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リトル・フォレスト 春夏秋冬（LITTLE FOREST）
（2018年 韓国）（上映時間1時間43分）
監督：イム・スルレ
出演：キム・テリ、リュ・ジュンヨル、ムン・ソリ、チン・ギジュ
＊シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開
ホームページ http://klockworx-asia.com/little-forest/
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＜ストーリー＞
ソウルで就職にも恋愛にもつまずき、自然に囲まれた故郷へ戻ってきたヘウォ
ン（キム・テリ）。幼なじみのジェハ（リュ・ジュンヨル）とウンスク（チ
ン・ギジュ）と再会する。彼らとともに農作物を育て、旬の食材で一食一食を
丁寧に作る生活を始める。冬から春、夏、秋へと季節が移り変わり、再び冬を
迎えることになったヘウォンは、新たな一歩を踏み出すのだが……。
＜レビュー＞
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美味しい料理と美しい自然と若者の迷いのドラマ
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五十嵐大介の同名人気コミックスが原作の韓国映画。すでに日本では、森淳一
監督、橋本愛主演の2部作として2014年と2015年に公開されています。
舞台となるのは自然に囲まれた田舎の村。ある冬の日、主人公のヘウォンが、
故郷であるこの地に戻ってきます。彼女は、大都会のソウルで就職にも恋愛に
もつまずき、逃げるようにして帰郷したのです。まもなく、幼なじみのジェハ
とウンスクはヘウォンの帰郷を知り、たびたび家を訪れるようになります。
この映画で最も特徴的なのが料理。ヘウォンはジェハ、ウンスクとともに農作
物を育て、旬の食材を使って一食一食を丁寧に作る生活を始めます。蒸し餅、
パスタ、はてはマッコリまで、新鮮な食材から作られる数々の料理の美味しそ
うなことといったら、まさに垂涎もの。そんな料理を見ているだけで、楽しい
心持ちになってきます。
そして、もう一つの特徴が四季の美しい風景。冬にヘウォンが帰郷し、春、夏、
秋へと季節が移り、再び冬を迎えるまでを、鮮やかな映像で綴っています。特
に光を効果的に使った映像が印象的。
ただし、料理や自然の風景だけが魅力の映画ではありません。人間ドラマもき
ちんと描かれます。それはヘウォンを中心に、ジェハ、ウンスクも含めた3人の
若者の迷いと成長のドラマです。
都会で就職にも恋愛にもつまずいて帰郷したヘウォンは、これからどう生きる
べきか迷っています。そしてヘウォンには、もう一つの大きな迷いがあります。
それは母親との確執。父の死後、母と共に暮らしていたヘウォンですが、大学
進学を前に母は姿を消して、音信不通となってしまいました。そのことに対す
るわだかまりが、彼女の心を大きく支配しています。
ヘウォンにとって母親との思い出の多くは、料理に関係しています。そこで料
理を切り口に、かつての回想を織り交ぜつつ、現在の彼女の心の揺れをリアル
に見せていきます。
一方、幼なじみの青年ジェハは、大学を出て会社勤めをしていたものの肌に合
わず、故郷に戻って農業をしています。また、同じく幼なじみの女性ウンスク
は、ずっとこの地で暮らし、地元の農協で働いています。2人もまた、自分の生
き方や恋愛に悩みを抱えています。
そんな3人を見つめる視線はとても温かいもの。ウンスクのひょうきんなキャラ
を活かした笑いなど、ユーモアも全編に散りばめられています。ジェハをめぐ
るヘウォンとウンスクによる恋のさや当てのような場面もあります。
やがてヘウォンの母に対する思いは変化。再び冬を迎える頃に彼女は、新たな
一歩を踏み出します。
ヘウォンの成長を示しつつ、余白を残したラストもよい後味です。はたして、
あの空いた窓の向こうには、何があるのでしょうか。あれこれと想像させるラ
ストです。
料理、自然、人間ドラマ、笑いなどが過不足なく配されたエンタメ度の高い作
品です。クスクス笑って、若者たちに共感し、最後には温かな気持ちで映画館
を後にできるのではないでしょうか。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年5月18日（土）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後12時25分の回
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