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エリカ38
（2019年 日本）（上映時間1時間43分）
監督・脚本：日比遊一
主演：浅田美代子、樹木希林、平岳大、窪塚俊介、山崎一、山崎静代、小籔千
豊、WORAPHOP
KLAISANG、菜葉菜、鈴木美羽、佐伯日菜子、真瀬樹里、中村有志、黒田アーサー、岡本富士太、小松政夫、古谷一行、木内みどり
＊TOHOシネマズシャンテ、シネマ・ロサほかにて全国公開
ホームページhttp://erica38.official-movie.com/
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＜ストーリー＞
水商売をしながらネットワークビジネスを手がける渡部聡子（浅田美代子）は、
喫茶店で偶然知り合った女性・伊藤（木内みどり）の紹介で、平澤（平岳大）
という男と出会う。平澤は国境を超えたビジネスを展開していると言い、途上
国への支援事業の名目の投資話で大金を集めていた。聡子もそれを手伝うよう
になったが、あることから平澤との連絡を絶ち、今度は自ら支援事業の名目で
金を集め始める。金持ちの老人をたらし込んで豪邸を手に入れ、老人ホームに
入っていた母を呼び寄せる聡子だったが……。
＜レビュー＞
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悪女か被害者か、底知れぬ女を浅田美代子が演じる
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浅田美代子といえば、テレビの「時間ですよ」のお手伝い役でデビューして以
来、明るく可愛い女性というイメージが定着しています。そんな彼女が悪女役
に挑んだ映画です。
実はこの映画、2018年9月に他界した樹木希林が生前、プライベートでも親交が
深かった浅田美代子のために自ら企画を手がけた作品。おそらく、浅田の持つ
役者としての奥の深さを評価して、それを発揮する場を作ってあげたいと感じ
たのではないでしょうか。
実年齢を20歳以上も詐称し、巨額の投資詐欺に手を染め、最後は異国で逮捕さ
れた女の半生を描いた、実話をもとにしたドラマです。
水商売をしながらネットワークビジネスを手がける渡部聡子は、喫茶店で偶然
知り合った女性・伊藤の紹介で、平澤という男と出会います。平澤は途上国へ
の支援事業の名目でたくさんの人を集めて、投資話で大金を集めていました。
いかにももっともらしい理想を語り、人々の投資の後押しをする平澤。冷静に
なって考えれば、中身は空っぽで実体のない話ですが、その場で聞いている者
たちはつい引き込まれてしまいます。
聡子もそれに引き込まれて、平澤を手伝うようになり、彼と親密な関係になり
ます。しかし、やがて平澤が複数の女と付き合い、自分を裏切っていることを
知ったエリカは、平澤との連絡を絶ちます。そして、今度は自ら支援事業の名
目で金を集め始めます。さらに、金持ちの老人をたらし込んで豪邸を手に入れ、
老人ホームに入っていた母を呼び寄せます。
この映画の全体の構成は、ジャーナリストの男による事件の関係者へのインタ
ビューが随所に挟み込まれる形を取っています。それを通して、聡子の得体の
知れなさを印象付ける狙いがあるのでしょう。
日比遊一監督の作品は初めて観ましたが、映像＆演出に関して様々な細かな仕
掛けが施されている。何よりも特徴的なのが、ちょっと古びた感じの映像。そ
れによってこのドラマがリアルな出来事というよりも、ある種の非現実的でフ
ァンタジー的な要素を持つ出来事に思えてきます。そして、それは主人公・聡
子の人物像をより複雑で屈折したものに見せる効果も発揮しています。
終盤では、架空の投資話が行き詰まり、被害者たちから糾弾される聡子。その
場面を長回しの舞台劇のような構成で見せます。聡子の人生の破たんの前兆に
ふさわしい緊迫感に満ちた場面です。
聡子の得体の知れなさはハンパではありません。彼女は本当の悪女なのか、そ
れとも憐れな女なのか。少女時代の彼女の家庭のエピソードなども盛り込みつ
つ、その人物像に迫るのですが、それでもわかりやすい結論にたどり着くこと
はありません。最後まで彼女の内面は複雑で底が知れません。
そんな人物を演じたのが浅田美代子です。これがまあ凄い演技。タイで愛人と
してかこった若い男の前では本当に38歳のような若さを見せます。一方、最後
に逮捕されて接見室に現れたその顔は老婆といってもよいほど老け込んでいま
す。そんなふうに場面場面で全く違う表情、たたずまいを見せます。とても同
一人物とは思えないほどの多様な姿を、きっちりと演じ切っています。
失礼ながら、浅田美代子がここまで演技力のある俳優だとは気づきませんでし
た。その演技力にあらためて脱帽です。今頃、天国の樹木希林が言っているか
もしれません。「ほーらね。美代ちゃんって本当はみんなが思っているよりも
ずっと凄い女優なのよ」と。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年6月9日（日）池袋シネマ・ロサにて。午後1時35分の回
[「え」のページ]
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