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ROMA/ローマ（ROMA）
（2018年 メキシコ）（上映時間2時間15分）
監督・脚本・撮影：アルフォンソ・キュアロン
出演：ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、マルコ・グラフ、ダ
ニエラ・デメサ、カルロス・ペラルタ、ディエゴ・コルティナ・アウトレイ
＊イオンシネマにて公開。Netflixにて配信
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＜ストーリー＞
1970年代初頭のメキシコシティ。若い家政婦のクレオ（ヤリッツァ・アパリシ
オ）は、医者の夫アントニオと妻ソフィア、彼らの4人の子供たちと祖母が暮ら
す中産階級の家で働いていた。子供たちは彼女によくなつくなど、多忙ながら
も穏やかな日々を送るクレオ。そんな中、クレオは同僚の恋人の従兄弟である
青年フェルミンと恋に落ちる。一方、アントニオは長期の海外出張へ行くこと
になるのだが……。
＜レビュー＞
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キュアロン監督の自伝的要素もある女たちの生き様
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『ゼロ・グラビティ』でアカデミー監督賞に輝いたアルフォンソ・キュアロン
監督の新作。第91回アカデミー賞で外国語映画賞、監督賞、撮影賞を受賞しま
した。もともとはNetflixで世界配信された作品です。
この映画には、キュアロン監督の自伝的な要素があります。時代は1970年代前
半。メキシコの首都メキシコシティにあるローマ地区に住む中流家庭が舞台で
す。家族は医者の夫アントニオと妻ソフィア、そして彼らの4人の子供たちと祖
母。彼らは2人の家政婦を雇っています。
そのうちの1人である若い家政婦クレオが、この物語の主人公。彼女は、子供た
ちの世話や家事に追われる日々を送っています。
映画は、そんなクレオや雇い主一家の日常を淡々と描きます。特徴的なのはそ
の映像。キュアロン監督自身が撮影も担当していますが、全編モノクロ、そし
て長回しの映像を多用します。それが実に美しく、ノスタルジックな雰囲気を
醸し出します。同時にドキュメンタリー的でもあり、登場人物の心情がリアル
に伝わってきます。
心理描写の巧みさには何度も唸らされましたが、中でもアントニオが車を止め
る場面が秀逸です。アントニオの苛立ちを、彼の表情を映すことなく、動作だ
けであぶり出します。そこから見て取れるのは、どうやら彼は車の駐車だけに
イラついているのではないということ。
まもなく、アントニオの苛立ちの原因が夫婦仲にあることが見えてきます。彼
はまもなく長期の海外出張へ旅立ちます。それは研究を理由にしたものでした
が、実際はそうではないことが明らかになります。そんなアントニオの行動を
受けて、千々に心が乱れるソフィアの心理も、これまた巧みに描写されていま
す。
一方、クレオにも大きな変化が訪れます。彼女は、同僚家政婦の恋人の従兄弟
である青年フェルミンと恋に落ちます。そしてクレオは妊娠します。すると、
それを知ったフェルミンは姿を消します。
クレオはこのことをソフィアに相談します。クレアもソフィアも男に逃げられ
た同士。それを踏まえて、彼女たちのたくましい生き様が描かれます。
さすがにキュアロン監督自身の幼少時の体験がベースにあるだけに、ディテー
ルもよく描かれています。猥雑な街の様子、当時の映画や音楽などもドラマに
独特の情趣を生み出しています。新年を迎えるどんちゃん騒ぎや森で起きた火
事なども、実際に体験したものなのでしょう。
この映画の時代には、メキシコ社会は大いに混乱していたようです。後半にな
ると、それがドラマの展開自体と大きくかかわってきます。学生デモと銃撃戦
が登場し、その混乱の中でクレオたちにも衝撃的な出来事が起きます。その出
来事を赤裸々かつリアルに描いたシーンも印象的。
さらにラスト近くの家族旅行での海辺での出来事にも、心を揺さぶられます。
そこでのクレオのストレートな心情の吐露がググっと胸に迫ってきます。女た
ちは傷つきながらも、それでも前を向いていくのです。
クレアを演じたヤリッツァ・アパリシオの演技が素晴らしい。とても演技未経
験とは信じられません。人生のほろ苦さと温かさ、そして女性のたくましさが
伝わってくる映画でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（92点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2018年4月72019年3月11日（月）イオンシネマ板橋にて。午前9時25分の回
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