはじめ、効果的に使われる音楽も2人の感情描写をより際立たせます。
中盤、実母などの支えによって本当に立ち直ったかに見えるニック。デヴィッドや継母、妹弟とも再びキラキラした日々を送ります。だが……。
ふとしたことで再び転落してしまうニックの姿から、麻薬の恐ろしさが伝わってきます。この手の薬物依存症が意志の強さなどと関係のない、明らかな病気であることが理解できます。
終盤、デヴィッドはどうしようもなくなり、ついにニックに対するサポートをあきらめます。はたして、その先に待つのは何なのか。
ラストはけっして暗いばかりではありません。ほんの薄明かりを灯して終わります。そしてエンドロール前に、実際のニックがどうなっているのかが語られます。恐ろしい薬物依存ですが、絶望する必要はないのでしょう。
同時に、アメリカの薬物依存の過酷な現状も語られます。それに対する危機感こそが、製作者たちがこの映画を作った動機かもしれません。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年4月15日（月）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時50分の回
[「ひ」のページ]
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