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ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた（HEARTS BEAT LOUD）
（2018年 アメリカ）（上映時間1時間37分）
監督：ブレット・ヘイリー
出演：ニック・オファーマン、カーシー・クレモンズ、テッド・ダンソン、サ
ッシャ・レイン、ブライス・ダナー、トニ・コレット
＊ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて公開
ホームページhttp://hblmovie.jp/
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＜ストーリー＞
ニューヨーク・ブルックリンの海辺の街、レッドフックでレコード店を営む元
ミュージシャンのフランク（ニック・オファーマン）、17年間続けてきた店を
閉めることにする。彼が男手一つで育ててきた娘のサム（カーシー・クレモン
ズ）は、ロサンゼルスの医大への進学が決まっていた。そんなある日、フラン
クは勉強中のサムの邪魔をして一緒に曲をレコーディングする。その曲を勝手
にSpotifyにアップロードしたところ、思いがけず好評を得る。フランクは本気
で娘とバンド活動をしようと考えるのだが……。
＜レビュー＞
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父と娘の絆と自立を魅力的な音楽とともに描く
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『シング・ストリート 未来へのうた』をはじめ、これまでに音楽映画の名作は
たくさんありましたが、新たに素敵な音楽映画が誕生しました。
ニューヨーク・ブルックリンの海辺の小さな街、レッドフックがドラマの舞台。
そこでレコード店を営む元ミュージシャンのフランクは、経営不振から17年間
続けてきた店を閉めることにします。彼が男手一つで育ててきた娘のサムは、
ロサンゼルスの医大への進学が決まっています。
というわけで父娘の物語です。父のフランクはいまだに昔の夢を捨てられず、
商売にも不熱心な大人になれない大人。一方、娘のサムは自分の進路を明確に
見据えたしっかり者。大人と子供が逆転したような、この2人が巻き起こすあれ
これをユーモアたっぷりに、シニカルなセリフなどを盛り込みつつ描きます。
やがて2人に転機が訪れます。フランクは以前から娘の音楽の才能を感じ、一緒
にバンドをやりたがっていました。そして、ある夜、勉強中のサムの邪魔をし
て「セッションしよう」と誘います。この時の2人の距離感が絶妙です。サムは
フランクに対して「やめてよ！」と迷惑がっています。それでも最後は一緒に
曲を作りレコーディングします。サムも本当は音楽が好きで、心の底で父娘が
つながっていることを示すエピソードです。
そこでレコーディングした曲をフランクは、勝手にSpotifyにアップロード。す
ると、それが結構な反響を巻き起こします。それに気をよくしたフランクは、
本気で娘とバンド活動をしようと考えます。しかし、サムはあくまでも街を出
て医大に進学しようとします。
中盤以降は、こうした父娘の思いのすれ違い、対立を描きます。そこにはサム
の恋愛（同性が相手だというのが今どき）、そしてフランクと店の大家の女性
との微妙な関係なども絡んできます。彼らやフランクが通うバーの店主など、
すべての登場人物が魅力的なのもこの映画の特徴。
そして何よりも、音楽映画らしく楽曲が素晴らしい。Spotifyにアップロードし
た曲、サムが恋人のことを思って作った曲、フランクがかつて事故死した妻と
サムのことを思って作った弾き語りの曲など、いずれもが心に刺さってきます。
観終わってサントラ盤が買いたくなりました。
ドラマが進むにつれて、フランクはただの困った父ちゃんではなく、過去を引
きずっていることがわかります。彼は妻とともにバンド活動をしていましたが、
サムが幼い頃に彼女は事故死。それが今も心の傷になっているようです。そん
なフランクにも悩みや苦しみがあり、同時にサムにも迷いがあります。
クライマックスは閉店当日のレゴード店でのライブ。フランクのギター以外は
打ち込みですが、何よりもサムの歌声が圧巻。カーシー・クレモンズが、吹替
なしで自分で歌っているというから見事です。
ラストに描かれるさりげない後日談も味わいがあります。邦題通りにそれぞれ
の「たびだち」を印象付けます。父と娘の自立、そして何よりも2人の絆の強さ
をクッキリとスクリーンに刻み付けて、ドラマは終焉を迎えます。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年6月8日（土）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後2時30分の回
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