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誰もがそれを知っている（TODOS LO SABEN）
（2018年 スペイン・フランス・イタリア）（上映時間2時間13分）
監督・脚本：アスガー・ファルハディ
出演：ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、リカルド・ダリン、エドゥア
ルド・フェルナンデス、バルバラ・レニー、インマ・クエスタ、エルビラ・ミ
ンゲス、ラモン・バレア、カルラ・カンプラ、サラ・サラモ
＊Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。全
国順次公開
ホームページ https://longride.jp/everybodyknows/
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＜ストーリー＞
アルゼンチンで暮らすラウラ（ペネロペ・クルス）は、妹の結婚式に出席する
ために、子どもたちを連れて故郷のスペインに帰省する。実家の家族やワイン
農園を経営する幼なじみのパコ（ハビエル・バルデム）と久々の再会を喜び合
うラウラ。だが、結婚式のパーティーの喧騒の中、娘のイレーネが姿を消して
しまう。やがて何者かから巨額の身代金を要求するメッセージが届く。ラウラ
は警察に通報せずパコに協力を仰ぐ。パコは時間稼ぎに奔走し、ラウラの夫も
アルゼンチンから駆けつける。そんな中で、疑心暗鬼に陥った家族の間で長年
隠されていた秘密が露わになっていく……。
＜レビュー＞
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誘拐事件を通して浮かび上がる家族の過去
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『別離』『セールスマン』でアカデミー外国語映画賞を2度受賞しているイラン
のアスガー・ファルハディ監督が、スペインの田舎町を舞台に全編スペイン語
で撮り上げた映画です。
全体の構図はサスペンスミステリー。アルゼンチンで夫と2人の子どもと暮らす
ラウラが、妹の結婚式に出席するために、子どもたちを連れて故郷のスペイン
に帰省します。ラウラは、実家の家族やワイン農園を経営する幼なじみのパコ
との再会を喜びます。だが、結婚式のパーティーの喧騒の中、娘のイレーネが
姿を消してしまいます。
イランからスペインに舞台を移しても、ファルハディ監督らしさは健在です。
いつもなら事件を通して、男女差別をはじめとしたイランの社会状況をあぶり
だすのですが、今回は家族や近隣の人々の様々な過去をあぶりだします。
例えば、かつて大地主だったラウラの老いた父は、事件をきっかけに土地を売
った人々に対して、「ここは俺の土地だ！」「安く売り過ぎた！」と難癖をつ
け始めます。また、みんなが金持ちだと思っていたラウラの夫が、実は2年も前
から失業中であることが明らかになります。そんなふうに事件の真相を巡って
人々が疑心暗鬼に陥る中で、様々な過去の秘密や確執が見えてきます。
そんな中でも、最大の秘密はラウラとパコの関係に絡むもの。実は、2人はかつ
て恋人同士でした。娘の安否を巡って憔悴していくラウラを前に、パコは元刑
事の男の助言に従い、身代金を用意するフリをして時間稼ぎをします。しかし、
やがてそれはただのフリでは済まなくなってきます。そして、誘拐された娘に
関して大きな秘密が明らかになります。
ファルハディ監督の作品は謎解きや犯人探しが主眼の映画ではありませんが、
それでもそうした要素もきちんと押さえられています。例えば冒頭に登場する、
過去の誘拐事件の新聞記事を切り抜く謎の手。あるいはイレーネと男の子が遊
ぶ鳩だらけの時計台。それらがサスペンスミステリーとしての魅力をアップさ
せます。そこにはヒチコック的なタッチも見て取れます。
時間の経過とともに、ラウラ、パコ、パコの妻ア、ラウラの夫アレハンドロ
など様々な人物たちの関係がどんどんもつれ合い、それぞれの苦悩がスクリー
ンを色濃く覆うようになります。
やがて、ついに真相が明らかになりますが、けっして大団円とはなりません。
それを巡って、また新たな家族の苦悩が始まることを示唆して、ドラマは終焉
を迎えます。
ラウラ役はペネロペ・クルス、パコ役はハビエル・バルデム。実生活の夫婦が
主演を務め、元恋人同士を演じています。さすがに2人とも抜群の演技を披露し
ています。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年6月19日（水）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後7時10分の回
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