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マイ・ブックショップ（THE BOOKSHOP）
（2017年 スペイン・イギリス・ドイツ）（上映時間1時間52分）
監督・脚本：イザベル・コイシェ
出演：エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、パトリシア・クラークソン
＊シネスイッチ銀座ほかにて公開
ホームページ http://mybookshop.jp/
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＜ストーリー＞
1959年、イギリスの海辺の小さな町。戦争未亡人のフローレンス（エミリー・
モーティマー）は、夫との夢を実現するために、それまで町に一軒もなかった
本屋を開こうとする。保守的な町でそれを快く思わない人もいたが、それでも
何とか開店にこぎつける。だが、地元の有力者ガマート夫人（パトリシア・ク
ラークソン）の画策により、次第に経営が立ち行かなくなっていく。そんな中、
邸宅に40年も引きこもっている読書好きの老紳士ブランディッシュ氏（ビル・
ナイ）は、フローレンスを支えようとするのだが……。
＜レビュー＞
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書店経営に奮闘する女性のたくましく温かなドラマ
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ブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルドの小説を『死ぬまでにした
い１０のこと』『しあわせへのまわり道』のイザベル・コイシェ監督が映画化
しました。
1959年、イギリスの海辺の小さな町が舞台。そこに住むフローレンスは、16年
前に夫を戦争で亡くした未亡人。夫との思い出を抱いて、本屋が1軒もないこの
町で書店を開こうとします。5年間空き家のままだった古い建物を購入し、そこ
を書店兼自宅にするつもりでしたが、そこには数々の困難が。その背景には、
女性のビジネスがまだ一般的ではなかった当時の時代性と、保守的な土地柄が
あるのでしょう。
なかでも彼女の前に立ちはだかるのが、町の有力者ガマート夫人。フローレン
スが買った建物を「私も買おうと思っていた」「そこに芸術センターを開くの
だ」と主張する彼女は、フローレンスの計画を潰そうとします。それでもフ
ローレンスは何とか開店にこぎつけます。
こうしてフローレンスとガマート夫人の対立を軸に、数々の困難にも負けずに
書店経営に挑むフローレンスの姿が描かれます。いわば彼女の闘いのドラマで
す。ただし、とげとげしい雰囲気はありません。ノスタルジックで温かさを感
じる音楽、そして海辺の町の美しい風景の数々もあって、穏やかで優しい空気
が流れます。
フローレンスを演じるエミリー・モーティマーの自然体の演技が見事です。穏
やかで、しなやかで、はにかんだような笑顔が印象的。それでいて、不当な圧
力には絶対に屈しない強さも持ち合わせています。
そこはかとないユーモアもあります。何といっても効果的なのが、学校の放課
後や土曜日にバイトに来るクリスティーンという少女の存在。妙に大人びた口
が達者な女の子で「読書は嫌い」と公言します。彼女とクリスティーンのやり
とりは、まるで漫才のようで自然に笑ってしまいます。
そして忘れてはいけないもう1人の人物が、40年に渡って邸宅に引きこもってい
るという老紳士ブランディッシュ氏。町で数少ない読書家の彼は、フローレン
スに本を送らせます。
フローレンスがブランディッシュ氏に招かれて、彼の邸宅を訪れるシーンが素
晴らしい。読書愛が2人の絆を強める様子を微笑ましく見せていきます。何しろ
ブランディッシュ氏を演じているのが名優のビル・ナイ。その表情やしぐさが
心の内を繊細に表現します。
ブランディッシュ氏のサポートもあって、フローレンスの店はそれなりに繁盛
します。だが、それとともにガマート夫人の嫌がらせもエスカレート。フロー
レンスは大変な状況に追い込まれます。
終盤は、かわいそうなフローレンスＶＳ悪辣なガマート夫人というわかりやす
い構図。そのため観客は、やきもきしながらスクリーンを見つめます。そこで
用意されるのが意表を突いたラスト。
実は、この映画には第三者目線のナレーションが随時挟まれます。いったいこ
のナレーションは誰のものなのか。それがラストに明らかになります。そして、
その人物が取ったささやかな抵抗が、観客をちょっぴりホッとさせます。同時
に、このドラマが単なる過去のドラマではなく、今の時代とつながっているこ
とも示します。何とも心憎い仕掛け。おかげで深い余韻が残りました。
小品ではあるものの、心にじんわりと染みる作品です。主人公の生き様からき
っと勇気をもらえるはず。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2019年3月16日（土）シネスイッチ銀座にて。午後12時25分の回
[「ま」のページ]
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