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荒野にて（LEAN
ON PETE）
（2017年 イギリス）（上映時間2時間2分）
監督・脚本：アンドリュー・ヘイ
出演：チャーリー・プラマー、クロエ・セヴィニー、トラヴィス・フィメル、
スティーヴ・ザーン、スティーヴ・ブシェミ
＊ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開
ホームページ https://gaga.ne.jp/kouya/
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＜ストーリー＞
幼い頃に母親が家出し、その日暮らしの父と暮らす15歳の少年チャーリー（チ
ャーリー・プラマー）。家計の助けになればと厩舎のオーナー、デル（ステ
ィーヴ・ブシェミ）のもとで競走馬リー・オン・ピートの世話を始める。そん
なある日、父親が愛人の夫に殺されてしまう。さらに、デルが勝てなくなった
ピートの殺処分を決める。チャーリーはピートを連れて、唯一の親戚である伯
母を探すため旅に出るのだが……。
＜レビュー＞
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荒野を馬と旅する孤独な少年の挫折と成長
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シャーロット・ランプリングとトム・コートネイが共演し、第65回ベルリン国
際映画祭で銀熊賞をダブル受賞（最優秀女優賞、最優秀男優賞）した『さざな
み』のアンドリュー・ヘイ監督による作品。少年の成長を描くロードムービー
ですが、登場する主要キャラはいずれも様々な側面を持ちます。けっして単純
な人物像は提示されません。それが、この映画に深みと味わいを加えています。
主人公の15歳の少年チャーリーは、幼い頃に母が家出して、父と2人暮らし。孤
独な日々を送っています。父はチャーリーを心から愛しているるものの、女癖
が悪くその日暮らしの生活をしています。
ある日、チャーリーは家の近くに競馬場があるのを知り、そこの厩舎のオー
ナー、デルと知り合い、家計の助けになればと競走馬リー・オン・ピートの世
話を始めます。
デルも一筋縄ではいかない人物です。口うるさく、馬に薬物を与えてレースに
勝とうとするなど汚いこともやる反面、チャーリーに約束以上の報酬を与えた
りもします。また、デルの知り合いの女性騎手ボニーも、様々な過去を抱えて
いる模様。チャーリーに温かく接し、母親のような存在になります。しかし、
競馬になれば非情になります。リー・オン・ピートを溺愛するチャーリーを
「競走馬はペットじゃない」といさめます。
この2人を通して、チャーリーは人生を学びます。2人は人生の温かさと同時に、
それが簡単なものではないこと、時には思い通りにならないことを身をもって
教えます。デルを演じるスティーヴ・ブシェミ。ボニーを演じるクロエ・セヴ
ィニー。いずれもインディーズ映画を中心に活躍する個性派俳優。そんな2人が
演じるから、その役柄にますます説得力が生まれます。
ただし、チャーリーが本当に成長するのは、中盤に訪れる大きな転機がきっか
け。女癖が悪かった父親が、愛人の夫に殺されてしまいます。さらに、デルは
勝てなくなったリー・オン・ピートの殺処分を決めます。ボニーに助けを求め
るものの、彼女はそれを拒否します。そこでチャーリーは、リー・オン・ピー
トをトレーラーに乗せて旅に出ます。目的地は唯一の親戚である伯母がいるは
ずの土地。
後半は、いよいよロードムービーになります。そこでは様々なことが起きます。
それらを通してチャーリーは成長していきます。邦題の「荒野にて」というの
は、まさにチャーリーが旅する荒野のことでしょう。その雄大かつ厳しい風景
が、圧倒的な映像で描かれます。それがチャーリーの成長を印象深いものにし
ます。
描き方は抑制的で、チャーリーの変化も明確に刻まれるわけではありません。
しかし、その表情一つ一つから、彼が何を思い、どう変化していったかが自然
に伝わってきます。
終盤チャーリーは、荒野から都会に足を踏み入れます。そこもまた過酷な場所。
そして、ここでも思いもよらない体験をします。
ラストもチャーリーの心情がよく伝わってきて、切なさと温かさが同時に感じ
られました。そこはかとない感動と余韻が残るエンディングです。
チャーリーを演じたのは、『ゲティ家の身代金』にも出演したチャーリー・プ
ラマー。セリフはもちろん、その一挙手一投足から主人公の心の内面が伝わる
演技でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年4月29日（月・祝）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後2時5分の回
[「こ」のページ]
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