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僕たちは希望という名の列車に乗った
（DAS SCHWEIGENDE KLASSENZIMMER）
（2018年 ドイツ）（上映時間1時間51分）
監督・脚本：ラース・クラウメ
出演：レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツ、ヨナス・ダスラー、ロ
ナルト・ツェアフェルト、ブルクハルト・クラウスナー、レナ・クレンケ、イ
シャイア・ミヒャルスキ
＊Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
ホームページ http://bokutachi-kibou-movie.com/
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＜ストーリー＞
ベルリン壁建設前の1956年の東ドイツ。高校に通うテオ（レオナルド・シャイ
ヒャー）とクルト（トム・グラメンツ）は、ある日、西ベルリンを訪れ、映画
館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を見る。市民に多くの犠牲者
が出たことを知った2人は、クラスメイトに呼びかけて教室で2分間の黙祷をす
る。だが、ハンガリーと同じくソ連の影響下にある東ドイツでは、その行為が
社会主義国家への反逆とみなされてしまう。人民教育相から１週間以内に首謀
者を明かすよう命じられた生徒たちは、重大な選択を迫られるのだが……。
＜レビュー＞
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東西冷戦下の高校生たちの苦悩を描く青春ドラマ
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東西冷戦下の東ドイツで高校生たちに起きた現実を、『アイヒマンを追え！
ナチスがもっとも畏れた男』のラース・クラウメ監督が実話をもとに映画化し
ました。
舞台となるのは1956年の東ドイツ。当時は、まだベルリンの壁が建設される前
で、東ドイツの人々もそれなりの理由があれば西ベルリンに行くことができま
した。そんな中、高校に通うテオとクルトは、ある日、西ベルリンを訪れます。
墓参目的ですが、そこは若い青年。その後は映画館に行って、ちょっとエッチ
な感じの映画を観ようとします。すると、そこで流れたニュース映像で、ハン
ガリーで民衆蜂起が起き多くの犠牲者が出たことを知ります。
東ドイツに戻り登校したクルトは、クラスメイトに呼びかけて犠牲者たちのた
めに、教室で2分間の黙祷をしようと提案します。反対する者もいましたが、結
局、多数決によって彼らは黙祷を実行します。
などと書くと、眉間にシワを寄せてハンガリー国民に対して、強い連帯の意思
を表明したようにも思えるかもしれませんが、実際はそれほど重たい感じでは
ありません。いかにも若者らしく、直情径行で行動している雰囲気。意外に軽
いノリで黙祷します。ある意味、教師に対するイタズラ的な感じでもあります。
だが、その軽さと裏腹に、彼らの行動は重大な事態へと発展します。ただ黙祷
しただけにもかかわらず、厳しい責任追及の矢面に立たされてしまいます。ハ
ンガリーと同じくソ連の影響下にある東ドイツでは、彼らの行為が社会主義国
家への反逆とみなされてしまったのです。
というわけで、高校生たちが国家に翻弄されるドラマ。ただし、それをあくま
でも青春ドラマの枠内で、エンタメ性も織り交ぜながら描いているのがこの映
画の特徴。けっして小難しい主張を前面に押し出したりはしません。
当初、校長は事態を穏便に済ませようとします。しかし、ある教師の密告によ
り、当局の人間が乗り込んできます。さらに、人民教育相まで乗り込んでくる
に及んで、事態は高校生たちにとって制御不能のものとなってしまいます。
このあたりも、いかにも憎々し気な人民教育相や忖度まみれの女性役人などの
悪役を使って、ドラマを盛り上げています。生徒たちの仲間割れを狙った個別
の尋問なども、憎たらしさにあふれています。
人民教育相は１週間以内に首謀者を明かすように生徒たちに命じます。生徒た
ちが通う高校はエリート校。仲間を密告してそのままエリートとしての道を歩
むのか、信念を貫いて大学進学を諦めるのか。こうして生徒たちはどんどん追
い詰められていきます。
そんな生徒たちの心の揺れ動きには、家庭の事情も絡んできます。日々過酷な
仕事をする労働者の父を持つ生徒、有力政治家の父を持つ生徒などなど。また、
生徒同士の恋愛を巡るあれこれなども、彼らの行動の背景として描かれます。
クライマックスの盛り上がりもなかなかのもの。厳しくも潔い彼らの選択が、
青春ドラマとしての盛り上がりを最高潮に持っていきます。そして親子の情愛
なども絡めつつ、彼らの新たな旅立ちを告げてドラマは終わります。
若者たちのちょっとした反逆を起点に、予想外の事態に追い詰められた彼らの
苦悩を描いた青春ドラマです。もちろん、それを通して権力の恐さや、自由の
大切さも伝わってきます。そのあたりのバランスがとても良い映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年5月23日（木）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後6時50分の回
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